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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第5章 東京代表との戦い

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咲いたゴールの華

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 時刻が午後へと迫る太陽の下で、立見と真島の後半戦が開始。スコアは0-0、両チームの応援も熱が入る。



 東京代表がこの試合で決まる大事な準決勝。フィールドに立つプレーヤーは勿論、それをサポートして支えるベンチ、応援してくれる家族や学校の応援団による声援。



 全てが大事な要素、戦う選手達の大きな力となる。




 今は立見が攻めて真島が守る展開。立見は成海がボールを持つのに対して、峰山と黒川の中盤二人がかりの守備で成海に思うようにプレーをさせない。



「2番と9番、注意な!」



 後ろからフィールド全体を見渡す真島GK田山。要注意のFW豪山、右サイドバック田村の動きを警戒して声を出す。



 成海から出されるパスは大体その二人の確率が高い。今は峰山と黒川が二人で詰めており、単独突破もシュートも困難な状況だ。


 此処からやれるならパスだろうと田山は見ていた。




 その時、川田がフォローに向かう姿がGKの位置から確認出来た。



「!16番上がって来てる……」



 田山から上がって来た事をコーチングで伝えようとしていたが、それより速く成海の方が存在に気付く。間髪入れず右足でパスを蹴り、黒川の股下を通すボールが川田へ渡る。




 これを見た真島DF田之上は3バックのラインを上げる。豪山に川田から来ると読み、オフサイドトラップを仕掛けようとしていた。




 だが、川田の判断は違う。




 ミドルレンジから思い切り右足を振り抜き、力のあるシュートが地を這うように飛び、直線的な軌道でゴール右下を捉えた。



「っ!」



 このシュートに田山が反応。両手を伸ばしてシュートへ飛びつき、川田のシュートを弾けば右のゴールラインにボールを逸らす。




 立見のCKのチャンスだ。



『後半、最初のシュートは立見の1年川田! 真島GK田山が弾き出してファインセーブだ!』



『まだ1年ですが良い体格ですね。そのパワーを活かした良いミドルだったと思います。これを防いだ田山君も流石ですよ』



「川田、良いシュート持ってるじゃないか」



 CKへ向かう際、武蔵が川田へ声をかけて良いシュートと褒めた。



「中盤でシュート撃てた方がやっぱ良いと思ってさ。密かにインステップは練習してたんだよ」



 そう言うと長身の川田は真島のエリア内に入って、高いボールが放り込まれた時のヘディングに備える。




 シュートの基本はインステップキック。これは主に強いボールを蹴る時に多用されており、シュートだけでなくロングボールを蹴る時にも使われたりと、ゴールキックの時もこれが使われている。



 なので、インステップキックは全ポジションにとって重要な技術だ。



 このキックは川田も使っていて、彼の場合はロングボールの時に蹴る事が多かったが、最近はそれでいいのかと考えるようになる。



 同じポジションの影山が時々攻め上がり、ミドルを撃っているのに対して、川田は前へ出ずに守備をしている時が大体だ。



 立見の攻撃パターンは主に成海や豪山によるものが多い。そこに影山や田村も絡んでいるが、上へ行けば行く程に彼らで得点する事が難しくなってしまう。



 この先、真島のような強豪と当たる機会は何度もある。その時に自らも攻撃出来ればと川田は考え、彼なりに動き出してインステップキックの練習を取り入れていたのだ。




 立見の1年は主に弥一や優也の活躍が目立ち、武蔵も成長してきてアシストを記録するようになった。大門もスタメンのGKとして定着するようになり、先程は鳥羽のFKを止めて自分のミスを助けてくれた。




