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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
始まりの彼が存在する物語 五輪 始動編

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一つの武器を磨き続けた職人

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『日本先制点ー!! 新チームとなって最初のゴールを決めた照皇誠!』



『ドイツのDFが1人上がっていた事で、中央が空いてましたね。それを狙ったのか神明寺のパスが急所を射抜くかのようで、素晴らしかったです!』



「流石じゃねぇか照皇! やっぱ頼れるなぁ!」



「いや、今のは俺じゃなくて神明寺でしたから」



 勝也達が駆け寄って祝福すると、ゴールを決めた照皇の目は弥一に向いていた。



「謙遜しないでくださいよ照さんー。あのパスを扱って決めたなら、ふんぞり返って良いと思いますし♪」



 自分のパスよりゴールを決めた方がヒーローだろうと、弥一は陽気な笑顔で照皇の得点を祝福。



 日本の選手達が喜ぶ一方で、ドイツサポーターの方は静まり返っていた。




「すまん! 不用意に上がっちまった……!」



 弥一から煽られ、日本のゴール前まで上がってしまったシュテルン。


 取り返しのつかないミスで失点を招いた事に、皆へ謝罪をしていた。



「考えも無しに感情のまま、オーバーラップは駄目だよ。と言っても、充分過ぎるぐらい分かったと思うけどね」



 そんな事は無いと励まさずに、ハルトから注意が飛ぶ。



「とにかく点を取り返さないと僕達は負ける。応援に来たサポーター達のブーイング、浴びたくないでしょ?」



「当たり前だろ。このスタジアムで負けられないし、2点をすぐ取り返しに行かなきゃならない」



 親善試合とはいえ、サッカー大国であるドイツが負ける訳にはいかなかった。


 特に本来は格下であろう日本を相手に。



「ああ、また考えも無しに上がるのは止めてね? ヤケを起こして上がったら、それこそ向こうの小さなDFに好き放題やられかねないよ」



 ハルトの目は、得点をチームメイトと喜び合う弥一の姿を映す。


 彼のインターセプトからロングパスが失点を招き、とても偶然とは思えない。



 全て狙ってやったとしたら、恐ろしいまでの視野と技術の持ち主で、最も警戒するべき相手だ。



 此処からハルトの注意は弥一に向く。




 前半は1ー0と、日本が1点のリードを保ったまま折り返す。



 優勢といえど修正すべき点があって、クレイラに何度も競り負けて抜かれてる冬夜を下げ、狼騎が左サイドに入る。



 前回に続き、康友は狼騎をサイドに起用していた。



『後半、日本は酒井を左サイドに入れましたね。デンマーク戦と同じ陣形です』



『これは本戦を見据えてるんでしょうか? 本来のストライカーではなく、こっちで磨きをかけさせていく狙いかもしれません』



 後半のフィールドに狼騎が現れ、ポジションにつくと弥一が近づいていった。



「狼さんなら遠慮なくパス出せるねー♪追いついてくれるでしょ?」



「てめぇ、追いつけねぇようなボールでも出す気か」



「そんな意地悪なの出すつもりないよー。通らないと、ただのパスミスで終わっちゃうし」



 左サイドに狼騎が居るなら手加減せず送れるなと、弥一は悪戯を企む子供のような笑みを浮かべていた。



 彼の微笑みを見た狼騎は、月城に出すようなパスが自分にも来るなと、今のうちに備えておく。




 ピィ────



『日本ボールで後半の試合がキックオフ! この1点を守りきれるか、それとも追加点を取って突き放すか!?』



『点差を広げて困るような事はありませんからね。積極的に狙ってほしいと想います』



 ドイツは開始からボールを持つ日本選手に向かって、囲むように動く。



「回せ! 捕まるな!」



 執拗なプレスに押されないよう、勝也が早めにパスを回せと叫び、テクニックに優れる春樹と明がワンタッチで繋ぐ。



 囲まれないようにボールを動かし、追いかけてくるドイツ選手から逃げる。



 消極的だと言っているのか、攻めずに逃げてばかりの日本に対して、多くのサポーター達から一斉にブーイングが飛んでいた。



「気にせず回そうー! 嫌がってる証拠だよー!」



 ブーイングが来たら、それをされては困るんだと弥一は皆へ伝える。



 こちらがリードを奪っているので、無理に追加点を狙う必要は無い。


 普通に攻めても守備やフィジカルに優れるドイツ相手では、高い確率で跳ね返されてしまう。




「っと……」



 弥一がボールを要求しようとした時、側にハルトが来ていると気づいて上げかけた右手を引っ込める。



「(分かっていたけど、スレイダー並に隙が無いなぁ)」



 自分へ警戒の目を向けていたのは察知し、隙を掻い潜れるか探ってみるが、どのコースに蹴っても反応されて止められそうな予感しかしない。



 狼騎を活かそうと考えていたが、ハルトによって難易度は増していた。



「春樹! 前送れ!」



 中盤でパスを回し続け、勝也はロングボールを蹴るように春樹へ伝える。


