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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
始まりの彼が存在する物語 五輪 始動編

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兄の敵討ち

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『照皇ヘディングシュートォ! バーの上!』



 月城の左からのアーリークロスに、照皇が相手と競り合いながらも頭で合わせるが、ボールはゴールバーの上を超えてしまう。



「もう〜! あのDF肘入れてんのに、照さん主張しなさいよ〜!」



 弥一から見れば今の競り合いで、サウジDFの肘が照皇の脇腹に食い込んでいるのが見えた。



 故意なら悪質で一発レッドでもおかしくないが、照皇は主張せずに次のチャンスに向けて走る。



 高校時代に天才ストライカーと呼ばれ、実力は高いが真面目でマリーシアの類はせず、何かと狡賢くやる弥一とは決定的に違う。



 勝也も中盤で荒っぽく当たられたりと、傷を作っていた。




『前半終了! 日本とサウジアラビアの試合は前半0ー0と、日本が堅い守備に阻まれて苦戦しています』



『厳しい戦いとなってますね。やはりアジアの強豪となると、歴代最強と言われる日本も苦戦は避けられませんから、予選は簡単じゃないですよ』



 日本がボールの支配率ではリードするも、自由には攻めさせてもらえない。



 更に弥一も相手から特に警戒されている為、自由には上がれない状況が続く。




「ってて……」



 かなりしつこく削られた勝也は、足に応急処置をトレーナーから施してもらう。



「……結構やられてますね……」



 勝也の足の状態を見て、明は心配そうな様子だ。



「それだけ向こうも必死なんだろうよ……次に進めばオリンピック出場まで後一歩だし、是が非でも欲しいからこうなっちまう」



 以前のU-20ワールドカップよりも更に大きな国際大会。


 その晴れ舞台へ出場する事が、国にとって名誉である。



 これが人を鬼や修羅へと変えて、僅かしかない椅子の為に争うのだろう。




「確かに相手が荒っぽく来ているのは事実で、それだけ向こうも必死なんだろう。此処で感情的にはならず、平常心で臨めば向こうが自滅してくれるはずだ」



 プロの世界だと単純なレッドカードだけで留まらず、罰金も課せられてしまう。



 更に世間からの批判も厳しく、ラフプレーをするのは何かとリスクが多い。


 康友は向こうが続ければ自滅するだろうと見ている。



 つまり照皇みたいな冷静沈着が一番という事だ。




 後半に入ると、サウジが左サイドから攻め込んで来る。



「折り返し来るからー!」



 弥一の目には中央からDFの攻め上がる姿が見えた。



 これに勝也が追っていき、マークにつく。




 ドスッ



「がっ!?」



 その時、相手DFの左肘が勝也の腹に食い込み、思わず足を止めると顔を歪めてしまう。



 偶然入っただけとなったせいか、近くにいた春樹が「ファールだ!」と主張しても主審は試合を止めない。



 そのまま試合は続行すると、サウジに中央から攻められる。



『日本、中央ピンチ! シュート!』



 近い位置からシュートが飛んでくるも、龍尾にとっては甘い球でキャッチに難なく成功。



『おっと? 神山の動きが少し重いですね……』



『これ、肘入ってるじゃないですか!? VAR判定を審判しないと!』




「くぅ……!」



「勝也さん!」



 度重なるダメージが蓄積されて、春樹に心配されながらも一度外に出る。



 そこから交代となり、明が急遽出場の為に準備へ入っていた。



「畜生……まだやれるっての……!」



 勝也としては大事な試合に途中で下がりたくはない。



 無念の途中交代となって、悔しいと思う心は弥一に伝わる。




「(五輪に出る為に皆必死だから仕方ない……誰だって五輪に出たいから)」



 過酷な闘いの中で勝也は負傷して、こうなった事は仕方がない。




「(で、許されると思ったら大きな間違いだけどねぇ?)」



 とは全く思っておらず、弥一は勝也を負傷交代に追い込んだ連中を五体満足で返す気は無かった。




