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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第6章 過酷な夏のインターハイ

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上を狙う天才と危険な存在

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 インターハイの組み合わせ。立見の1回戦の相手は徳島の泉神と決まり、初出場同士の試合となる。



 その勝者が2回戦から登場するシード校。高校サッカー界の王者、八重葉学園と戦う。



 大半が悪いクジ運だと、皆の内心が弥一には伝わる。




「次がもう八重葉?」



「うわー、マジかよ。えっぐい……」



 立見の部員達と同じく、前川の部員達もトーナメント表を見ていた。彼らも八重葉が強い事は当然知っている。まずは目の前の1回戦だが、それを乗り越えた翌日に八重葉と戦わなければならない。



 初出場とはいえ、泉神も厳しい予選を戦って全国出場を決めた猛者で、簡単な相手ではないはず。



 八重葉を意識し過ぎれば、彼らに足元をすくわれる可能性は充分考えられるだろう。



「まあ、遅かれ早かれ当たるでしょうし。今更トーナメント、八重葉といきなり当たるの嫌だから組み合わせやり直してくれなんて通らないから運ですよねー」



 ほとんどの者が組み合わせに驚いたり、頭を抱えたりする中で弥一は相変わらず陽気に笑っている。彼の言うようにトーナメント表は確定しているので、やり直しが行われる事は絶対に無いだろう。



 どう足掻いても初戦を勝てば、次は八重葉戦という現実から逃れる事は不可能だ。




「今は八重葉の事を考えず、目の前の泉神だけに集中して考えよう。全国1勝を取って行くんだ」



 前を向かせて泉神に集中させようと、成海が皆へ声をかけると合同練習は再開される。



 桜王と共に今年のインターハイに参戦する立見。当然ながら全国の1勝というのは無いので、まずは泉神を倒して全国大会初勝利が目標だ。





「よお」



「あ、岡田さんー」



 水分補給を行って小休憩している弥一に、岡田が声をかけてきた。彼も手にスポーツドリンクを持っていて、飲み物は欠かさない。



 夏の日差しは練習開始時よりも強くなる。気温が上がっているので選手達だけでなく、マネージャー達も水分を取る事は怠らない。その為、水やドリンク等の飲み物は多めに用意していた。



「キーパーでの合同練習、どうですかー?」



「俺とは違うタイプのGKが居るおかげで普段とは違う練習が出来たり、参考になったりしてるな」



 岡田は大門に教えてばかりではない。彼の長所を見たり、控えのGK安藤の動きも見たりと己の糧にしようとしている。



「大門はあまり大胆な事しなくて堅実だけど技術が高いな。特にキャッチングが良いし、ジャンプ力もある。安藤は俊敏で結構前に出て行ったりと俺に近いタイプだな。あいつも中々のGKだ」



 立見の二人のGKについて岡田は語る。二人とも互いにタイプが異なるGKで、大門が静なら安藤は動と、それが岡田から見たイメージだ。


 その岡田もタイプは動の方で、立見との試合で彼の活躍を見た限り間違いない。




「そういう岡田さんも中々どころじゃない凄腕でしょー。あの前川戦0-0でPK行くかとヒヤヒヤしてましたからー」



「何だ、マイペースで焦らないように見えて実はそうだったのかよ。全然見えなかった」



 支部予選の立見と前川の試合。結果として優也が終盤に岡田から1点をもぎ取り、1-0で立見にかろうじて軍配は上がったものの、0-0でPK戦になっても不思議ではない試合だった。



 そうなれば立場は逆になっていたかもしれない。



 弥一に凄腕と言ってもらい、悪い気はしなかったが岡田の表情は冴えない。






「自分じゃまだ凄腕とは思って無ぇよ。弱いとも思っちゃいないけどな」



 座り込む弥一と並ぶ形で岡田は立つと、夏の青空を見上げた。



「さっきお前、気のせいかもしれねぇけど。泉神だけでなく絶対王者もぶっ倒そうとしてるか?」



「勿論そうですよ?」



 泉神戦の勝利だけでは満足せず、八重葉戦の勝利も狙う。岡田からの問いかけに弥一は当たり前とばかりに答えた。全国初出場なら全国の1勝で充分大きいものだが、それで終わるつもりなど弥一には無い。



「八重葉だけじゃなく、その先も倒そうと思ってますから。無失点記録を維持したままで」



「……」



 冗談で言ってるようには見えなかった。八重葉に勝つというだけで、とんでもない目標なのにその先の優勝。それも無失点記録を破られないまま、全国制覇を弥一は本気で狙っている。



 普通に考えれば初出場で、しかも創設から僅か2年程になる層の薄い高校。よっぽどの偶然や奇跡が連発して、重ならない限り不可能に近い偉業に思えるだろう。




 だが、DFながら高度なコントロールやテクニックによる多彩な技を見せたり、本業の守備でも鳥羽や蛍坂に原木といった強豪達の攻撃を完封。


 そうして弥一は東京MVPという称号を手にしている。



 彼なら、立見なら可能性があるかもしれない。弥一を見ていたら明確な根拠など無いが、それでも奇跡が起こるのではと岡田の中で期待が膨らんでくる。




「だったら最大の壁はやっぱり八重葉だな。そりゃ全国には色々な強豪はいるけど、八重葉だけはマジで別格だ」



 一度ドリンクに口をつけて息を整えると、岡田が再び話し始める。



「うちも春に八重葉と試合やってさ、2-0。照皇に2点やられて完封された」



「前川も八重葉と試合やってたんですか」



「ああ、向こうが東京遠征で来ててな」



 春に練習試合をしたのは立見だけではなく、前川も同じく八重葉と試合を行っていた。立見が曲者キーパー岡田から1点取るのに試合終了間際までかかり、対して八重葉は2点取っている。どちらもエース照皇のゴールで、高校No.1ストライカーに恥じない結果をしっかりと残していた。



「エースだけでなく中盤や最終ラインも強かったですねー。1軍だと絶対もっと強いですよー」



 攻撃だけでなく守備も堅い。キャプテンのDF大城が2軍中心の八重葉を纏めていたのを弥一も覚えており、彼らが前川を完封したというのは初耳。


 照皇ばかり目立つが大城の存在も無視出来ない。更に村山も中盤を支える万能MFで照皇、大城と共に八重葉を支える要だ。




「そいつらも非常に厄介だけどな。1軍……特にあいつが合流した時の八重葉は手が付けられない。その時の八重葉は歴代最強でプロにも勝てるかもしれない、なんて声まで上がる程だ」



 岡田の言うあいつという人物。それが加わった時こそ、八重葉は高校サッカー界最強の軍団となる。



 天才である照皇に並ぶ程の危険な存在。その名が岡田の口から語られる。







「あいつ、工藤龍尾くどう りゅうびが加わったらな……」

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