勝負の年を迎えて
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「そっち年明けてる〜?」
「もうハッピーニューイヤーになってるぞ」
弥一はイタリアにある自宅にて、勝也達とパソコンを通じてリモートで新年の時を楽しむ。
とは言っても日本の方が年明けを迎えているのに対し、8時間の時差で遅れているイタリアは前日の31日だが。
「なんだか1年があっという間に感じちゃうねぇー。高校の時はゆっくりって感じはしなかったのにー」
「弥一の場合は色々と各国に飛び回ってサッカーしたり、仕事したりで忙しかったのもあるだろ」
「せや、口外せぇへんけど絶対にド偉い金稼いどるやろ!?」
弥一と勝也の他にも想真、番と参加している。
イタリアから参加の弥一に、3人は同じ日本の異なる所からで皆バラバラだが、こうして今はリモートで繋がっていた。
「そう言っといて2人もプロになって稼いでるんじゃないの〜?」
「お前みたいにCM出とらんからカツカツや!」
イタリアで立派な家を建てた奴とは違うとばかりに、想真はポテトチップをバリバリと食べる。
普段はプロとして節制してるが、今日ぐらいは良いと解禁して正月を楽しむ。
「俺も寮生活だし、一国一城の主までは遠いよ」
番は何人もの選手が合同で過ごす寮が今の住まいで、自分の家を持てるようになるのは、まだまだ先になりそうだ。
「ま、最初は誰だってそんなもんだ。俺と弥一も東京で1年目の時は実家から通ってたし、自分の家が持てるまで大変だったからな」
東京アウラでプロとして戦い続け、家族3人で暮らす家を持つ。
念願だった自分の家で、勝也は仲間との会話を楽しむ。
「鳥羽さんとかは早くも良いマンションに住んでましたよ。一緒に彼女さんも住んで、俺と同じスタートとは思えなかったなぁ……」
遠征で東京へ行った時、番は鳥羽の住まいへ誘われて遊びに行った事を思い出す。
「えー、それ鳥羽さん逆玉状態じゃないー?」
「俺らと比べて色々スタートダッシュしとるやないか」
「小さいアパートを思い浮かべてたら全然豪華で緊張しちゃったよ……」
此処にはいない鳥羽の話で盛り上がり、話題は恋愛事情へと進んでいく。
「俺は……まぁ、ぼちぼちやけど光輝の奴が幼馴染の子と同棲始めた言うてたから、あいつ何時の間にかやる事やっとったわ」
相方が仲の良い女性と付き合い、知らない間に同棲してたなと想真は缶ビールを空けて飲む。
20となって酒を試しに飲んだ時、その旨さを知ってから時々飲むようになったらしい。
「光輝に先越されてんじゃん。何やってんの想真」
「ええやろ、競争しとるわけやないし!」
弥一もビールを飲む想真を見ていて、飲み物が欲しくなったのか冷蔵庫から取り出してくる。
アルコールを好まない為、自分がCMを担当するアクアクーラを飲み始めていた。
「プロになって色々必死で彼女を作ってる暇なんかないって」
番に関しては、周囲の環境に適応していく事で今は精一杯。
「勝也さんとか綺麗な奥さんと結婚してて羨ましいっすよ。どうやって出会ったんです?」
「どうやってって、中学のサッカー部に入ってて2年の頃にマネージャーとして入って来たのが始まりだったからなぁ……」
勝也は番に言われて当時の京子との出会いについて、椅子の背を預けながら振り返る。
「知ってるよー。小学生の頃に柳FCが全国決勝に行った時、勝兄貴が決勝ゴールを決めたのを会場に来ていた奥さんが見て惹かれたんだよねー♪」
京子から勝也に惹かれた話は弥一も聞いた。
共に初めて全国制覇を達成した時で、あのゴールが無ければ全く違っていたかもしれない。
「勝也さん、そのエピソードはテレビや取材で話した方がええで!」
「いいって、恥ずかしいし……」
「良いじゃないですか! 俺も幼い頃にゴール沢山決めとけばよかったぁ〜!」
想真や番から羨ましがられるも、勝也の方は照れてしまう。
「弥一も聞かせぇや! あの王子様な女子とどうやって結ばれたかを!」
「え〜、僕も〜?」
