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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第4章 夏を目指して予選を戦う

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ストライカーの彼は天然のパサー

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 4月18日 火曜日




「ねえ、パス連付き合ってくれるー?」


「え? ああ、いいよ」



 サッカー部は朝練の時間を迎え、各自がボールを使って軽い準備運動をしている所に、弥一は武蔵へ声をかけた。



 武蔵からすれば、こうして弥一からパス連に誘われたのは初めてだ。




「(やっぱ上手いよなぁ)」



 互いにパスを出し合ってボールをトラップ。その動作一つ一つが、武蔵から見て弥一は上手かった。



 パワーでは他の部員に劣るものの、それを補い余りある程に技術が高く、キャプテンの成海をも超えるかもしれない。




 自分もイタリアや海外に留学にでも行っていたら、こうなっていたのかと自分が留学した時を想像する。



 だが、留学したからと言って必ず成功するとは限らず、あまりのレベルの違いに挫折も味わうかもしれない。



 日本と全く違う環境で日本よりハイレベルなサッカー。失敗する確率の方がむしろ高く、弥一のレベルの高さを思えば成功したんだと武蔵は思った。




「やっぱ上手いじゃん」


「え?」



 武蔵がボールをトラップすると心に思っていた言葉を言われ、思わず弥一の方を見る。



「トラップがすっごい正確でパスも受けやすい。君は良いパサーだよー♪」


「パサー……」




 今までずっとストライカーとしてやっていた。



 点を決めるのが一番格好良い。それがサッカーの華と思って、このポジションを続けてきた。なので他の場所をやる事は考えないまま、時が過ぎる。



 小学生の時はそれで通じたが、中学生だとFWとしては通じなくて、高校生となった今も変わっていない。



 昨日は間宮の激しい当たりがきつく、苦しくて逃げてしまう。この人の前でシュートは無理だと弱気になっていたのだ。



 そんな中で後ろへ下がり、武蔵が出したパスを優也が決めてくれた。その時に彼から、良いパス出せるじゃないかと言われる。




 優也に続き、弥一もパスを褒めてくれた。



 1年の中でレギュラーに最も近いであろう、実力者の二人から言われるのは悪い気がしない。




「パサーとか、考えた事も無かった。ずっとFWだったからさ」


「それってやっぱり点を決めたりするのが好きで楽しいから?」


「ああ、まあそうだね。ゴール決まると気持ちが良いしそれで勝った時とか最高で楽しいよ」



 弥一に問われた武蔵は、初めて得点を決めた時の事を思い出せば、その時の気持ちが蘇ったのか笑みが浮かんでくる。



「今もFWは楽しい?」


「! それは……」



 FWをしていたのは点を決めるのが楽しいから。それで勝った時がやみつきになったから。


 あの感覚をまた味わいたいと、その気持ちで続けてきた。



 だが、弥一に今もFWは楽しいのか問われると武蔵は言葉に詰まる。



 小学生の時と違って以前のような楽しさは味わえておらず、それで今が楽しいのかと言われれば首を横に振りたくなってしまう。


 自分より上のFWなど何人も居て、この立見も例外ではない。



 今の自分のFWとしての力じゃベンチに座る事も難しく、武蔵自身がよく分かっていた。




 そして自分で気付く。




 楽しくサッカーをやっていたのは最後、何時だったのか。今は悩んでばかりだという事に。




 そんな中で思い出される昨日の紅白戦。自分がパスを出して優也がゴールを決めた感覚、アシストが決まった時に久々に感じたサッカーの楽しさ。




 点を決めるばかりが華じゃないと、それをサッカーが教えているような感じだった。




「なあ……パサーって、どうすればいいんだ?」



 武蔵は自分から弥一へと尋ねる。パサーについての追求、今まで考えた事のないFW以外の新たな可能性。



 それを追いかけ始めた武蔵に弥一は近づき、武蔵の背中を軽く叩いて笑った。



「僕が教えなくても自然に出来てるよー♪」




 小学生から始め、中学生では壁に阻まれつつもサッカーを続けてきた。その経験値は生きている。それは昨日の紅白戦を見て分かった。



 日々の基礎の積み重ねを武蔵は既にクリア済み。



 後は己が活かして開花させる。そこが最大の壁だ。





◇  ◇  ◇


 学校の昼休み、弥一は定番となりつつある木の下で弁当を食べる。



 今日は武蔵も誘っての昼食となり、弥一は目当てのボリューム満点弁当が買えず、唐揚げ弁当と卵サンドとクリームパンで手を打つ。武蔵は惣菜パン2個と菓子パン1個の昼食だ。



「(此処は何時から1年の憩いの場になったんだ?)」



 元々は優也が一人くつろぐ場所として利用してたのが、気づけば弥一、摩央、大門、そして新たに武蔵が一緒になって昼食を共にしている。



 別にそれが悪いと思っている訳ではないが、このまま共に飯を食う者が増えていくのかと思いつつ、優也は弁当一つを平らげた後にフルーツ牛乳を飲む。




「へー、武蔵の所の家って寿司屋なの? 何時も寿司食えて良いなぁそれ」


「言う程食ってる訳じゃないよ。普通の家みたいに洋食とか、それ以外も結構出てるから」



 話をしていると、武蔵の実家が寿司屋である事が明らかになる。イタリアでの生活が長く、日本の寿司から遠ざかっていた弥一にとっては魅力的だと思えた。



「大門の家も中華料理屋だったし、もしかしてこの流れで行くと杉原の家は実はフランス料理店だったりとか!?」


「どんな流れだ。うちの家は普通で店とかやってねぇよ」



 今この場に居る大門と武蔵が実家は飲食店で、弥一は摩央の家も実は飲食店と期待するような眼差しを向ける。それに普通の家だと摩央は返してから、あんぱんの袋を開けてかぶりついていた。



