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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第5章 東京代表との戦い

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雨雲の下で

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 2次トーナメントは2回戦へ入って、季節は6月となる。雨が降りやすい梅雨の季節だ。



 それを象徴するかのように今日の2回戦が行われる空は、今にも雨によって泣き出しそうな雨雲が漂っている。



「タオル余分に用意しておいて」



「は~い」



 雨が降り注ぐ事を想定してマネージャーの京子が動く。タオルを選手分だけでなく余分にマネージャー達の手によって準備が進み、彼らが存分に戦える環境を整えていった。



 顧問の幸も一緒にタオル等を用意し、マネージャーの仕事を手伝う。



 悪天候の中での試合も考えられ、雨の日に練習や紅白戦等を行ってきた。水に濡れた事で、ボールがどう動いて影響するか等の練習はしてきたが、充分な練習量ではない。



 雨が何時降るかなど分からない。そればかりは空の気まぐれだ。



 なので降った時は貴重な練習の機会。



 サッカーは雨が降っても中止は無く、余程の酷い豪雨でもない限り試合は行われる。






「早めに勝負をかけるぞ。降ってしまう前に立見から点を取れるだけ取って、雨が降ったら守りに徹するんだ」



 立見の2回戦の相手となる東京の名門校、水川学園。監督は空が悪天候へ変わる前に試合を決めるつもりで、前半から積極的に攻める作戦を立てて来ている。



 水川は雨対策としての練習を積んで来てはいるが、出来る事なら降りしきる前に前半で勝負を決めたい。


 あまり慣れない天候の中では、攻撃が通常より上手く行く確率が下がってくると思われ、それなら得点が期待出来る今こそ攻めるべき。



 今日の天気を見て、水川の監督は判断していた。




「おーし、行くぞー!」



 水川のキャプテンの掛け声で士気を上げた後、選手達は戦いの場へ向かう。








 名門のサッカー部で、過去に全国大会出場も経験している水川。個々の能力が高く、テクニックも高レベルだ。



 巧みなフェイントを駆使して右サイド、立見の鈴木を躱して進んで行く。低いクロスを早めに蹴れば、立見のゴール前へ飛ばされる。




「(ターゲットは此処っと!)」



「!?」



 そのコースに弥一が飛び込めば、右足で蹴り出して弾き返す。最初から此処に来るとバレていたかのように、相手のクロスボールを読んでいた。



 最初から心でバレてはいたが。




 再び水川がドリブルで右サイドを進むと、今度は高いクロスを上げた。




「(これは取れる!)」



 高いボールに対して今度は大門が飛び出しており、長い手と跳躍力によって誰よりも高く飛び、上げられたクロスを両手でキャッチ。倒れ込みながらボールを腕の中に収める。



 思うようにサイドからの攻撃が決まらず、上げていた水川の選手は何でだと困惑が生まれ始めていた。




「(何でこんな守り堅いんだよ!? 新設か本当に!?)」



 再び水川のボールとなり、中央からワンツーを織り交ぜてのドリブルで突破を狙うが、読んでいたのか今度は影山がボールをカット。



 立見の守備陣が次々と相手の攻撃を跳ね返し続ける展開だ。



「むう……!」



 水川の監督はベンチに座り、腕を組んで試合を静観。試合前に攻撃的に行くと、その通り水川は攻めているが、肝心の得点が入らない。



 良いシュートを撃つ事も出来ないまま、時間は刻一刻と経過し、監督は腕時計をちらっと見てベンチから立ち上がる。




「遠めから狙え! そのセカンドを拾うんだ!」



 確実に決めようとエリア内のシュートに水川は拘っていたが、そのシュートを此処まで1本も撃てていなかった。



 これでは駄目だと業を煮やしたか、監督はミドルやロングを駆使してセカンドを狙えと攻めのプランを切り替える。




「うお!?」



 シュートを撃とうとした刹那、隙をついて弥一がボールを取った。



 瞬時に前を見てから僅かな時間で判断した後、弥一は相手の左をすり抜ける速いパスを出せば、成海が右足でトラップ。




 だが、伊達に名門と言われてはいない水川の守備。成海への寄せが速く、豪山へのマークも怠らない。更に研究してきたのか、右サイドの田村の動きを同じサイドに居る選手がチェックしている。



