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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
始まりの彼が存在する物語 五輪 始動編

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U-23アジアカップ決勝トーナメントの戦い

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 各グループを勝ち上がった上位2チームだけが進める、U-23アジアカップの決勝トーナメント。



 オリンピックの男子チームが本戦に出場出来る数は、僅か16でアジアの枠は3つのみ。


 決勝戦へ勝ち上がった2チームは、その時点で出場権を獲得出来て残り1つは3位決定戦の勝者となる。



 本戦出場を目指す日本代表は3連勝で勝ち上がり、アジアのベスト8へ進出。



 此処で負ければ3位のチャンスすらないので、今回のサウジアラビアとの試合は言うまでもなく重要な試合だ。




「サウジは連係力が高く、攻守共にアジアの中で高レベルなのは言うまでもない。韓国に3戦目で敗れたとはいえ、最後まで彼らを苦しめた力は侮れん」



 宿泊するホテルの一室で、康友が集まった選手達とミーティングを行う。



「今度は負けたら終わりの一発勝負だからな。もう消極的なフリは通じないぞ」



「流石にやりませんよ〜」



 康友の目がUAE戦で悪巧みを成功させた弥一に向けられ、本人は監督に見られても陽気な笑顔を崩さない。



 コホン、と一度咳払いしてから康友は皆へ振り返る。



「相手もオリンピックの舞台へ立つ為、必死に向かって来るはずだ。今回のサウジとその先にあるベスト4の決戦……俺達も本気で戦わなければ先には進めない」



 世界の厳しさを知る康友の言葉を受けて、選手達は一言も発せず耳を傾けるのみ。



「五輪の出場権だけでなく、アジアの頂点も取るぞ」



 五輪に出場するチーム全てへ伝える為に勝つ。



 アジア最強は日本だと。





 一発勝負の負けられない戦いとなり、今日の試合会場となるオーストラリアのシドニースタジアムでは、大歓声が木霊しながらも独特な空気が流れている。



 青いユニフォームを纏う日本チームの前には、緑のユニフォームを着た軍団が五輪への道を阻むように立つ。



 此処で負けられない為、サウジの選手達はいずれも鋭い眼光を向けてきた。



「(皆ピリついてるなぁ〜)」



 相手の今の心理状態を感じ取り、弥一は彼らをどう攻略するかを考える。




「(神明寺弥一マークだ)」



「(日本の6番を自由にさせられない)」



「(こいつに好き勝手攻められれば終わりだ)」



 相手は世界で活躍する弥一を当然知っていて、強い警戒心を持つ。



 得意のレーザービームは撃たせられない、セットプレーも与えたくないと、研究してきている。




「(心の声が滅茶苦茶分かりやすくて助かるなぁ〜)」



 彼らの思っている事が一言も聞き逃す事なく、弥一の耳に入っていた事実は誰も知らない。





『日本とサウジアラビアの試合、前半から緑の軍団に攻め込まれていく!』



 ベスト8の試合はキックオフを迎え、サウジが日本陣内へ攻め込む。



 アジアのトップを争う一角と評価される通り、速いボール回しと優れた個人技を持ち、簡単には留められない。




 はずだった。



「7番行ってー!」



 誰をターゲットにしているか、託す相手を誰にしているかは弥一が心を読んで見抜き、指示を受けた月城が電光石火の速さで迫る。



 俊足によるプレスが中東の強豪を慌てさせ、到達される前にパスを出すと影山がボールを奪う。



『影山、読んでいた! 日本反撃に出られるか!?』



 カウンターに向かうが、サウジの方は素早く緑の壁がゴール前に作られた。



 大事な決勝トーナメントなので特に失点は避けたいと、守備重視の戦術を敷いている。



「(うじゃうじゃと、おるなぁ……!)」



 この試合、先発で右サイドを任されている光輝はゴール前を固められ、何処にパスを出そうか悩まされてしまう。



 敵陣まで切り込んだのは良いが、日本は攻めあぐねていた。




「サウジって韓国にPKの点を取られるまで無失点でしたよね」



「ああ、しつこくユンジェイが仕掛け続けたおかげでな」



 ベンチで見守る大門は相手についての情報を確認すると、辰羅川が何処か誇らしげに語る。



 同じ横浜グランツの選手が活躍したせいか。



