怠惰VS傲慢+色欲
ラオグラフィア勢はその日を迎えた。
日が高くなったあたりでカイγーン領入り口に到達するようにして、驚いた。
開門している。
前回、閉じていた門を破壊されて、直るまで時間がかかって心底いやーな気持ちにされたので、カイγーンは夜明けと同時に門を開けておくことにしたのだ。
カイγーン「もう少し早く来てくれてもよかったのに。焦らし?」
里長「常識的範疇時刻に訪れようという、たぶん親切では」
ムーщ「善意が噛み合いませんねぇ」
カイγーン「殺し合う戦争で善意行動されると・・・ああ、もういいや。こっちは最初の予定通り、悪辣にいこう」
里長「私は娘を見張りにゆきます。カイル(色欲のリス)、行こう」
カイγーン「ティリクムは最高の雑魚つぶしに育ってしまったね。66万6千㎏食った直後に僕に襲いかかってくるぐらいやんちゃになって」
里長「叱って頂きありがとうございました。獣化するともう15トン以上在りますから、生半可な攻撃が通じない」
あーあ、と里長はため息をついて、息子の一人を連れ、そこから消えた。
カイγーンは里長に同情した。
子供の数が多いから、一人二人、良くも悪くもすごいのが出来てしまう。
門自体は、伯爵になって大きくなり、6人ぐらいなら並んで通れる幅になっていた。成人男性二人が両手を広げて余りある。
公爵になると、その二倍の幅になる。
ラオグラフィア率いる1000人。残り200人はラオグラフィアの兄弟憤怒の灰色熊が隊長で、別の入り口を探して流れ込む予定である。
伯爵になると杖が4本になり、入り口も4カ所作れる。戦争になれば、逃げるために別の出口を作るだろうと、考えた。それに、逃げ道を塞げば、まじめに殺し合いをしてくれるだろう。
父母とラオグラフィア当人、兄弟4人しか子爵以上の爵位持ちがおらず(伯爵は色欲のみで、他は子爵である)、他はせいぜい男爵である。大孔雀夫妻が800年近く生きており、それらの眷属がついてきている。若い者は別の爵位持ち(伯爵)に残してきた。
眷属がその主から離れるのは、極度に不安になるものだ。
戦闘方法が一度確立すると、容易に変えない、変えられないのと同じく、生き方や主を変えられない。冒険しなくなっていく。
寿命が短かければ、もしくは若ければ、えいやっと飛び出したりもする。
カイγーンの父母は魔王主催の公共事業で出会い(つまり生まれた集落を飛び出して)、毒の森に帰還した(飛び出しただけえらーい、Uターン組である。考えようによっては、息子のカイγーンも、人間界にいって、帰ってきてるような?)。
ムーщとリムも実は参加して銅銭を貰っていた。熊で怠惰の父Яーロがここの出身だったが、母も毒の森北の村(西に統合される前)の娘であった。世間は狭い。
結局、よほどでないと帰巣しようとするし、新たな主に仕えられない。
主の方も、古参を優遇する。
★ ☆
無夜「大多数を分裂して残せたのは、実のところすごいことで、預けられた(残された)爵位持ちの心労はすごい。集団自決に参加したかったはず。そっちのが楽」
私「統治者層ほど、殺されない限り不死で、責任が終わらないからねぇ。その責任を理解していれば、しんどい。大孔雀800年の治世ないし、ラオグラフィア500年ぐらいの治世に慣れきっているのに、いきなり統治者が交代したら、怖い」
☆ ★
門を入ってすぐに、ラオグラフィア一行は、足止めされた。
塹壕があった。というよりは、もはや谷。
幅190m、長さ2・2㎞、深さ300m。男爵になった暴食のモグラ(副支配人。門の前が領地なので今回戦争参加)が、地下に領地を伸ばしたことによる産物。ちなみに、門から入ってすぐの地べた10mの、地下に地下に住みたい小型領民の家(巣)がある。
地下120mより下にしか巣はないので、勘付かないだろう。ちなみに巣のところは魔法が使える。門前門中での戦闘があるかもしれないと考え、味方の傷が治せないのも雷を走らせられないのも、悪手と意見が一致したので。
深さ100mのところに、艶消しな黒い巨大布が張ってあり、一見では底がわからない。
色彩鳥が『黒を極める』といって作り出した、深すぎる谷底な黒である。
領民が出入りするときには、亡き門番が模型魔法で作った橋を使っていた。彼が居なくなったので、保存強化魔法をかけて最後の作品を使用しており、わりと軽いので対面に片づけてある。
領地の外に壕を作るのは意味がないので、中に作成した。
どのみちすぐに対応されてしまうだろうが、一気に流れ込まないように、気勢を削ぐのが目的である。
大孔雀「出迎えもない」
ラオグラフィアのいるところは魔法が使えるので、射程範囲にカイγーン勢が見えないだけ。地下には蠢いているが、まさかそんなところを住まいにするとは思うまいよ?
とりあえず飛翔魔法を使える者が飛んでみて・・・落ちた。
下を覗き込むと、すでに哀れな犠牲者は麻痺毒をかけられ、マットな黒布に包まれて、時間停止檻に投げ込まれていた。
「一匹だけでしたね」
「たくさんで来たら、ちょっと手間取りましたが、単体だったので完璧でした」
「かんぺきー」
手際の良い支配人が指揮しているので、落ちたら確保される。
ラオグラフィアは下を危なくない位置から覗き込んで、
「落ちたけど、下にぶつかる音がしない。おかしい」
と、地味に理性が働いた。が、確認に行かせるわけにもいかない。
敵地である。
とりあえず、木を折って持ってきた。
長さが全然足りないが、魔法で伸ばす。
そして、橋としてかけた。
魔法は使えないが、何かにかけて変化が終了して魔法が消えた(消費された)状態なら、その結果は維持されるようだった。
偵察が落ちたのは、常時浮遊魔法がかかっていたので、切られたのだろう。
橋をずらずらと渡った。
橋をかけて、察した。
門の方が、土が少し高い。
助走をつけてこちらに跳べる悪魔もいるだろうが、逃げ帰ろうと跳んだとき、地味に届かないかも知れない。門の方は助走幅があまりないがこっちはこっちで意地が悪い。
帰す気がない、逃がす気がない。
前回、入り込んだ色欲の伯爵が、危険を察知して即時撤退して毒の森内で乱戦になって、魔法無効肉弾戦特化領の長所が生かし切れなかったため、逃がさない構造に、悪質に改善されている。
もぐら「壕より向こうから魔法無効の方が良かったかも。警戒されてしまった」
それは今後の課題であろう。
敵が全員渡り終わったらしき気配とともに、布の下の吊り橋というかロープをててっと渡り、何人かに麻痺毒を使い、壕に落とし、牢に入れた。
最後尾が消えゆくことに、ラオグラフィアたちは気が付かなかった。
目の前にカイγーンたちがようやく見えてきたから、意識がそちらにいってしまって。
2㎞ぐらいなら迂回という手もあったが、門の真正面はモグラ領連結であるがその左右は、とりあえず物理的に穴掘りして、壕が続いていた。
少し雑だが、目の前がこうである以上、領地の端まで同じ幅と深さの壕が続いているのだろうなと思っても仕方がない。
そして、基本的に、まっすぐにラオグラフィアは進み、第一戦闘用広場で、彼らは対峙した。
うあ、、、やば。(何)




