表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第2章 いきなり強豪と練習試合

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/880

冷静の中に燃える炎

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 後半戦、どれぐらい得点出来るのか。



 何点差で勝てるのか。



 勝って当然の試合。高校サッカー界の王者八重葉にとって、立見は取るに足らない相手だと思った。



 だが、後半10分が経過しようとしているのに得点は3-0。



 前半の3点のまま点差は動いていない。



 それだけではなく、後半は立見が2本のシュートを撃っているのに対して、八重葉は未だシュート0本のままだ。



 前半あれだけ翻弄して攻め込めたはずの王者八重葉が、得点どころかシュートが撃てない。まさかの展開に八重葉のベンチはざわつき始める。




 中盤でボールを繋ぐ八重葉は、素早いパス回しからダイレクトで照皇にパス。得意の速いパスサッカーでチャンスを作ろうとしていた。



 それをさせないとばかりに、蹴られた球へ小さな影が飛び出す。



「(いただき!)」


「!?」



 最初から此処にボールが来ると読んでいた弥一は、パスを簡単にインターセプト。



 王者八重葉に攻撃をさせない一人の小柄なDF。活躍しそうに無いと思われたはずが、高校No.1ストライカーに仕事をさせていない。シュート0本に抑えているのは彼の活躍が大きかった。



「(馬鹿な! 何で今のパスを読まれるんだ!?)」



 八重葉のパスの名手で知られる村山も、自分の出したボールを取られた事に動揺を隠しきれず、攻撃は無意識の内に弥一に飲まれ始めている。



「高いボール放れ! あのチビじゃ照皇と競り合いは無理だ!」



 八重葉ゴールを守る下川が大声でコーチングして、高さで攻めるように叫ぶ。


 低いボールならカットされる危険性はあっても、高いボールなら高さの無い弥一は不利でしかなく、確実に照皇が勝つだろうと見ていた。




 ボールを奪い返した八重葉DF戸川が上がると、照皇をターゲットに高いボールを蹴って送る。



 長身の照皇なら取れる球だろうと、八重葉選手達はエースの競り勝つ姿を想定して動く。




 その時、弥一は素早く動き出しており照皇より前に出ていた。



「!(このポジショニングは……!?)」



 照皇は気付く。自分よりも早く弥一が正確な落下地点に居て、最適なポジショニングを取っていた事を。




 小柄な選手でもヘディングで勝てる時がある。それは正確なポジショニングとジャンプのタイミング。これが間違っていたら、どんなに高さ自慢のヘッド自慢でも届かなかったり、正確に捉える事は出来ない。



 照皇は此処だと思うタイミングでジャンプした後、弥一は少し待ってから跳躍。



「くっ!?」


「っ!」



 照皇と弥一が頭同士で競り合い、ボールはタッチラインを割って立見ボール。照皇の方がボールに触れたと審判が判断したようだ。



 流石に高さで上回る照皇が競り勝ったものの、楽に勝たせてはくれず、ボールをコントロールする事が出来なくて外へ出てしまった。



「(信じられねぇな。あれ上背あったら負けてたのマコの方じゃないか?)」



 何時しか帽子の男子はポテチを食べる事を忘れ、試合の方を見ていた。



 互角の弥一と照皇の空中戦での競り合い。弥一が小柄だったので、照皇にかろうじて軍配が上がったのだろうが、そうではなかったら結果は逆だったかもしれない。




「ったぁ~、流石に高さはきついなぁ。でも楽に頭使わせなかったよね今? 結構苦し紛れに思えたよ」


「っ……」



 フィールドから立ち上がり、埃を落としながら弥一は照皇へ話しかけていた。



 弥一の言葉に照皇は図星だった。頭で味方へ落としてシュートチャンスに繋げるつもりが、予想外に弥一が高さで競り合ってコントロール出来ず、結局タッチラインに流れるミスとなってしまう。



