五輪を目指して日本は突き進む
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『オリンピック出場も懸かるアジアの頂点を目指す大会、U-23アジアカップ。日本代表はグループDに入り、初戦でマレーシア代表を迎えました』
スタジオで青いユニフォームを着た出演者達が集う。
ネット番組として配信され、速報で試合結果を皆へ届けている。
『結果は10ー0と、まさに圧勝で最高のスタートをしています! これは言わなあきませんわ……金メダルおめでとう日本!』
『予選の初戦で早すぎや! 出場も確定しとらんからな!!』
近年、活躍の幅を広げるシュートスナイパーがMCを務め、ボケのシュータに長岡がツッコミを入れる馴染みの光景。
スタジオには笑いが起こっていた。
『この活躍どうですか愛咲さん?』
『そうですねぇ〜、照皇選手がハットトリックと絶好調で得点王取りそうで、彼がやってくれると思ってます〜。真面目で自分が活躍しても調子に乗らず、謙虚な人って強いですから〜♪』
長岡からトークのパスを受け取り、女優の愛咲若葉は照皇を推している。
彼が分かりやすく目立っていたので、次もやってくれるだろうと。
『葛城選手は?』
『トップ下の神山選手が攻守で顔を出してて、よく声を出した印象が強かったです。彼の闘志が尽きない限り、そう簡単には押し込まれないし、負けないだろうなと思いましたね』
プロボクサーの葛城新太は、同じアスリートとして勝也に注目していた。
いかにメンタルが大事なのかを熟知し、勝也のような気持ちを前面に押し出すタイプのプレーヤーこそ、チームに欠かせないだろうと考えての発言だ。
『赤羽君はどうですか?』
『要所要所で影山選手や天宮選手といった、日本のダブルボランチが機能していました。両サイドも再三チャンスを作って、ゴールを演出してましたよね。日本の強みがよく出てチームの状態が今凄く良いと思います』
人気の男性アイドルグループ、トップメンズの赤羽尚志はチーム全体が上手く動けたと語る。
選手達をよく見ていて、得点やアシストを記録していない方へ目を向けたりと、解説者じゃないかというぐらいに話していた。
『つまり総合的に評価すれば、全員が大会MVPですね! おめでとう日本!』
『だから早い言うてんねん!』
大きくシュータが拍手を送り、長岡がツッコミを入れる姿に笑いは気の所為か、先程より少ない。
初戦を10ー0の大差で勢いに乗る日本は、グループ2戦目のタイと試合を行う。
相手は初戦でUAEに5ー0で敗れて後が無く、勝つしかない状況へ追い込まれている。
「8番囲んでー!」
エースにボールを集めるタイの狙い。
それが弥一に心の声でバレてしまうと、何もさせてもらえず囲まれていた。
『日本、中盤の神山と八神が取り囲んで奪う!』
「ナイスー! 左空いてっぞー!」
続いて龍尾の声が届くと、左のスペースが大きく空いているのが見える。
ボールを取った勝也は右足でスペースを狙ってパス。
「(はっや!?)」
直後に左サイドで出場する狼騎が、勝也の出したパスに反応して詰める。
『神山からのパスに酒井が走る! 追いついてゴール前チャンス!』
左でパスを受けた狼騎は、斜めからタイのゴールへ迫る。
鳥羽がボールを要求しているが、それを無視して自ら右足のシュートを放つ。
ゴール右下隅へ地を這うようなボールが飛ぶと、GKのダイブも及ばずゴールネットが揺れ動く。
『酒井のゴールが決まったぁ! サイドから抜け出して豪快な右足の得点が生まれる!』
『鳥羽がフリーになってましたが、俺が決めるんだという我の強さはチーム随一ですよね酒井は』
「お前、こっち空いてるんだから少しは寄越せってー」
「あのまま決められると思ったから」
ゴールを祝福する中で鳥羽はパスも行けたと伝えるが、その選択肢は狼騎に無かった。
「勝兄貴、あそこもっと強く蹴っても行けたと思うよー」
「あれ以上強くやったら⋮、マジでシュートになっちまうだろ」
「あの狼さん相手なら大丈夫だってー♪」
狼騎のゴールを演出した勝也に弥一が近づくと、もっと厳しいパスを蹴った方が良いとアドバイスを送る。
