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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第3章 全ての始まりとなった者

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彼の本気のサッカー

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 元々、勝也は勉強が得意ではなく苦手な方だ。頭脳明晰なマネージャーが傍にいなかったら、受験は危なかったかもしれない。




 4人で集まって勉強会。長い受験勉強の期間で体が鈍らないように、息抜きとしてボールを蹴ったり体を動かす。時間の経過は早く感じて秋が過ぎ去り、再び冬を迎える。



 勝也の家で何度か高校サッカーを見てきた。今年も炬燵に入って勉強しつつも、高校サッカーをテレビで見る。



「今年、俺ら立てんのかな? テレビに映る場所に」



「立てるかじゃないだろ。立つんだよ」



 豪山がテレビを見ながら言った言葉に勝也は力強く答える。まだ何も始まっていないが、試合をする高校生プレーヤー達が立っている場所。憧れて来た高校サッカーのフィールドに絶対立つ。



「勝也、そこ違うぞ」



「げっ!?」



 とりあえず現時点の最大の難関は、勝也が受験に合格出来るかどうか。



 一人だけ落ちる訳にはいかないと成海に指摘されながらも、勝也は思い描く目標の為に手を止めない。







 迎えた立見高校の受験。



 この日の為に勝也は準備をしてきた。人生で一番勉強して、仲間に教えられて支えてもらった。家族にも応援してもらい、前日にはカツ丼を食べようとしていたが受験間近に駄目だと言われる。



 ゲン担ぎとして受験に勝つという意味で良いと思っていたが、母から消化のために胃や膵臓の方に血液が行ってしまって、脳の活動を一時的に悪くしてしまう可能性あるからと言われ、カツ丼は控える事にした



 代わりに身体を温める味噌汁を朝から飲み、更にオレンジ等のフルーツも口にして勝也は家を出る。





 不思議と身体はリラックスしていて、緊張はあるものの根拠は無いが大丈夫と思えた。



 勝也は自分と同じ、大勢の受験生が居る教室で受験の時を迎える。



 開始と同時に今後の人生を左右するであろう白い紙へ向き合うと、勝也は自然と手が動く。



 これは解ける!