 崇拝する者の声に応えようと、春樹が大きく蹴り出そうとするが、寄せていたシンビオスにボールを弾かれてしまう。



 高く上がった球にクレイラが向かい、対抗する為に番が空中戦を挑む。



「うおっ!」



「ぐっ!」



 両者の激突は互角でボールは零れ、芝生の上を転がっていく。



 そこに素早くハルトが走るとボールを拾い、弥一も寄せてきた。



『拾われた日本! 要注意のハルトに神明寺が再び立ち塞がる!』



 後半も軽やかな動きでフェイントを繰り出し、弥一は釣られずハルトの前に現れ続ける。



「君、何処でそこまで上手くなったの!?」



「変わり者の友達と散々やったからねー!」



 互いが攻防戦を繰り広げながら言葉を交わし、ハルトは弥一を見たまま左足の踵で後ろへ下げる。



 そこにクレイラの姿が見えると、来たボールに対して右足のダイレクトで前へ送った。



 同時にハルトは走り出して、クレイラとのワンツーでゴール前へ向かう。



「(高っ!)」



 低めのパスを出さずに高く上げていた為、弥一がインターセプトを狙う事は出来ない。



 勝也との空中戦で高いボールに強いのは証明済み。


 ハルトは跳躍しようと地を蹴る。



 ガッ



「っ!?」



 空へ飛び立つ刹那を狙い、弥一はハルトに肩から勢い良くぶつかっていった。



 これにはタイミングを狂わされて飛べず、流れたボールは龍尾がキャッチ。



「(空いてる!)」



 ターゲットを素早く見つけると、すぐに龍尾は右手でボールを投げる。



『ハルトに合わず、工藤がボールをキャッチ! おっと、すぐにスローイングだ!』



 先にいた勝也へ渡ると前を向いてドリブルで運び、彼の目が左サイドへ向く。



「(空いてんじゃねぇか! あいつなら!)」



 このカウンターによって、空いているスペースに気づくと勝也は右足でパスを送った。



 ボールが出された瞬間、左サイドで出場の狼騎が持ち前の反射神経と瞬発力で迫る。



「うおおっ!?」



 狼騎が追いつく前に、滑り込んで来たランドルフの右足にかかって、派手にフィールドを転がってしまう。



『抜け出した酒井! っとランドルフの足にかかって笛が吹かれる!』



 ドイツのファールで、日本は左サイド寄りからのFKが与えられる。




「鳥羽、交代だ!」



「! っす……!」



 セットプレーのチャンスと見れば、康友は鳥羽に声を掛けていた。



『おっと、此処で日本ベンチが動きますね。照皇に代わって鳥羽が入るようです』



『J1ではセットプレーで沢山のゴールやアシストを決めた実績がありますからね。この局面で彼だろうと、康友監督は送り出したんだと思います』



 照皇がフィールドを出ると、代わって背番号13のユニフォームを纏う鳥羽が入る。




「よう、チビ君は側に突っ立っててくれねぇか?」



 弥一へ駆け寄った鳥羽は、キッカーの位置にいてほしいと頼む。



「僕が側に居る事で警戒を誘うって訳ですねー♪」



「それもあるけど、他にもちょっと理由はあってさ」




「(俺の今の力を間近でお前に見せつけてやる為さ)」



 会話をする中で弥一は鳥羽の心が見えていた。



 高校時代に立見と真島で試合を行い、弥一の立見が勝利して鳥羽は彼の前に何も出来ず完敗。



 その悔しさから愚直なまでに磨け続き、今や日本のトップリーグでプロとして活躍する1人。



 あの日に敗れた自分が今、これだけ成長してるのを弥一に見せてやりたいと、それが鳥羽を此処まで突き動かす。



「(じゃあ、特等席で見学させてもらいますねー)」



 弥一は蹴らずに動かないが、それでも彼がキッカーの位置に近づけば、ドイツの選手達は警戒してくる。



 居るだけで意識が向けられる程、弥一はキッカーとしても有名になっていた。




「(見せてやるよ──今の俺を!)」



 ドイツゴールの左側からのFK。


 ゴール前には大城の姿が上がっていたりと、日本の長身選手や高さに自信のある選手が虎視眈々とゴールを狙う。



 鳥羽がゴールを鋭い目で見据えてから、右足を振り抜いた。



 あっという間にドイツ選手の立つ壁の頭上を飛び越え、ボールが多くの選手達がいる方へ飛ぶ。



「!?」



 そのまま来るかと思えば、ボールは曲がって加速していき、ドイツゴールの方へ向かう。



 クロスだと思っていたモートンは直接と考えておらず、左腕を伸ばすもボールは命を宿したように鋭い曲がりを見せる。



 モートンの左腕が掠める事もなく、ボールはドイツゴールの左上隅へ突き刺さってネットを揺らす。



 敗北を味わった日から一つの技を磨き続けた鳥羽の成果は、弥一の目の前で形となって現れていた。

弥一「あの女の子大好きな鳥羽さんが、こうして活躍するって何か良いですねー♪」


鳥羽「久々に目立てたのは良いけどよ……俺、「こいつ誰だ?」とか思われてねぇかチビ君?」


弥一「あ〜、確かに鳥羽さんが出てない間、沢山の個性強い人達出てましたからね〜。魔術士だったり脱ぎたがりだったり大巨人だったりと」


鳥羽「国内だけでも個性強いし、海外出たら俺霞むぜ多分……」


弥一「そこは、そんな事無いとは言えないですね〜」

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