 立見は主に豪山、成海、田村。この3人が前半の攻撃の要とデータは集まって、対策をしていた。



 成海への寄せが来る前に、成海は左サイドの鈴木へ横パスで左から展開。彼ら3人へ注意が向いている分、まだ甘い方にボールを託す。




 鈴木にも一人詰め寄られながらも左コーナーまで進み、相手は鈴木のクロスを上げさせまいと、しつこく迫る。



 やがてボールがゴールラインを割った時、審判は立見のCKと判定。



 これに水川の選手はゴールキックだとアピールするが判定は覆らず。





「此処で行って、上村君」



「はい!」



 此処で立見ベンチが動く。京子から交代を告げられ、武蔵はジャージからユニフォーム姿となって鈴木と代わる。そのまま左コーナーの方へと向かい、キッカーの位置に立つ。





「(成海が蹴るんじゃないのか?)」



「(油断するな、成海が加わって中は怖いぞ。豪山と共にマーク怠るなよ)」



 何時もCKは成海が蹴ってるのを見てきた水川だが、此処で武蔵がキッカーで成海が中に入るのは想定外だった。



 それでも要注意の豪山と共に見失わないようにと目を離さず、此処で失点する訳にはいかないと水川も必死だ。



 「(頼みます……豪山先輩!)」



 少し助走をつけて武蔵は左足で高いボールを蹴る。キーパーから逃げるようなボールで、水川のキーパーは空で舞う球を見上げ、これは取れないと判断して動かない。



 ボールは豪山の頭に合わせるように向かっていけば、マークについているDFと共にジャンプを行うと、頭一つ豪山の方が高い。



 水川DFもキーパーも豪山のヘディングが来ると備えている。



「(良い所に走ってるじゃねぇか!)」



 だが、豪山は狙わずに頭で落とした。これに意表を突かれた水川DF陣は反応が遅れ、そこに飛び込んでいくのは誰も気付いていなかった影山。



 走り込んでの右足ボレーのタイミングが合ってボールは飛ばされ、ゴール前は誰も反応出来ず、水川のゴールマウスは大きく揺れ動く。



 先制点は立見。影山がゴールを決めて1-0、表で目立つ者達ばかりに注意が行き、陰で動く者を見逃してしまう水川。前半終了間際に痛恨の失点だ。



「良いぞー! 影山ー!」



「よっ、シャドウボランチ!」



 影山が決めて立見イレブンは彼の周りに集まり、ゴールを喜んでいた。







「前半の失点は痛いが、まだ1点のビハインドだ。切り替えろ。幸いまだ雨も降っていない」



「攻撃の水川がこのまま無得点で終わるか! なあ皆!?」



「おお!」



 ハーフタイム、監督の指示。そしてキャプテンの鼓舞で士気を上げる水川イレブン。高度なテクニックによる攻撃を売りにしてる水川なら、2点取れる得点力ぐらい持っているはずだと、自分達に言い聞かせて自信を持たせる。









 後半に入って水川は積極的に攻撃へ出る。パス回しで立見をかく乱し、突破を狙う。名門サッカー部の速いパスワークが相手を翻弄していく。




 それも彼によって無となってしまうが。





「ほいっと!」



「!?(またこのチビ?何でバレる!?)」



「(つかこいつ最終ラインのはずだろ! 何でこんな前に……!?)」



 DFラインに居るはずの弥一が中盤でボールをインターセプト。彼はDFでセンターに居るはずだと水川の選手がラインを見れば、そこには弥一に代わり川田がその場所に居た。




 何時の間にかポジションの入れ替わりが、弥一と川田の間で密かに行われていた。




 かく乱しているはずが弥一によって掻き回される水川の攻撃陣。




 東京の名門を相手に立見が1点リードと、攻撃をまともにさせず攻めている。一部の観客は水川が優勢で、立見の快進撃は此処までかと思っていたが、今その予想は外れようとしていた。