 脳は過去最高の働きを見せ、手を一切止めずに問題の答えを次々と書き進めていく。





 そして勝也が全ての問題を書き終えた時に受験は終了。



 まるでサッカーの試合を終えたような感覚だった。



 今回は人生で絶対に負ける訳にはいかない試合。勝たなければ自分のやるべき事が何も始まらない。



 後は合否発表の時を待つだけ。




 昔なら受験を受けた高校に行って、緊張しながら合否発表の掲示板を見に向かったものだが、今の時代ではホームページから確認出来るようになった。



 その時が来るまで勝也に出来る事は待つのみ。気が抜けながらも家に帰り、ひたすら眠る。








 合否発表の時。



 柳石サッカー部の部室で緊張して、中々ホームページの画面へと行けずにいた勝也。勉強に付き合った成海、豪山、京子も自分の発表は初めて見る。



 誰一人として欠ける訳にはいかないと、意を決して勝也は立見のホームページを見る。




 受験の発表は既に出ていた。



 4人はそれぞれの受験番号を確認。





「「あった」」



 それぞれの番号があった。そして心配していた勝也の番号もあり、全員が揃って立見の高校受験に合格。



 晴れて、この春から立見高等学校の生徒となる事が確定したのだ。



 まるでゴールを決めたかのように勝也は喜び、成海や豪山と喜びを分かち合う。



 その様子に京子はおめでとうと祝福の言葉をかけていた。









 中学を無事に卒業した4人は春を迎え、立見高校のグレーのブレザーに袖を通す事になる。



 創立から50年程になる高校はスポーツに力を入れている事で知られ、此処までサッカー部が作られていなかったのが不思議なぐらいだ。



 立見は主に野球の強豪校で知られて、サッカーよりそちらに流れる方が多い。加えて今は世界的に有名な選手の活躍で野球ブームは熱くなってきた。



 サッカー部を作ろうとした者は居た事はあっても人数が集まらず、部として正式に決定されなくて流れていたのだという。



 ただ、今回の勝也は実績と仲間の2つに恵まれている。



 小学生時代の全国優勝、中学生時代の全国ベスト4。



 中学のチームメイトである全国レベルのプレーヤー、成海と豪山。更に敏腕マネージャーの京子。



 本来なら他の強豪校に行ってる逸材が立見に集う。




「俺がこの高校に居る間必ず全国に通じる。いや、全国制覇を狙える部にしてみせます!!」



 4人で職員室にいる教師へ部を作ってもらうように頼み込む中で、勝也は力強く宣言。



 それを聞いていた校長が勝也の熱意を買うと、サッカー部の活動を許可してくれたのだ。部室も作ってくれるという事で、今は専用の部室が無いから我慢してほしいと言われるが、部の活動が出来るなら構わない。



 顧問には知識が浅く、サッカー好きという事で若い女性教師の幸が部の顧問に選ばれる。




 サッカー部の勧誘は始まり、人気スポーツのサッカーという事で人は集まって来る。更に中学時代に柳石で一緒だったチームメイトも何人か立見について来てくれて、経験者である彼らも入部した。




 芝のグラウンドが立見に元々あって、ラグビー部やアメフト部が合同で使っていたが、空いている時間にサッカー部も使わせてもらう。


 それまでの空き時間は基礎練習で体力作り。80分や90分戦えるスタミナを付ける為に費やすのみだ。





「ああ! 皆、これこれ! インターバルトレーニングって凄い効果じゃないの!?」



「先生、これは毎日やるようなトレーニングじゃないから週2回までで」



「あ……そうなんだ」



 SNSで幸は凄いトレーニングだと目を輝かせて皆へ見せると、京子は毎日ではなく週2程度が丁度良いと冷静に伝え、その後に部員達にも聞けばトレーニングの取り入れは決定。無論、毎日ではない。



 ユニフォーム等は幸が祖父へ自分がサッカー部の顧問というのを話すと、率先して力になってくれて、知り合いのスポーツ店にユニフォームやジャージを作らせてサッカー部へと送ってもらう。用具なども手配してくれた。




 監督やコーチの決められてきた練習とは違い、自らそれぞれが考えて練習メニューを作る。高校1年の今頃は基礎練の毎日だろう。



 此処はそれと違い、独自で考えて効率良く飽きない練習方法が出来る。そこが名門校には無い部員主体の強みだ。




 自由ではあるが、出来たばかりのチームでグラウンドを使わせてもらえる時間に限りがあって、更に選手層があまりに薄い。



 集まった人数はマネージャーの京子や顧問の幸を除けば15人。



 なんとか試合の出来る人数ではあるが、要の選手などが怪我で抜けたりでもしたら、チームが総崩れになりかねない。





「今からインターハイは、流石に間に合わないよな」



 1年の教室に昼休みの時間が来ると、勝也のクラスへ成海と豪山が集まって話し合う。それぞれ昼飯を持っているのが見えて、作戦会議を兼ねて昼食を済ませるつもりだ。



 なんとか部員は集まってくれた。練習も開始出来たが今からインターハイに出場は流石に無理がある。



 3人を含めて経験者は何人か居るものの、数人は基礎がなんとか出来ている程度で、それが公式戦で通用するとは成海には思えない。



 1年目は基礎の積み重ねだろうと。



「いや、登録したぞ?」



「は?」



 勝也は当たり前のように今回のインターハイに出ると、おにぎりを一個平らげ、お茶を飲んで告げた。この言葉に豪山は呆気にとられ、手に持ってたカレーパンの袋を机の上へ落とした。



「だからインターハイ、うちも出る事確定したからな。もう予選まで時間無いから効率良く練習してレベルアップしないと駄目だぞ」



「正気か? 通用するのか出来たばかりの部の俺らが」



 成海も信じられないといった顔で勝也を見ていた。この決断は、あまりにも無謀過ぎる。





「たらたらやってる暇なんか無いし、たった3年なんざあっという間だ。デカい公式戦が試合経験を重ねるのにピッタリなのはお前らも分かるよな? 成長のチャンスを自分から手放すなんて勿体無い事してられるか。それに負けると何も決まってない」