勝也と同じく、結婚している弥一もターゲットにされた。
「切っ掛けなら僕も小学生の時だねー。たまたま同じ合気道の道場に通って、そこで子供同士仲良くなってから、高校で再会して一気に……て感じで♪」
「結婚してる2人とも小学生から縁を作っとんのかい」
「うわぁ〜、小学生が最大のチャンスかよ〜! 男友達とばかり遊んでたなぁ」
弥一の話を聞けば、勝也の時に続いて番は頭を抱える。
何で女友達と親しくなって一緒に遊んだりしなかったのか、今更ながら過去の自分へ「男とばっか遊ぶな!」と注意していた。
「あ、ちなみに知ってるー? ゴロちゃん、牙裏で先輩だった女子と同棲してて近々結婚するそうだよー」
「三好が!?」
弥一の言うゴロちゃんとは三好五郎の事で、彼は牙裏を卒業すると埼玉フォルテへ入団。
埼玉で牙裏の先輩、向坂愛奈と一緒に住んで互いに結婚の決意を固めた。
「あの後輩、何時の間に同棲しとったどころかタツさんと弥一に続いてゴールインかい!」
「10代の結婚ラッシュじゃねぇか!」
これには勝也、想真、番の3人は初耳で驚いてしまう。
「婚姻届を提出する前、わざわざ狼騎さんの所まで行って保証人になってもらってたからねー」
「あいつが保証人って大丈夫なん……?」
「ゴロちゃん的に狼騎先輩じゃないと絶対に駄目、て感じで最終的に押し切ったみたいだよー」
弥一の話を聞いていて気の所為か、彼らのやり取りが目に浮かぶ。
こんな感じでリモートの会話を楽しみ、話題の方は今年について語られた。
「──今年はオリンピックが始まって、その為の予選も1月からもう始まっちまうな」
「ああ、アジアカップっすね」
勝也の口から出た五輪の話題。
これには番や酒を飲んでいた想真の表情も変わる。
「これ勝たんと本戦には行けんから、此処めっちゃ大事やな」
「俺達自身が本戦のメンバーに選ばれるか分かんないけど、負けたら本当水の泡だし……負けらんねぇだろ」
本戦へ出場する為の避けられない道で、この大会が最も重要だと皆が理解していた。
「U-20のワールドカップとはまた違うしな」
今回は4年に一度の開催となる最大規模の国際大会で、以前に制したU-20以上の激しい戦いになる。
簡単な試合は無いなと勝也が考えていた時──。
「アジアで止まってらんないでしょ。僕はスタートから出るからね」
金メダルを目指すなら予選で止まっている暇は無い。
そう言ってアクアクーラを飲み干した弥一は、アジアカップに初戦から出る意思を見せる。
「スタートからって、ミランでの試合もあるのに大丈夫か?」
「交渉して許可は取ってるから行けるよー」
ビッグクラブ所属では合流が厳しいと考える勝也に、弥一は問題ないと笑顔で返す。
ミランの上層部とは既に話し合いが終わり、アジアカップへの出場に障害は無い。
「つか弥一に関してはミランの方でチャンピオンズリーグもあるだろ。オリンピックの前に」
「あるねー。だから去年以上に忙しくなっちゃうかなぁ〜」
番だけじゃなくメンバー全員が知っている。
今年の弥一はミランの方で、欧州チャンピオンズリーグの決勝トーナメントが控えている事を。
「弥一、結構ハードスケジュールが続くけど大丈夫か? CMや取材も受けたりと、キャパオーバーで潰れんの駄目だからな」
「大丈夫だってー。結構その辺り皆気を遣ってくれたりしてくれてるし♪」
勝也としては弥一の活動が多過ぎて、休む暇が無いのではと弟分の体が心配になってくる。
「忙しくても、オリンピックの舞台には確実に行くからねー」
新年が始まり、彼らには五輪の本戦出場が懸かったアジアカップが控えていた。
今年に入ってすぐ、大事な戦いへと弥一達は赴く……。
弥一「ちなみにこの後、リモートでシュートスナイパーの番組に出演しました♪」
勝也「結局仕事してんじゃねぇか。休めって」
弥一「最近ずーっと2人に無茶振りとかやってなかったから、そろそろやっとかないとって思ったんだよー」
想真「お前ホンマに引退後はお笑い行く気ちゃうやろな?」
弥一「うーん……ノーコメントで♪」