 7試合連続無失点と同時に、連続ゴールの行方も気になる。




 その鍵を握る選手が後半30分ついに登場。



 優也が出てきて会場は彼への歓声に包まれる。6試合連続ゴール中の立見で一番の注目株と言われ、今や東京予選のシンデレラボーイの一人に数えられていた。




「スペース気をつけろ!あいつ狙って来るぞ!」



 優也の事も当然調べていて、一番の要注意人物として警戒する。水川は空いたスペースに、彼が自慢のスピードを飛ばして走り込むと予測。守りを固めつつ、互いに声がけを行う。




「(うわ、ゴール前めっちゃ固まってる! 出せるスペース無さそう……)」



 左サイドでボールを受ける武蔵。ゴール前には多くの水川選手が居て、前線には一人選手を残し、カウンターに備えていた。




 自分で切れ込もうにも、この包囲網に捕まる確率の方が高い。武蔵はその時ミドルレンジでフリーになってる影山に気付き、ドリブルでの侵入やクロスではなく中央の方へパスを折り返す。



 影山はそのまま走り込んでミドルシュート。右足を振り抜いてゴールを狙うも、固まっていたDFに当たってボールが弾かれる。




 高く上がったボールを豪山は強引にヘディングで狙うが、水川が粘りの守備でこのシュートもブロック。再びボールは流れ、エリア内の密集地帯へ転がる。




 水川DFがクリアしようと球に向かうと、横から風のような速さで迫る選手が現れた。



「っ!?」



 その時、水川DFが見たのはボールに頭から飛び込む優也の姿。



 彼は恐れもせず、低い球に対してダイビングヘッドでゴールを狙う。



 混戦の中でキーパーが反応する間もなく、ボールがゴール右隅へ入れば立見の得点が認められた。



「また決めた歳児ー!」



「あの1年、何処まで記録伸ばすんだよ!?」




 7試合連続ゴール、これが確定した瞬間スタンドが揺れる。




 速い事は分かっていた。だが優也の執念までは計算に入っていなかった。




 何がなんでも決めてやろうという気持ちで、優也は名門の堅いゴールをこじ開け、貴重な追加点が生まれる。




 後ろから武蔵が優也に抱きつき、豪山は優也の頭を雑に撫でたりと、クールな1年はゴールを決めれば手荒い祝福を受けていく。





「(強い! こんな強いのか今年の立見は!)」



 後半終了間際の失点。無失点記録を持つ立見相手に、2-0で此処から追い上げるのは不可能に近く、水川の監督は立見の強さに驚いていた。



 エリア内のシュートを許さぬ鉄壁の守備。100%の確率で決めているスーパーサブのFW。



 どちらも去年の立見には無く、今年大きく化けて出て来た。もしかしたら真島や桜王をも飲み込むのかもしれないと、水川の監督がそう考えている内に審判の笛は鳴り響いた。





 2回戦が終わり立見の勝利。7試合連続無失点と優也の7試合連続ゴール。名門水川を破った事で、立見の注目度はまた一つ上がるのは間違い無いだろう。





「雲にも感謝しないとなー」



 上空の雨雲が漂うのをベンチから見上げる弥一は呟く。



その雨雲からポツポツと雨が降りだして、段々雨足は強くなっていく。試合が終わって既にベンチに引き上げている立見は誰一人濡れず、雨の試合となる前に試合が決まる。厳しい雨の試合を経験する事になるのは、この後に試合をする高校の選手達だ。



 立見は運良く雨に打たれず、弥一は最後まで泣き出さなかった空と雲に感謝しながらチームメイトと談笑していた。




 立見2-0水川



 影山1


 歳児1

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