U-23アジアカップ開幕
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
U-23アジアカップ
23歳以下のアジア代表チームが集い、アジアの頂点を決める。
それと同時に、今年のオリンピック出場が懸かった重要な大会で、各チームが少ない椅子を狙って争う。
アジアカップはグループステージから始まり、4つのグループに分けられて上位2チームが決勝トーナメントに進出。
日本はグループDに入り、同じ組にはマレーシア、タイ、UAE。
この3チームを相手に上位を目指す戦いが始まる。
「1月なのに暑い……!!」
オーストラリアで開催となった今回のU-23アジアカップ。
気候に慣れる為、早めに現地へ到着した日本代表はグラウンドで練習を行う。
1月、日本の真冬を散々体感した後にオーストラリアの真夏の気温に、月城の口から文句が飛び出す。
「こっちが冬の時はオーストラリアが夏だからな」
メンバーの中で唯一、この地へ留学した経験を持つ照皇は慣れていて、早くも適応していた。
アジアカップで五輪出場を目指す日本にとって、アジアのライバル国以上に気候が厄介な敵となるかもしれない。
「暑い方がやりやすいから、此処での開催はありがたいね」
光明にとっては厳しい暑さの中、試合を重ねてきているので今の気候はベストらしく、機敏な動きを見せていた。
「そんな中であいつらは……よくやるなぁ」
ドリンクを飲んで小休憩する鳥羽の前には、フィールドの上でサッカー少年に戻ったかのように、ボールを取り合う2人の代表選手が映る。
「まだまだフェイントが甘いねー!」
「やろっ……!」
弥一と勝也が向かい合って一対一のデュエルを行い、暑い中でも2人の足は止まらない。
プロの試合で磨き続けたドリブルで、勝也は突破しようとするが見切られてしまう。
フェイントのレベルが低い訳ではないが、弥一は世界の舞台で数々のテクニシャンを見てきた。
各国の強豪選手と比べれば言葉通り、勝也のドリブルには甘い所が残る。
「今抜き去ってやるからな!」
「はい、いただきっとー♪」
「あっ!」
弥一の右足が勝也のボールを捉えると、自分の元へ引き寄せて奪い取った。
「畜生! 今度は俺が奪い取ってやるからな!」
「取れるもんなら取ってみなさいって〜!」
ボールを奪おうと足を伸ばす勝也に、弥一は自分の所へ右足を使って球を引き寄せる。
オーストラリアの地で開かれる大会に向けて、戦う準備は整う。
アジアカップの初戦、日本とマレーシアの試合を迎えると、スタジアムには多くのオーストラリアの観客達が見に来ている。
その中に選手達と同じ、青いユニフォームを纏う日本サポーターの集団も見られた。
『決まった照皇3点目ー!! この試合ハットトリックを達成!』
試合は照皇が豪快な右足でゴールを決めたり、CKで蹴った鳥羽のボールに頭で合わせ、更にPKを決めて決定力の高さを証明。
「オーストラリアに戻って来たせいかね。マコの調子が良いわ」
最後尾の日本ゴールから眺めていた龍尾は、幼馴染として長い付き合いのせいか、照皇の調子が良いと分かった。
「じゃあ、今回のアジアカップは主に照さんに頼っちゃっても良いかな〜♪」
相手のマレーシアが防戦一方で日本にピンチが訪れないせいか、龍尾だけでなく弥一も特に出番が無い。
転がってきた球を拾って繋げる役目ぐらいで、やる事が少ない2人で話す暇があるぐらいだ。
「まだまだー! 取れる時に取っとけよー!」
攻撃の手を緩めないようにと、勝也が声を掛けてチームの背中を押す。
その声へ応えるかの如く、光輝は右サイドからのドリブルでマレーシア選手の1人を鮮やかに突破。
