表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第5章 東京代表との戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
70/881

難敵と奇襲の一撃

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 インターハイ東京予選も準々決勝まで来て、立見は去年の選手権に並ぶベスト8を確定させていた。



 創部から数年ながら強豪校に混じり、勝ち上がれたのはまさに快進撃。激戦の東京予選に旋風を巻き起こしたと言っていいだろう。




 だからと言って満足など決してしない。かつて勝也が作り上げた立見サッカーは、此処がゴールではないのだから。



 この先の立見に待っているのは、壁を乗り越える戦い。相手も益々強敵となって楽な試合など一つも無く、皆が甘く見ずに全力で臨むはずだ。




「そこ! チェック甘いぞ! 展開もっと速く!」



 試合の2日前、選手の動きを見ていた成海は次々と指摘をしていく。雰囲気はピリッとした感じになっていた。



「らぁ!」



 それはフィールドで競り合ってる豪山も同じで、マークを蹴散らしてヘディングで合わせるもタイミングが合わず、シュートが枠に行かない。




「キャプテン達、何かピリピリしてるな」



「やっぱ相手が相手だからなぁ」



 2年の部員二人はキャプテンと副キャプテンの両者が、次の相手を意識しているせいか何時もと雰囲気が違うと、密かに話していた。



 その話を聞いている小さな存在に気づかないまま。




「先輩達、次の相手キャプテン達と因縁でもあるんですかー?」



「うお!? 何時の間に!」



 2年部員の前に何時の間にか弥一が立っていた。フィールドといい何処までも神出鬼没なチビだなと、ビックリしつつ突然現れた後輩を見下ろす。



「知らないのか? 立見の次の相手、音村学院ってのは過去に2度立見が負けてる相手だ」




 音村学院。



 此処数年で急速に力を付けてきた新鋭校で、今年はシード校に昇格して支部予選を免除されている。



 全員攻撃、全員守備のサッカースタイルでオランダのトータルフットボールを思わせるスタイルだ。




 2次トーナメント1回戦、2回戦を戦い8-1、6-0と大差で相手を下して優勝候補の桜王、真島を止めるのではと噂される。立見は過去に彼らと試合をして敗れた過去を持ち、新たな領域へ行くには難敵の壁を超えなければならない。




「へえ~」



 弥一はスマホで音村学院の試合を見ていた。



 全員が走り、ポジションに縛られないフリーランニングを展開する。積極的にボールを持つ相手へ数人でプレスに行き、奪った途端に全員が上がって攻撃へと出る。



 相手からすれば人数をかけての攻撃と守備、前もって分かっていようが実際に見て体感では全く違うだろう。




 彼らのサッカーの前に立見は二度の敗北を味わい、壁を破れずにいる。



 過去の成海、豪山、そして勝也が越えられなかった壁。そこに今回は弥一達が挑もうとしていた。






「おい智春。音村を意識し過ぎて力入ってるぞ」



「ああ、でもお前も今日ピリピリしてるけどな」



「……」



 互いに指摘し合う成海と豪山。休憩時間に給水する二人の間に沈黙が支配。明後日の相手は立見が敗れ続けた音村学院。


 意識するなという方が無理なのかもしれない。



 誰も入れない空気が漂う二人の空間に、平然と入ってくる存在があった。




「大丈夫ですよキャプテン達ー♪」



 何時もの陽気な笑みで弥一は成海、豪山へ話しかけると彼は次の言葉を伝えた。




「明後日で音村の連勝は消えますから」



「!」



 マイペースな口調から、ハッキリとした言葉で弥一は言い切る。音村の連勝が消えるとなれば、立見が彼らを相手に勝利するという事だ。




「ね、だから何時も通り行きましょうよー。全体の士気に関わりますしー」



 大事な準々決勝を前に成海や豪山と違い、弥一は何時も通りだ。難敵である音村に対して勝つと言い切る何時ものビッグマウスを聞くと、二人は昂ぶっていた心を落ち着かせる。



「……ふう、悪い。お前の言う通りピリついてたな。変に相手を意識し過ぎたのは俺の方か」



「何時も通りが一番だな結局。よし、仕切り直しだ。休憩終わり! 皆行くぞー!」




 彼の言葉を聞いたら安心してリラックス出来る。音村の連勝が止まるというのも、大半の者が聞けば単なるハッタリに聞こえるかもしれない。



 ただ、不思議とそうは聞こえなかった。ひょっとしたら本当に止めるのではと、弥一が言葉に魔法でもかけたかのように思えてしまう。





「トータルフットボールは1970年代に生まれてオランダが使っていた。ポジションに縛られず全員で攻撃、守備と動き回って高い技術とスタミナと戦術眼が求められる。そんな昔流行ったのを今、音村学院が使ってるのか」



 何時も通りスマホで情報をチェックする摩央の隣で、弥一も同じようにスマホを操作している。トータルフットボールとは何かについて調べており、とりあえず主な特徴は理解出来た。



「別に珍しくないよね。そういうサッカーに憧れて、そのスタイルを各校が追求してるみたいで実戦で使う強豪校も居るみたいだし」



 武蔵がドリンクを飲んで、喉の渇きを潤す。6月ともなれば蒸し暑さを感じ始め、体力を奪われやすい暑さも敵となる。こまめな水分補給は非常に重要で、立見サッカー部は積極的に行っていた。




「うわ、この試合は音村5、6人ぐらい相手のエリア内入り込んでる。これ凄ぇなぁ」



 音村の過去の試合を摩央がスマホで見ていると、音村は相手エリアへ人数かけて攻め込む。相手守備陣をパスや個人技で揺さぶって、FWが最終的に右足一閃でゴールネットを揺らす。