 出場を決めた勝也は強気で、決断を曲げる気は微塵も無い。



 冗談を言っているような表情には到底見えず、真剣そのものだ。3年の付き合いで成海と豪山は分かる。



 こうなった勝也は絶対に譲らないと。




 確かに練習試合を申し込んでも出来たばかりのサッカー部と、わざわざ練習試合をこの時期にしてくれる高校などは早々見つかりはしないが、絶対に試合出来る確実な方法がある。



 公式戦に出る事だ。



 練習どころか、ぶっつけ本番で文句無しの実戦。



 負けたら終わりの一発勝負で、練習と違って観客の目もある。本番独特の緊張感は試合でなければ味わえない。



 後戻りの選択肢は無かった。



 勝也が前へ進む道を既に選んでいるのだから。









 迎えたインターハイの東京予選。



 相手は都内で中堅ぐらいの実力を持つ高校。勝てない相手ではないはずだが、前半を互角に渡り合うと0-0で持ちこたえるも後半は立て続けに2失点。



 勝也がPKを取って1点を返すも、後半終了間際に前がかりに攻めた所へ、カウンターで1点を取られて3-1で敗戦。



 まだ身体が80分の感覚に慣れていなかったりと色々な敗因はあるが、初めての立見の高校サッカー公式戦はインターハイ1回戦敗退。





 高校の公式戦を1年から経験し、それを彼らは大きな糧として夏や秋と限られた環境で練習に励み続けた。



 勝也は次の選手権で絶対勝つぞ! と選手達を鼓舞して引っ張ったり、経験不足の同級生へ指導をしている。



 中学の時もかなりの熱量だったが、高校に入ってからの勝也はそれ以上だ。



 その時代、その時間を共にしてきた成海、豪山、京子から見て鬼気迫る程の物が感じられた。





 季節は冬、目標の選手権大会の時が来る。



 創部から1年目の立見も登録をしていて、此処で予選を勝ち抜き選手権へ出場し、更にその先の全国制覇。最大の目標を掲げた彼らの挑戦が始まる。




 だが、その前に立ち塞がる東京の強豪校。くじ運の悪さが出て初戦から当たってしまう。



 優勝候補の一校にも入る程で、下馬評は圧倒的に立見不利。それが世間の声だ。



 下馬評を覆そう。試合前に全員がそう意気込んで気合を入れると、冬の公式戦へと臨む。




 相手は伊達に優勝候補と言われてはいない。



 早いパス回しの連携に個人技、組織的守備と攻守に隙は無し。



 ボールを支配されて追いかけるも振り回され、体力を消耗させられてばかりだ。



 守りは立て続けに失点していく。相手のミドルシュートやアクロバティックな高難易度のシュートが炸裂すれば、観客から歓声が湧き上がる。



 派手なシュートが決まって圧倒。強豪校の凄さばかりが際立ち、立見は彼らの引き立て役となってしまう。





 前半が終わって4-0。




 この点差は致命的で此処から逆転出来るとは、会場の誰も思わない。前半に立見はシュートの1本も撃てておらず、守りに追われて4点を取られている。



 後半もこのまま行くだろうと、それが世間の予想だ。



 4点のリードがある相手チームの方も余裕そうで、談笑している姿が見える。





「(やっぱり……甘くないのか、高校は)」



「(俺ら、こんなもんだったのかよ……)」



 完全に相手のリードで前半が終わり、ロッカールームへと戻る成海、豪山は共に相手との力の差を思い知らされて心が折れている。


 他の皆も同じだ。



 1年目の部で1年ばかりの部員にしては強豪に4点で抑えた。むしろ賞賛される方だろう。



「み、皆よくやってるよー。優勝候補相手に健闘できてるって」



 重苦しい雰囲気。顧問として声をかけなければと、幸は元気づけようと言葉をかけるが雰囲気は変わっていなかった。



 京子もこの状況に黙って見守るしか出来ない。




 このまま後半を迎えて好き勝手にやられる事になるのか。




 誰もがそう思っていた時に勝也は立ち上がる。





「何だよ今日のサッカーは!」



 声を張り上げる勝也の声には、強い怒気が込められて顔も怒りに染まっていた。



「何時もの動きが全然出来てないじゃないか! そんなガチガチの保守的サッカー、強豪どころか格下にだって負けるだろうが!」




「保守的って、そんなつもりねぇよ……!」



「いーや! 何時もならもっとガンガン突っ込んでる所を行ってない! そういうのが出来てりゃ此処まで失点なんかしてなかったんだ!」