弥一からすれば、敵にも取れるような優しいボールに見えたらしい。
『タイ、日本ゴール前に高く上げた! 工藤龍尾がキャッチ!』
中々日本ゴールへ近づく事が出来ず、タイはロングボールを放り込むが、前に出ていた龍尾がキャッチ。
「リュウさ〜ん!」
そこへ弥一からボールを要求する声が聞こえると、迷う事なく龍尾はスローイングで送った。
「おおおっ!?」
彼のプレーを見た瞬間、多くのオーストラリアの観客が驚愕する。
弥一は龍尾からのボールを左足でトラップせずに蹴り、左サイドのスペースを狙う。
勝也が送ったパス以上に速い、得意のレーザービームが繰り出された。
「(速過ぎんだろうが小僧!!)」
内心で毒づくも、狼騎は並外れた反射神経と瞬発力を発揮すると、弥一の容赦なく蹴ったパスに迫る。
後一歩遅かったらラインを割っていたかもしれない、ギリギリの所で左足を出してボールをトラップ。
『今度は神明寺の速いパスに追いついた酒井! またしても左サイドでチャンスだ!』
今度はタイのDFが狼騎の前に立って、シュートが来るとブロックを試みる。
狼騎は強引に左足でシュートを狙うと見せかけ、右へ軽く転がして鳥羽にボールが渡った。
このパスを受けた鳥羽は右足で蹴り込み、タイのゴールネットを揺らす。
『酒井! 今度は自らに引きつけさせて鳥羽にアシスト! タイを突き放す!』
「なんだ、パスも出来るじゃないか!」
「出来ないとは言ってねぇ」
鳥羽はアシストをしてくれた狼騎へ駆け寄ると、自分のゴールの演出に感謝する。
ゴールやアシストを決めても狼騎は素っ気ない感じだ。
「ほらー、あれぐらいで良いんだよー」
「今のは受け取れねぇかと思ったら、凄ぇな!?」
これぐらい厳しくて良いと、兄貴分へ手本を見せるように弥一は伝えていた。
驚きながらも、弥一ぐらいのボールコントロールが出来なければ無理だろうと勝也は驚く中で密かに思う。
初戦のマレーシアに続いて、日本は2戦目のタイにもゴールを量産。
最後までゴールを脅かされる事はなく、2連勝で勝ち点6まで伸ばすと、グループ首位に立つ。
『試合終了ー! マレーシアに続いてタイを7−0で下しての勝利!』
フィールドでは日本が2連勝で、首位に立った事へ喜び合うと、同時刻ではUAEがマレーシアを4ー0で下した知らせが届く。
これによって最終戦を待たずして、日本とUAEの2チームがグループ2位以上を確定させ、決勝トーナメント進出を決める。
「まずはグループの突破を出来て一歩前進だな」
ロッカールームに戻って来た日本代表の皆が着替えていくと、勝也は五輪の出場に近づいたと言えば、用意されたおにぎりを食す。
「何も気にせず、食べるおにぎりは美味しいね〜♡」
これを美味しい物好きな弥一は見逃さず、鮭入りのおにぎりを美味しく味わう。
試合後の塩分が体に染み渡って癒される。
「後はUAEとの試合で、首位争いか」
「得失点差で日本が首位に立つから、勝つか引き分けで首位ですね」
辰羅川、大門も同じようにおにぎりを食べながら、グループ最終戦について話していた。
するとスマホでチェックする光明は気づく。
「これ、結果次第でサウジか韓国になるぞ」
「どっちも厳しい相手やないか!?」
結果次第で2チームと戦う事となり、中東の強豪か宿命のライバルの2択を前に、想真はツッコミに似た叫びをする。
最終戦のUAEとの試合。
既に予選突破は決まっているが、結果次第で決勝トーナメントの相手が変わる重要な試合だ。
日本7ー0タイ
照皇2
鳥羽2
酒井1
緑山1
天宮1
マン・オブ・ザ・マッチ
酒井狼騎
弥一「番組の方はまた凄いメンバー集まったなぁ〜。この前のカウンターシュート企画で集まった人達が勢揃いと」
勝也「確かトップメンズのMV出演したし、企画といい本当色々やるな……」
想真「葛城選手のゴッツいボディブローでのKOは凄かったわぁ〜」
照皇「女優の方からも応援されるようになったのか。そういったファンというのは初だが」
弥一「照さん、あの人はちょっと〜。(真面目だから絶対騙されるし、近づけさせらんないや)」