「そういう神明寺君の家はどうなの?」


「うちも飲食店じゃないねー。父は商社の仕事でイタリアの方に単身赴任で、母も化粧品会社の社長やってて忙しいから」




「「……社長?」」



 その場に居た弥一を除く1年達の声が、一斉に重なる奇跡が起こる。



 父が商社の仕事でイタリアに単身赴任、そして母が会社の社長。




 つまり弥一は会社の女社長の息子だ。




「神明寺ってもしかして……」



「……実は凄い御曹司?」




 マイペースな子供みたいな高校生、そこから見えた新たな姿。



 今までその感じは全然見えず、近所の安いコロッケに美味しそうと釣られ、買い食いへ誘う姿を知っているので全く考えてなかった。



「あー、もう休み時間終わっちゃうよー」



「あ……!」



 昼休みの終了が近いと弥一が気付いて弁当をかきこめば、同じように武蔵もパンを完食して教室へ戻る。






 放課後、サッカー部はセットプレーの練習で攻守のチェックに入っていた。



 誰が1列、2列目に適しているか。改めて確認を行い、得点力を高めたり失点のリスクを減らす。



 成海が右コーナーからボールを蹴ろうとしていた時、呼び止める声がかかる。



「すみませんキャプテンー」



「どうした神明寺?」



 弥一が成海へと駆け寄る。彼は後の組に入る予定で、このセットプレーに出番は無い。




「1回キッカーの方を上村に任せてみません?」


「上村に?」



 武蔵は今エリア内に入っている。FWだが弥一は彼にセットプレーのキッカーを任せようと提案してきた。



 後輩から言われた言葉に成海は少し考えると、ゴール前に居る者へ視線を向けた。



「上村ー! ちょっと来いー!」



「!? は、はい」



 武蔵は急に呼ばれるとゴールから離れ、成海の元まで駆けつけるとキッカーを託す事を伝えられる。




「僕が成海先輩に代わってキッカーですか!?」



「だってさ、頑張れー♪」



 驚く武蔵に弥一は応援して、成海は武蔵と入れ替わる形でセットプレーの位置につく。





「(急に僕がキッカーって、昨日はパス上手くいったけどCKまで行けるのかな……?)」



 いきなりキッカーを任された武蔵は不安に襲われてしまう。FWをずっとやってきてCKを蹴った事は当然無く、蹴られたボールを頭や足で合わせる事が主で、それが当たり前だった。



 今日は役目が変わって、武蔵がパスを放り込む役目になっている。



「直接狙えるなら狙ってもいいよー」



「(いや、無理言うな)」




 後ろから弥一の声が聞こえた。上手いキッカーはCKから直接狙える技術を持つが、今日初めて蹴る武蔵に直接狙える訳がない。




「(多分、神明寺なら狙う技術も度胸もありそうだよな)」



 もし弥一だったら、そう思うと彼が直接曲げて狙って来る光景が目に浮かぶ。八重葉の時に見せたバナナシュートのように。



 王者を揺るがす程の一撃が格好良く、そういうのが自分にも出来たらと、試合を見て何回も思っていた。



 あそこまで行かずとも、昨日のように上手く行ければ。



 一歩でも同級生の優也、弥一に近づきたい。




 このキッカーの機会を第一歩にすると、武蔵は受け入れてゴール前を見据える。




「ってぇ!」



 右コーナーから左足で高いボールを上げる。手の使えるキーパーが高さでは有利だが、蹴られたボールはキーパーが飛び出しにくい場所。



「うお!」



 これに川田が頭で合わせて下へ叩きつけるヘディング。かろうじてキーパーが右手に当てて弾き出し、ゴールには入れさせない。




「良いぞ武蔵ー、ナイスクロスー」


「あ、ああ。ナイスヘッドー」



 また自分のキックを褒められ、武蔵は戸惑いながらも応えた。



 続いて反対側からボールを蹴る事になって、武蔵は再びボールをセット。




「(今度はキーパーが飛び出しそうなやつで釣って豪山先輩に!)」




 蹴り上がったボールにキーパーは取れそうと思い、前へ出ると逃げるように伸ばした腕から遠ざかり、豪山の方に向かっていた。



 中途半端に飛び出した所に頭で合わせ、ゴールネットを揺らす。




「良いぞ武蔵! その調子だ!」


「はい!」



 またパスが上手く行った。豪山から良いと言われて認められた気がして、自然と声も出せるようになっていく。




 久々かもしれない、サッカーで楽しいと思えるようになったのは。



「高いのだけじゃなく、グラウンダーとかショートも混ぜて行けよー」


「あ、はい」



 成海からアドバイスを受けつつ、武蔵はそのままキッカーを努め続ける。





「(分かってやってんのかなぁ。キーパーの最も嫌がる外へと逃げてく回転のかかったボール。嫌な位置に狙って蹴るコントロール。だとしたら天然のパサーだね)」



 シュート力など不足していて、ストライカーとしては物足りないと思われた武蔵だが、コントロールは正確でトラップも上手い。



 思ったより良いパサーになれて化けるかもしれないと、弥一は予感がして小さく笑みを浮かべた。

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サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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