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過酷な組み合わせ

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 7月へと入り、本格的な夏が到来。



 屋外のスポーツを行う者達にとって、相手以上に時として非常に厄介なのが夏の暑さ。スポーツをやらない者でもニュースでは、こまめな水分補給をするようにと注意喚起されている。



 なので夏のインターハイに出る選手達はより気をつけなければならない。




 立見ではサッカー部に続け、負けられないと元々強豪で知られる立見野球部が夏の甲子園に向け、懸命に声を出して練習をしている姿が目立つ。



 更に各運動部も刺激されたか奮起し、サッカー部を超える成績を残そうと屋外や屋内問わず、夏の大会に向けて皆が努力していた。




 そしてサッカー部の方でも今日は合同練習が行われる。その相手は立見サッカー部もよく知っている者達だ。






「今日は立見まで足を運んでいただきありがとうございます」



 顧問である幸が代表して頭を下げ、礼を言う。その目の前に居るのは前川高校の面々。幸に対して大きく返事を揃って返していた。



 東京の支部予選、2回戦で戦った古豪の前川。



 キャプテンのFW島田、テクニシャンMF細野の前線とクレバーなDF河野、そして立見の攻撃を再三止め続け攻撃の起点も務めた曲者GK岡田の守り。



 総合力の高さはシード校に引けを取らず、全国へ向けて良い練習相手となる事だろう。



 今回合同練習に前川の方もメリットがあると見たのか了承し、わざわざ今日来てくれたのだ。




「こちらこそ貴重な練習機会を設けていただき感謝します」



 前川を代表して、キャプテンの島田が前へと進み出て同じく礼を言う。




 始まる立見と前川の合同練習。何時も同じ相手で練習するより、他校の者と共に練習した方が得る者は色々ある。



 今日はその貴重な日であり、前川から良い所を可能なら学んで吸収したいものだ。





「何か立見、変わった走りをしてないか?」



「うん、俺らとの試合の時は腕下げて走るとかしてなかったよな」



 合同練習の時でも立見全体でナンバ走りを実行し、慣れようとしている。見慣れない立見の走り姿に前川の選手達は練習しつつ、気になってチラチラとそちらを見ていた。






「お前イタリアに居たんだってな。あのキック、向こうで教わって磨いたやつか?」



 軽くボールを蹴ってリフティングする弥一に細野が話しかけて来た、彼が言っているのは真島戦で弥一が見せたFKの事だろう。



「まあ、そうだねー。向こうに結構キックの名手居たし、教えてもらう事もあれば見て盗んだりもしたからねー」



「そうか、流石本場イタリアだな」



 会話しつつ弥一は頭でポンポンとボールを浮かし、最後にはそのまま頭に乗せて見せた。



 何かと器用にボールを操る弥一のテクニックを見た細野。真島戦で見せたFKといい、彼は1年ながら3年である自分の技術を超えている。それはサッカーの本場イタリアが覚醒させたのか、それとも元々の弥一の才能か。



 あるいは両方かもしれない。細野はそのテクニックを真似て物にしようと、同じようにリフティングをしてみせる。



 良い所を吸収しようとしているのは立見の側に限った事ではない。前川も立見の長所を取り入れ、更に力を付けようとしている。





「っ!」



「うお!」



 優也はボールを持った河野へと持ち前の速さで詰めていき、ボールをキープしてる相手からボールを弾く。



「(速いとは思ってたけど、間近で見ると余計に速く思えるな。けど)」



 今の優也の動きを同じFWとして観察していた島田。彼の速さは知っており、立見と前川の試合でもそれは見ていた。



 あの時は優也のポジションと島田のポジションが離れていたので、間近で見る事は出来なかったが、改めて近くで見ると遠くから見た時とはまた違う。



 彼の動きを観察すると、島田はある事に気付く。



「歳児」



 そこに島田は優也に声をかけると同時に彼へ近づいて行き、優也の方も島田へと向く。



「確かに速い。攻撃でも守備でもお前のその速さは相手にとって厄介だけど、もうちょっと腕を使った方が良いな」



「腕、ですか?」



 優也は腕と聞いて自分の腕を見ると、その間に島田は河野を呼び、相手役を頼む。



「ドリブルの時は腕を横に広げ、ディフェンスに身体を入れさせないよう、その逆に攻撃の相手には腕を使って相手の動きを止める。全国には上手く腕を使う奴はゴロゴロ居るんだ。覚えとくといい」



 島田はそう言いながらボールを持ち、相手の河野へ腕を使って実演して優也に伝える。それを優也は一瞬も逃さず島田の動きを見ていた。



 高校サッカーは今年最後となる3年の島田。その自分達を破った立見。そして1年の優也。



 自分達を破った東京代表として全国で勝ってほしいと思い、島田は培った経験を伝えていく。










 大門がゴール前で持っていたボールを手放し、宙に浮いた状態のボールをそのまま蹴り出した。



 キック力のある彼のパントキックは高く上がり、センターサークルを超えてパスの受け手である前川の選手へと届く。




「難しいなぁ、低くやるのは」



 今のキックに大門は納得しておらず、考えている。それを横で見ていた岡田が大門へと歩み寄る。



「キック力は良いもん持ってる、コントロールも悪くない。後はお前、身につけるだけだ」



「岡田さん、わざわざ見てもらってすみません」



 岡田から教えてもらう大門はこれに頭を下げ、改めて礼を言う。



「馬鹿、礼を言うの早すぎなんだよ。身につけて全国で結果出してから言え」



「あ、はい」



 岡田は低弾道のパントキックを蹴れる。それを物にしようと大門は学んでいた。



 高く上げる滞空時間の長いキック。パワーのある大門は得意としているが、低弾道はそんな得意としていない。



 守備だけでなくカウンター攻撃の起点となって、立見と争っていた前川のGK岡田。堅実な大門とは対照的な攻撃的プレー。その良い所を近くで見て学べば、キーパーとして更に上へ上がれる可能性がある。



 過酷な全国大会、GKの出番は遅かれ早かれ訪れるはず。




 皆苦しい時こそ最後の砦が踏ん張る時だ。それが何時も助けて貰ってる弥一の助けになると思い、大門は岡田と共に練習を続けた。










「1回戦の相手、決まりましたー」



 前川との練習中に摩央は皆へと知らせに来ていた。それはインターハイの1回戦の相手だ。



 トーナメント戦で、全国から予選を勝ち抜いた強豪達が集う夏の大きな公式戦。初出場の立見は1回戦からの参加となる。



 相手が何処なのか、立見の部員だけでなく前川の部員も気になる様子。




「徳島の泉神いずみがみ高校、全国初出場か」



 スマホで摩央がトーナメント表を見せ、成海が1回戦に立見と当たる対戦校を見ると、徳島予選を勝ち抜いた泉神高等学校と分かった。



 立見と同じく初出場で全国の場数はまだ無い。それを思うと立見とは経験で言えば五分だ。




「ただ、次は……」



 初出場相手に不安という訳ではない摩央。だがその先の相手が暗い表情にさせてしまっていた。




 立見が仮に泉神に勝ったとして、2回戦へ勝ち上がると相手は2回戦から登場のシード校。




 そのシード校は高校サッカー界で知らぬ者はいない。






 高校サッカー界の王者として君臨する八重葉学園。



 立見が勝ち上がったら翌日には高校最強と激突となる組み合わせになってしまった……。

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