「向こうは月城が走るであろう、コースを上手く消してる。中々サイドを使わせてもらえないな……」



 先程から月城が上手く走れず、苦戦している姿が冬夜から見えていた。



 弥一をマークしているのは勿論、月城や他の要注意選手のチェックも向こうは怠っていない。



「でも、弥一の事だから何かまた悪巧みでもして、今の状況をなんとかするかもしれない」



 大門の視線の先には、上がらずに選手達へ声を掛け続ける弥一の姿。



 彼の事だから、このまま大人しくはしてないだろうと見ている。



「悪巧みか……消極的なサッカーの芝居をしたりと、あり得ないような事やりそうかな?」



「さあ……弥一っすからね」



 また自分達が思いつかないような事をやるんじゃないかと、まるでマジックショーにて、どんな手品が飛び出すか楽しみに待つ観客のような気分だ。



 辰羅川と冬夜も弥一が何かをするとしたら、今度は何をする気だと彼らの目が小さな選手へ向く。



 今の所は動く気配が感じられず、サウジの前線の選手に動きを見張られてるせいもあるかもしれない。




「はぁ〜。警戒心強すぎるなぁ〜」



 やり難くてまいったと、弥一はゲームの止まったタイミングで給水を行う。



 1月にも関わらず夏の暑さを感じさせるオーストラリアで、こういった水分補給は重要だ。



「全然余裕そうにしか見えねぇぞ弥一」



 弥一の顔を見ながら龍尾も水を飲んで、コーチングの為に喉を潤す。



 本当に辛いという風には到底見えず、むしろ余裕が感じられるように見える。



「やだなぁリュウさん〜。五輪の出場権が懸かる大会なのに、余裕とかないってー♪」



 陽気に笑う弥一からは、説得力が感じられない。




「ま〜、あえて言うならPKに凄く強いGKいるし、最悪引き分けでも頼れば勝てるなって思ってますから♪」



 高校時代から龍尾の強さを知る弥一は、PK戦になったら日本の勝利だと思っている。



 かつて一度、敗北を経験させられたので信頼を寄せていた。



「そいつはまた……凄ぇ押し付けられたもんだな」



 口では言いながらも、その時が来たら自分がヒーローとなれるチャンスなので、残らず止める事を狙うのみ。



 弥一の期待に応えようと、龍尾は日本ゴール前に立ち続ける。




「ぐっ!?」



 中盤で勝也は相手選手に荒っぽく、体をぶつけられてしまう。



 相手の肘が勝也の脇腹に食い込むと、痛みが登ってくる。



 ガッ



 それでも倒れずに弾き返し、勝也は強い眼差しで前を見据えた。




「ってぇ……反則上等で来やがる……!」



 タッチラインをボールが割って、プレーが途切れると痛みをより感じてしまう。



「勝也さん大丈夫ですか!? あいつらめぇ〜!」



「良いからお前はプレーに集中しとけ! 俺は全然なんともねぇから!」



 春樹は勝也へのハードマークを行うサウジの行動に、怒りの表情を見せているが、勝也本人から集中を切らすなと注意される。



「(あっちは国を背負って、最大の大会に行こうと目指してるし。そりゃこうなるだろうぜ……)」



 ラフプレーが飛んでくる中で、勝也は向こうも必死で五輪に行きたいんだと、何となく伝われば特に怒りは込み上がらない。



 日本だけではなく、皆が栄光ある舞台を目指している。




「オオッ!」



 ズガッ



 サウジの選手達は勝也を潰そうと、容赦なく肩から激突。



「っ……らぁ!」



 ドカッ



「っ!?」



 しつこくハードマークを続ける相手に、勝也は自分から肩同士を激しく当たらせていた。




「こんなんで潰れるか……もっと来いよオラ!」



 剥き出しの闘志で真っ向から受けて立つ勝也に、仕掛けていた方がたじろいてしまう。



 肉体面と精神面の両方でタフさを見せながら、ゴールを目指す彼の足は止まらない。

弥一「春樹さん、相当怒ってたね〜」


勝也「あいつは昔っからそうだ。こっちが少し当てられただけで、酷いラフプレーだとか言って抗議しようとするしな」


弥一「そこは柳FCから変わんないなぁ」


春樹「勝也さんしれっと傷つけて平然とする野郎は許せんー!」


勝也「だから落ち着けって言ってるだろー!」


弥一「もう〜、春樹さんはしょうがないなぁ〜。……別に言わなくてもタダでこのまま済ます気無いし(小声)」


勝也「弥一? 何か呟いたか?」


弥一「ううん、春樹さんのお世話大変だなぁって♪」

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