 その時が巡って来たのは後半、サウジの激しい守備が月城を襲い、倒れ込むと主審がファールをとる。



『此処で日本は位置が遠いものの、ゴール正面からFCのチャンスを得ました!』



『これは神明寺か鳥羽に蹴ってほしいですが……っと、日本は照皇と交代で鳥羽が出てきますね』



 康友はセットプレーのチャンスと見れば、すかさずカードを切って鳥羽を投入。


 キックの名手を増やして得点の可能性を広げる。




「此処での得点チャンスは大事だぜチビ君。分かってるだろうけどな」



 サウジの選手達が日本の得点を阻む為に壁となり、弥一と鳥羽の前に立つ。



「そうだね〜……すっごい大チャンスだよねぇ」



 鳥羽と話す中で、弥一の目は勝也を負傷退場へ追い込んだ、サウジのDFに向けられる。



 のこのこと獲物が壁として立ちに来てくれたと、弥一は怪しく微笑んでいた。



「ね、今度は鳥羽さんが立っててくれない? 僕が蹴るから♪」



 弥一は鳥羽の顔を見上げて笑顔で頼む。




「……ああ、任せるわ」



 この時、小さな選手の顔を見た鳥羽に寒気が走る。



 何かとんでもない事をやるのではないかと。



「ありがとうごさいまーす♪」



 鳥羽に礼を伝えた後、弥一はサウジのゴールを見据える。



「(なんだよ……この感じは……!?)」



 今の弥一からは底知れぬ殺気が感じられ、見ているだけで冷や汗が伝ってきてしまう程だ。



 出来る事なら少し離れたいと、密かに望みながら鳥羽は彼のFKから目を離さない。




 キックが要注意と知られ、絶対に彼を止めてやろうと壁に立つ者達は弥一を警戒。



 だが、そんな事は今の彼の知った事ではなく、助走を取って壁との距離を取る。





「さよなら」




 壁の選手に向かって冷たく言い放った瞬間、弥一が置かれた球へ向かって走り出すと、左足のインステップキックでボールの芯を捉えた。



 力を重視した蹴り方で、真っ直ぐ1人の壁の選手へ飛んでいく。




 ドボォッ



「カハッ……!?」



 勝也を負傷させたサウジのDFへ、罰だとばかりに弥一から放たれた矢のようなボールが、胸と股間を守る腕の隙間にある腹へ命中。



 相手は苦悶の表情を浮かべるが、それでは終わらなかった。



 相手に当たって跳ね返された球に、誰よりも速く弥一は詰めたかと思えば、跳び上がって宙を舞うボールを右足で蹴る。



「……!?」



 彼からは悪魔の翼が見えた気がした。




 バガァッ



 弥一の放ったジャンピングボレーによるシュートが、腹に続いて相手の顔面へクリーンヒット。



 KOされたボクサーのように崩れ落ちてダウンすると、ボールは大きく弾かれてサウジのゴールラインを割っていた。



『あーっと! 神明寺のキックはブロック! 続けて追ったシュートもサウジが体を張って防ぐ!』



『今回は越えられませんでしたか。向こうの気迫勝ちですかね……けど、まだコーナーありますからチャンス残っていますよ』



「アルジ! 大丈夫かおい!?」



 周囲からすれば、果敢なブロックで弥一のシュートを立て続けに止めたと映るだろう。



 その相手のサウジDFは起き上がれず、白目を剥いて失神していた。


 これにはチームメイト達が駆け寄り、日本選手達も心配そうに見守る。



『おっと? 日本に神山の負傷退場が起こったかと思えば、今度はサウジDFアルジが立てません!』



『✕が出てますね。日本が負傷退場かと思えば相手もですか……荒れた試合になってきました』



 ピクリとも動かず、担架で運ばれていく選手の姿を見て、スタジアムは一瞬静まり返る。




「ゴメン、決められなかったぁ。相手のDF凄いガッツだったよ〜」



「逆にお前も人間なんだなと安心したわ。何時も当たり前のように壁を越えていくから」



 近くの月城と弥一は相手のDFが凄かったと言い続けていた。




 勝也の敵討ちの為にやった事には誰も気付かないまま……。

弥一「本当、アクシデントって怖いですね〜♪」


鳥羽「(アクシデントか……本当に?)」


弥一「鳥羽さん、どうかしましたか〜?」


鳥羽「あー、いや。高校の時と比べて色んな意味で成長したなぁって」


弥一「それは鳥羽さんもでしょー♪」

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