『三津谷、右サイド抜けた! ゴール前には照皇!』
マレーシアDFも照皇を放置したら不味いと、2人がかりのマークがついている。
光輝は照皇に目を向けたまま、右足でゴール前へグラウンダーのクロスを入れる。
そこには誰よりも速く狼騎がボールへ迫り、右足のダイレクトボレーで光輝の送ったクロスに合わせた。
加速した球を前に、DFもGKも触る事が出来ないまま、ゴールネットは揺れ動く。
『決めた酒井ー! 日本、強力な攻撃陣でマレーシアを突き放す!』
スコアは大差がつき初め、スタンドから見て日本の勝ち点3は間違い無い。
そう思う程の点差が開いていた。
「カウンター!!」
相手選手からボールを奪うと、勝也は速攻を仕掛ける。
叫んだ後で春樹へパスを出した後にマレーシアのゴールへ向かう。
「(速い! 流石勝也さん!)」
勝也がゴール前にまで詰め寄るのが見えれば、春樹は内心で称賛しながらも右足のパスを送っていた。
迫っていた相手DFを右足のワントラップで躱してから、更にボールを持ち込んでマレーシアのボックス内へ侵入する。
「(コース見えた!)」
目が捉えたコースとチャンスを逃さず、間近までDFに迫られても落ち着いて、勝也は右足で狙う。
ゴールネットは再び揺れ動き、今度は自らの力で点差を広げた。
『キャプテン自ら決めた神山勝也!』
「流石は勝也さん! 完璧なゴールを決めてくれましたね!」
「よせって、狼騎みたいなシュートには届いてねぇし」
真っ先に春樹が近づいていくと、勝也が決めたゴールをこれでもかってぐらい、称賛の嵐を送ってくる。
「(日本が世界大会で優勝して強い事は知ってたけど……)」
「(こんなに強いのか……!?)」
追いつこうと奮闘しているが、点差が縮まるどころか開いてしまう展開に、マレーシアの選手の心は戸惑ってばかり。
動揺する彼らの心は、弥一から見えている。
「(悪いねマレーシアの皆。金メダルを本気で目指す僕達は歴代最強に強いからさ♪)」
相手が悪かったと、弥一は明るく笑ってから転がった球をキープ。
結局最後まで何もピンチが来る事なく、日本は無事に初戦の勝ち点3を掴み取っていた。
「他も勝ってたよ。韓国にオーストラリアにサウジアラビアと」
「ウズベキスタンやとかも勝ってて、番狂わせなく上位は勝ってるって初日だったかな」
マレーシアとの試合が終わり、バスの車内で日本の選手達は他のグループをスマホで調べる。
結果は日本を含め、アジアの強豪国が勝ち点3を獲得した。
「……ん?」
弥一がスマホを触っているとメッセージが来ていて、送って来たのが知っている者からだったので、開いてみる。
まさか予選なんかで終わらないよね?
そう送りつけてきたのは、最近知り合ったコメットだ。
「(エールのつもりなのか、煽ってるのかは分かんないけど、とりあえず……人の事言う前に自分が選ばれなかったり、予選で落ちないようにねっと)」
メッセージ越しでは心を読む事が出来ず、相手が何を考えてるのか分からないが、弥一は文字を打ち込んでコメットへ返す。
彼に言われるまでもなく、弥一は何時も通りに無失点での大会制覇を考えている。
日本10ー0マレーシア
照皇3
酒井2
八神1
天宮1
源田1
月城1
神山1
マン・オブ・ザ・マッチ
照皇誠
弥一「国によって気候とか時差とか、それに慣れるのが大変なんだよね〜」
勝也「日本が真夏の時にオーストラリアが冬って、此処に来るまで全然分かんなかった!」
弥一「多分それまではオージービーフとか、そういうのしか分かんなかったでしょー?」
勝也「流石にもう少し知ってるわ! サッカーにおいてはアジア上位レベルだって事にも!」
弥一「自分で言っててオージービーフ食べたくなってきた〜」