「照皇と高さで互角!?」


「ま、まぐれだろ。あんなチビが……」


「まぐれで互角に競り合えるか!?」



 まさかの展開に八重葉ベンチには驚く選手が多数見られる。想像以上に弥一が活躍してきて、照皇が後半にシュートが1本も撃てない事に衝撃は広がっていた。



 2軍にとって照皇は絶対的エース。その彼が此処まで止められている事実は、八重葉の士気に大きく関わってしまう。



 照皇が駄目なら他の選手で行こうと、村山から正確なパスが出される。もう一人のFW坂本へボールが渡った直後、間宮が寄せてきて激しく競り合う。



「うおっ!」


「くう!」



 闘志溢れる間宮が競り勝ち、坂本のボールを弾く。転がる球へ影山が八重葉に拾われる前に追いつき、相手の攻撃を断ち切った。



「(あのチビ、本当に照皇を抑えてやがる……後半戦任せてどうなるかと思ったけど……)」



 此処まで弥一が照皇を止めている事に、間宮は驚いていた。一人でエースを止めるなど無謀にも程があると思ったが、小さな後輩は実行し続けて此処まで0に抑えている。



「お前ら神明寺の活躍に負けてんじゃねーぞ!!」



 このまま有言実行している弥一に負けてはいられない。此処で先輩として意地を見せて、目の前の相手を一度も通さないと、気持ちを前面に押し出せば味方を盛り立てていく。



 守備がボールを取ってくれているおかげで、立見は攻撃出来る時間帯が前半に比べて格段に増えていた。



 キャプテンの成海を中心に攻め込むが、八重葉の方も大城を中心とした守備でゴールは割らせない。



「(くそ! 神明寺があれだけ照皇を相手に戦ってるのに、こっちは1点も取れていない! 攻撃は良いリズムが生まれつつあるのに……!)」



 弥一が八重葉の攻撃チャンスを潰しているように、大城も立見のチャンスを多く潰していて、両DFの奮闘が目立つ試合になってきた。



 恵まれた体格の正統派DF大城鉄二。才能とセンスの天才DF神明寺弥一。



 対照的な二人がチームの守備を支え、互いの攻撃を止め合う。




「両サイドのスピード気をつけろ! 特に左速いぞ!」



 大城のコーチングで乱れてきた守備を整える。八重葉は押されてはいるが大崩れまでは至らず、立見の攻撃を跳ね返し続けていた。



 ミドルレンジからのシュートを狙える成海に、八重葉が二人がかりで厳しくプレスをかける。



 囲まれた成海は左足の踵でバックパス。



 何時の間にか前へ上がって来た弥一がボールを受け取ると、八重葉ゴールに向けてボールを右足で大きく蹴り出した。



「(ミスキックか?)」



 構えていたGK下川。ボールは彼の守るゴールマウスから右へと大きく逸れている。このまま流れてゴールキックだろうと、枠を捉えられない球を見送る。



 その時、ボールは大きく曲がってゴールへと向かって行った。



「!?」



 これを見た下川は慌てて飛ぶが、右上隅に僅かに届かない。




 カァンッ



 ゴールかと思われたがポストに嫌われ、ボールは外に出て得点ならず。遠くから曲げた弥一のバナナシュートはあまりに惜しかったが、この一撃は八重葉に衝撃を与えていた。



「(なんてシュート撃つんだよ!? あんな曲がるのか今のバナナ!)」



 あそこまで曲がるシュートを実際に見るのは初めてだった村山。同じシュートを真似て撃とうにも、村山では弥一のように蹴る事は至難の業だ。



 それ程までに難易度の高いシュートが飛び出し、試合を見ている者達を驚かせる。



「(今のはもう少し行っていたら入っていたかもしれない! 成海だけでなくあいつも攻撃で要注意か!)」



 この一撃で大城は弥一を意識し警戒するようになる。守備の時に彼が攻撃参加してきて、シュートは優先して阻止するべきだと。




「(あー、今の曲げが足りなかったかぁ)」



 蹴った弥一本人は位置へ戻りながらシュートの修正を考えて、次は確実に枠内に放り込むようにしようとしていた。



 その弥一に照皇はじっと見ている。





「右行け! 右!」



 村山から右上がれと指示が出てから、応えるように素早い上がりを見せる山岸。村山の正確無比な右足のパスで山岸まで渡ると、高いクロスを上げる。



「行った! 大門!」


「おう!」



 高いボールが上がる事を心を読んで見抜いた弥一は、間髪入れずに伝えた。声に応じて大門は飛び出すと、地面を強く蹴って高い跳躍を見せる。



 飛び込んで来た照皇の前に、大門の両手が伸びてボールをキャッチ。倒れこむ時までボールを抱えて離さない。



「高ぇ!? なんてジャンプすんだよ、あのでっかいキーパー!」



 八重葉ベンチは今日だけで何回驚いたか。弥一の守備に優也のスピードに加え、大門の高いジャンプ力。立見の1年に八重葉は振り回されていた。





「(落ち着け、シュートが撃てない時ぐらいよくある。今は我慢の時間帯で、それを凌げば再びチャンスが来る……)」



 後半、ペースを乱されている八重葉。その中で照皇は心を落ち着かせようと自分に言い聞かせる。



 試合において冷静さは大事で、高校生ながら彼はそれを身に付け、いかなる試合でも冷静に仕事をこなす。



 ただ、今日は此処まで弥一に翻弄され、滅多に乱れない彼の心が揺らぎを見せつつある。



 今まで見た事が無いタイプのDFで、まだ彼の前では一度もシュートが撃てないのだ。



 意地でもこのDFを突破してシュートを撃ちたい。ストライカーとしての気持ちが沸き立ちながらも、冷静に落ち着くようにしていた。




「……おい」



 その時、八重葉ベンチが動いた。監督が控えの選手に話し、ジャージを脱ぎユニフォーム姿となる。その数は二人だ。






「八重葉、メンバーチェンジ! 10番、7番アウト!」



「!」


 告げられた交代は照皇の耳に届く。



 普通なら、すぐに従って即刻フィールドを出ていかなければならない。




 だが、今日の照皇はこのフィールドを出たくないと思った。まだ此処でするべき事をしていないからだ。



「照皇、出ろ! 交代だ!」


「……はい」



 八重葉のキャプテン大城の言葉で照皇は歩き出す。



「言った通りになっちゃったね、1点も取れずハットトリック出来なくてシュートも0本」



 戻っていく照皇に弥一は告げる。



「試合はそっちが勝ってるけど勝負は僕の勝ちって事でいいかな?」


「……」



 弥一の言葉を無視するかのように彼はフィールドを歩き、交代選手の元へと向かう。周囲から見れば彼は冷静そのものに見える。



 だが、弥一には違って見えた。






「(心で分かるよ。本当は得点出来なくてシュートも出来ない事が、悔しくて悔しくてたまらないって)」



 冷静に見える照皇の心は悔しさによって燃えたぎっていた。



 試合はリードしているが、この試合において最後まで弥一に勝つ事が出来なかったのが、照皇にとって大きな心残りとなってしまう。



その無念を残したまま、フィールドを去る事になった……。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