 同級生の活躍に刺激を受け、川田は彼らに何時までも負けてられないと心を燃やす。





「(此処は……これで行こうか、今何かやってくれそうな気がするし)」



 右コーナーに立つ武蔵は真島エリア内を見据える。何処にボールを放り込もうか考えていたが、その考えはエリア内の味方の顔を見て纏まった。




『立見のCK、蹴るのは後半から出場の上村武蔵。こちらも1年です』



『今年の立見の1年は優秀な子が多いですね』




 武蔵のCKが始まり、左足で高く上げたボールは真島ゴール前、右手前の川田へと向かう。




 ジャンプすると同時に真島DF早坂も飛び、川田と同じぐらいの長身DFとの空中戦。




 頭同士の激しい激突で両者が倒れる中、ボールはゴールライン右に外れ、審判の判定はゴールキック。



 川田の頭が当たって外へ出たと判定が下ったらしい。




「おい、大丈夫か川田!?」



「つつ……平気です。身体や頭は頑丈ですから」




 ヘディングの後に川田が倒れるもすぐに起き上がる。成海に声をかけられると平気だと伝え、再び自分の足でフィールドに立ってみせた。




 対して真島のDF早坂がまだ起き上がれず、今の接触で何処か痛めたのかもしれない。




「(早坂は結構前半から動いてきたが……怪我が心配だ、準決勝だが此処は無理させられないな)交代だ、真田!」



「! はい!」



 真島の監督は早坂の負傷に無理をさせる訳にはいかないと、すぐに交代の判断をした後、控えのDF真田に交代を告げる。



 準決勝で主力のDFを変えるのはプラン外だが、今は選手の身を守る事が第一だ。此処は立見の1年達のように、こちらも1年に頑張ってもらう。




『おっと、どうやら早坂は負傷でこのまま交代のようです。変わって真島は控えの1年DF真田が入りますね』




 真島の控えDF1年の真田慶太さなだ けいた。176cmの茶髪短髪でCDF、やや細身だ。





「(大事な準決勝だ。急な出番で緊張してるだろうし、此処は慶太にボールを触らせて落ち着かせるか)田山、ちょっと」



 真田の様子を見た峰山はキーパーの田山に声をかけると、最初は真田へ軽く渡してボールに慣れさせるよう伝えた。










 真島のゴールキック。田山は打ち合わせ通りに、近くの真田へパスを送る。




 ボールを受け取ると、すかさず真田は中盤の選手に右足で繋ぐ。



「(よし、落ち着いてるな。いいぞ)」



 峰山は真田の様子を見て小さく頷き、安心すると前に出る。







「(俺にシュートは無い……ハッタリにしちゃ笑えねぇよチビ君が!)」



 真島の攻撃となって鳥羽は再び動き出す。立見DF後藤にマークされていたが、足の速さで後藤を振り切ってみせる。



「!(鳥羽がフリーだ!)」



 マークがいない鳥羽にボールを持つ峰山が気付く。先程後藤がついていた事は確認していて、それが今は無い。




 チャンスと見て鳥羽が走り込むであろうコースへと、峰山は右足で正確にパスを送った。



 鳥羽との付き合いはそれなりに長く、彼のプレーや要求は大体アイコンタクトで分かる。此処に走り込んで来るだろうと。




 思った通り、鳥羽は思い描いたコースに走っている。これが通れば得点のチャンス。




 だが、その鳥羽を遮る影が突然現れる。




「!?」



 鳥羽も、そしてパスを出した峰山も彼の存在に驚いていた。




 二人以上にパスのやり取りを前もって分かっていたかのように、弥一が峰山のパスコースに飛び込んでいて、ボールを奪い取ってみせたのだ。




『インターセプトー! 峰山から鳥羽という必勝ホットラインを1年DF神明寺弥一が断ち切った!』



『これチャンスですよ!?』




「(全部、分かってたよ!)」



 心の中で一連のやり取りを盗み見た。弥一ならではのインターセプトが炸裂し、武蔵へ左足の速いパスを蹴る。




「行け行け!カウンター行けるよー!」



 ボールを繋いだ後、後ろから弥一はコーチングで味方を鼓舞していく。




 武蔵が左サイドをドリブルで駆け上がり、そこに真島DF矢野が向かう。



 それを見た武蔵は中央へ左足でパスを出し、成海が受け取ると変わって入った真田の居るエリアの突破を狙いに行く。




 動きを見て真田も止めに向かうが、成海は素早く右へパス。



 受け取ったのは上がって来た川田だ。




「(こいつ、さっきシュート撃って来た! また来る前に!)」




 真田は全速力で猛然と川田へ迫って行った。足が速くCDFというポジションの中では速い方に入り、彼のスピードは部内でも1、2を争う。




 これを躱そうとした時、真田の足に自らの足が当たって川田が転倒。




 審判はこの場面を見て素早く笛を鳴らす。真田が川田の足をかけて妨害したと判断し、真島のファールを取った。





「ナーイス川田! よく此処まで運んでくれたね♪」



「いやー……出来れば躱してシュートまで行きたかったけど」



「良いって、良い位置からのFKだしさ」



 弥一が駆け寄り川田を褒めるも、彼は少し悔しげな表情。本人としては最後まで行ってシュートしたかったらしいが、成海は上出来だと川田の肩に手を置いて労った。




 真島ゴール正面から、やや右の位置で距離としては25m程だ。




「す、すみません!」



「大丈夫だ。此処を守れば良い」



 ファールをした真田は頭を下げて謝っている。峰山は気にするなと伝えてから、壁の役になる為にボールの前へ立つ。




 田山の指示で真島の壁はしっかり作られていき、立見のFKをなんとしても止めようという構えだ。




『さあ、立見のFK。鳥羽が蹴った位置より近く、立見のキッカーはキャプテンの成海、シュート力チーム1の豪山、最近ではCKを蹴る上村もいますが彼は……ボールの前に立ちませんね』