 選手達としては保守的なつもりは無いが、勝也からすれば皆が知らず知らずの間に強豪に飲まれ、萎縮してしまって保守的なサッカーへと走っている。そのように思えたのだ。



 これでは何も勝てないと、勝也は本気で怒った。




「今日のお前らは最低の弱さだ! こんなんで全国行けると思ったのか!? このまま負けて悔しくないのかよ! 悔しいなら……!」





「本気でサッカーやれよ!!」






 不思議とその言葉が深く突き刺さった。




 このまま終わる前に全部出し切る本気のサッカーをする。




 勝也のその言葉は立見を大きく変えた。





 立見は後半に入り、いきなり必死で相手を囲むとプレスをかけてボールを奪い去り、速攻を仕掛ける。



 ボールをキープする成海は身体をぶつけられるも、テクニックではなく強引に一人突破して豪山の前へ落とすようにスルーパスを送った。



 相手DFとキーパーが走って豪山も走ると、それぞれが思い切り激突。



 空いているゴールへ転がっていくと、ラインの奥まで行って審判はゴールの判定。豪山は触っておらず、DFとキーパーも触っていない。成海のスルーパスが結果としてゴールまで伸びて公式判定は成海のゴールとなった。



 豪山とキーパーは大丈夫そうだが、相手DFは今の激突で肩を負傷する。



 想定外の負傷に、相手ベンチが急に慌ただしくなってきた。




「もう1点もう1点! 今の流れのうちなら取れるぞー!」



 後ろから勝也は声をかけると手を叩いてチームを後押しする。まだ3点差あるので浮かれるのは早すぎだ。



 この1点、そしてアクシデントで流れは立見にあり。



 攻めるしかないだろう。




 相手が攻め込むも勝也の激しいショルダーチャージが炸裂。この荒っぽい守備に笛は吹かれず、倒れた選手は「何でだよ!」と納得いかない表情を見せて怒り、その間に勝也が前へパスを送る。



 今度は成海にきっちりマークがついて、ゴール前の豪山にも当然の如くマークは外さない。攻撃の要二人をフリーにするはずがなかった。



 そこに声が届くと中央へパスが折り返される。走り込んでいるのはパスを出してすぐ前へ上がった勝也だ。



 今の彼にマークは無くて、フリーの状態。



 勝也は迷いなく、自分の右足を思いっきり振り抜いた。



 シュートは勢いよくキーパーへ向かって行けば、正面でキャッチする構えをとる。




 その時、シュートは急に揺れ動いて変化する。回転のかかってない無回転シュートはどんな変化するか、相手にも撃った本人にも分からない。




 急に落ちたボールにキーパーは戸惑い、かろうじて右手に当てるとゴール左隅へ飛んでゴールマウスへ吸い込まれていく。



 かと思えばポストへ激突し、立見の追加点はならず。




 ただ、それでは終わらない。





 ポストに当たったボールは直後にキーパーの背中へ当たり、再びゴールへと向かって行く。



 これにキーパーが勢いよく飛び込むが、球はラインを割っていて主審はゴールの判定を下す。



 得点は勝也のゴールとなり、得点した本人は浮かれずボールを拾うと、センターサークルへ戻しに走る。




 2点目が立見に入って、観客からはざわざわと驚くような声が聞こえた。



 2点差まで追い上げた事で、逆転勝利が行けるかもしれないという所まで来た。




 息を吹き返した立見は更に攻勢に出て、これ以上はやられまいと相手は必死の守備で跳ね返す。




 時間だけが過ぎていき、中々チャンスはつかめない。



 その中でチャンスを掴んだのは相手の方だった。



 後半終了間際に一瞬の隙を突かれると、1点を取られて再び3点差。



 ダメ押しのゴールが決まって大丈夫だと、相手側は一安心する。



 それでも立見の方は諦めずに最後まで試合を行う。



 しつこくボールを追い続け、ひたすら戦い続けた。






 試合は無情にも終了の笛を迎える。



 5-2。




 高校1年目の最後、強豪を相手に意地を見せて本気でぶつかった試合はプレーした彼らに、見ていた者達に何かを残したかもしれない。



 そんな1戦だった。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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