 まさに全員サッカーで音村はそれを実行している。




「キャプテンの3年OMFの島坂康夫しまさか やすおが中心で去年は桜王相手に1ゴールを決めてる……」



 更に調べると黒髪の真ん中分け。身長172cmの攻撃的MFに位置する、背番号14島坂が音村の要で攻守を支え、東京王者の桜王から得点を決めている強者だと分かった。




 この日の練習は終わり、スタメンが発表。翌日は何時も通り完全休養をとって試合に備える。





◇  ◇  ◇


 準々決勝の日を迎え、両選手が会場に集結。ベスト8まで来れば応援の規模は大きくなり、特に立見サッカー部は創立から初のベスト4がかかっているので、応援にも熱が入る。




 フィールドには成海、島坂と両キャプテンがコイントスを行い先攻は立見が取った。



「此処まで快進撃ご苦労さん。立見はまた此処で終わりだ」



「……!」



 成海の耳元で島坂が挑発するように囁く。



 島坂は過去に立見と対戦した時、いずれも試合に出場。彼自身ゴールを決めており、今回も立見に負けるとは微塵も思っていないようだ。



 此処は通過点に過ぎなくて、先に居るであろう真島と桜王しか眼中に無い。立見はその為の踏み台だと、言葉だけでなく態度でも語っている。




「3度目の正直って言うだろ」



「2度ある事は3度ある、ていうの知ってるよなぁ?」



 成海が言い返すのに対して島坂は見下すように笑い、明らかに彼は立見を下に見ている。2度負かしたという実績か元々の性格かは知らないが。



 成海が先に引き返すと島坂も鼻で笑って引き返す。







「立見が此処まで無失点なのはまぐれとラッキーだ。速攻で失点させて化けの皮剥いで慌てさせ、かく乱させるぞ。歳児って野郎が出て来る前に大量得点で勝負つける」



 円陣を組んだ音村。キャプテンの島坂が声をかけていき、最後に全員で声を揃えれば、それぞれがポジションにつく。






「勝つぞ!立見GO!」



「「イエー!!」」



 立見の方も円陣を組み、何時もの儀式を済ませてからフィールドに皆が散る。








 ピィーーー




 準決勝の切符を賭けた試合が今開始され、キックオフから成海を中心に速いパス回しで展開する立見。



 そこに音村の選手数人がプレスに向かい、すかさず成海は左へパス。



 鈴木が受けるとドリブルで上がろうとするが、彼にも二人がかりの音村の守備。これをキープ出来ず、相手にボールを奪われる。




 その瞬間に音村は一斉に攻撃へと転じて攻め上がり、皆が立見のゴールへ向かう。得意の全員守備からの全員攻撃、ポジションに縛られないフリーランニングだ。




「おーし攻めろ攻めろ!」



 島坂の掛け声と共に音村のパス回し。島坂の巧みなボール捌きを織り交ぜ、立見を翻弄する。攻めていた立見からボールを奪い、カウンターで一気に攻めてゴールを奪いに音村は動き出す。



 音村が人数をかけて立見のゴール前へ侵入しようとしている。




「ヤバい!」



 これに摩央は思わず立ち上がり、声を発した。



 音村は立見ゴール前へ走る島坂にラストパスを送り、得点のチャンス。










「ナイスパース♪」



「!?」



 だが、音村のパスは通らない。此処で来ると読んでいたのか、弥一は島坂にエリア内へ侵入される前にボールを右足で受け止めていた。



 予想外の事に音村の面々は驚いたのか、一瞬足が止まる。まさか今のを読まれるのかと。



 その隙を弥一は見逃さず、密集地帯をドリブルで抜け出して突破する。




「あのチビ! 寄せろ!」



 今から走っても島坂では距離が追いつかないので、味方にプレスの指示を送る。




 その瞬間に素早く成海へパスが出され、そのまま弥一に音村の一人が寄せに行く。






 フッ




「(え!? き、消えた!?)」



 寄せに行っていた選手から見て、いきなり弥一が姿を消したと、そう見えてしまい目を見開いていた。



 実際は消えていない。小柄な身体を生かし、他の選手をブラインドにして死角を作っただけだ。




「(成海!?)豪山マークだ!」



 DFの一人がボールを持つ成海に対して、豪山に来ると読めば指示を出して見失わないようにする。成海から左足によるパスが出され、反応した豪山が走るとDFも追う。




 パスが長く豪山は追いつけないと見れば、DFは成海のミスキックかと思った。




 だが、豪山の走りはDFを引き付けるただの囮で、成海の本命は違う。




 リベロの弥一が前線まで上がり、DFの裏スペースを走っていた。




「っ!?」



 これに音村キーパーが飛び出すも、その瞬間に弥一は右足のチップキック。ゴールバーを超えるのではないかと思う程の絶妙なループで、キーパーは反転して追いかけるが到底間に合わず。



 無人のゴールマウスにループは吸い込まれるように入り、先制点が決まった瞬間に歓声が沸き起こる。




「イエー! やったーー♪」



 DFの弥一は今大会どころか、高校の公式戦で初ゴール。それも難敵の音村相手に先制という、かなり価値の大きなゴールだ。




「うおおー! 神明寺決めたー!」



「コールコール! あ、でも神明寺は長くて言いづらいな」



「じゃあ弥一っしょ!」






「弥一! 弥一! 弥一!」




 応援席からの弥一コール。仲間に祝福されながら弥一はダブルピースで応える。




 音村が開始から立見のボールを奪ってカウンターに出たが、更に弥一がそれを奪い返すとカウンター返し。奇襲をかけた音村から先制点。



 序盤から音村のトータルフットボールの出鼻をくじかせていた。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