 ボールの前には成海、豪山と立見のキャプテン、副キャプテンの二人が立っていた。




 そこへ、もう一人の人物がゆっくりと近づいて来る。




『おっと? これはDFの神明寺までボールに近づいていく。まさか彼のキックもあるのか?』




「(神明寺……あいつが蹴る? いや、注意をそっちに向けて成海か豪山に蹴らせる。ただの囮かもしれない)」



 田山は弥一が蹴ってくるのかと一瞬思ったが、本命は成海、または豪山であって彼は囮なのだろうと考えた。



 守備がいくら凄くても、FKでも凄いとは限らないだろうと。





「(多分神明寺は囮で、俺達を惑わせようとしてる。あいつは無視して成海と豪山に集中するんだ)」



「(おう、了解)」



 壁役の真島選手達は小声でやり取りを行うと、壁の動くタイミングや狙いは二人のみに限定する事を決める。






 立見は右に成海、左に弥一、そして助走の距離をとった豪山。それぞれボールの近くに居て、誰が蹴るのか分からなくしようと位置についていた。




 真島の方は狙いを成海、豪山と決めて弥一の可能性は捨てている。




 仮に来たとしても、そこまでのキックは蹴れない。止められると思っていた。





 審判の笛が吹かれて豪山が走ると、壁は身構えた。成海は動かないままで、豪山かと壁もキーパーも判断した。










 次の瞬間、弥一が軽やかなステップから、右足でこするようにボールを蹴り上げた。




 意表を突かれたが、ボールは壁の右横を抜けたもののゴールからは外れている。そこから曲がるとしても枠は捉えられない。




 外れる。



 田山はそう思っていた。







 だが、ボールは急激に曲がっていくと、外れると思われたコースからゴールの枠内。それもGK取り難い右下隅を何時の間にか捉えていた。



 生きているかのように、外れると油断させて一気に噛み付いて来るように。




 それにキーパーの田山が気付いた頃には、もうボールはゴールマウスへと吸い込まれるように入っていた。




『き、決まった!? 1年の神明寺弥一、完全に外れると思われたキックがまさかのゴールだ!? 鳥羽の必殺FKのお株を奪うワールドクラスのキックが炸裂ーー!!』



『彼はマジシャンですか!?』




 準決勝の先制点が入り試合がついに動く。弥一がもたらした先制ゴール、彼の芸術的FKに会場が揺れる事は避けられなかった。



「やったやったーー♪」



 弥一は飛び上がって喜び、チームメイトもこのゴールに全員が喜んでいた。




「凄い凄い凄い!神明寺君凄いよー!」



「く、くるし……ラッキー先生~……」



 弥一のスーパーゴールによる先制点。ベンチの幸は摩央の胸ぐらを掴み、揺らしてエキサイトしている。





「(よし……!)」



 ベンチに座っていた優也も小さく拳を握ると席を立ち、出番に備えてアップを開始した。




「嘘だろ……何なんだよ今の曲がり……」



 信じられない急激な曲がりをしたボール。完全に外れると思ってしまった田山。反応しきれず見送ってしまい、ゴール前で彼は呆然としていた。



 鳥羽のキックも受けて来て、変化するボールへの対応に自信はあったはずだ。それなのに決められたのは油断したのか、それとも弥一のキックが鳥羽を上回っていたのか。



 どちらにしろゴールを割られたのは事実だ。






 そして呆然としていたのは鳥羽も同じだった。




 その鳥羽に一通り喜び終わり、ポジションへ戻る弥一は鳥羽とすれ違う。




 二人の目が合えば、弥一はニヤリと笑みを浮かべて見せた。




 まるで鳥羽の宣言したゴールという華。それを自分が先に咲かせてやったと言わんばかりに。





「神明寺……弥一……!」



 ストライカー対決という声が高く、どちらのFWがゴールを決めるか注目される中で、それを嘲笑うかのように先にゴール。先制点をかっさらっていった弥一に、鳥羽はギリッと歯を噛み締めて弥一を睨んだ。

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