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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第2章 いきなり強豪と練習試合

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天才サイキッカーDF出陣

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「あいつ、先輩達相手にあんな事言って大丈夫なのかよ?」


「俺に言われても、どうなっちゃうのか……」



 弥一が先輩達を怒鳴る姿。それはベンチから見ていた摩央や大門にとっても衝撃で、優也はリアクション薄いながらも内心では驚き、幸はどうしようと慌てている。



 そんな中で京子は弥一の方を静かに見ていた。




「本気でサッカーやれよ!!」




 本気のつもりだった。全力で出来る事をやってたつもりだ。それをあの1年は何を分かったような事を言ってるのか。



 生意気な後輩に対して何人か腹を立てたが、言い返す事は出来なかった。



 心が折れて王者に立ち向かえず、逃げ腰のサッカーになって萎縮してしまう。選手達も気づかない間に陥っていたのかもしれない。



「あの1年のガキが好き放題言いやがって……!」



 3点を取られた間宮は力の差を思い知らされ、王者へ屈する寸前に弥一の言葉で怒りが闘志となっていく。



「このままやられっぱなしでバカにされたままで終われるかよ! 悔しいままで終わるの嫌だろお前ら!?」



 間宮は周りの立見の選手に向かって声を張り上げた。このまま負けたら八重葉だけではなく、弥一にまで負ける事になる。



 あそこまで言いたい放題言われて何も出来ずに終わったら、この先のサッカーはもう無い。



「そりゃ……このまま負けるのは嫌だよ。ボールを長く持ったりしたりフォローとかも無かった。修正そこからだよね」



 声を張り上げる間宮と対照的に、影山は静かに気持ちを出していく。彼とて負けるより勝つ方が良い。当然の事だ。



 王者の前に基本的な事が出来てなかったので、一つずつやり直そうと影山は立ち上がる。



「弱腰か、言ってくれるよな。俺が何時あいつにビビったってんだよ……!」



 豪山も弥一の言葉に黙ってはいなかった。大城の高さと屈強な守備の前に何も出来ず、東京予選ベスト8が単なるくじ運と生意気な1年に言われて終わるのは、あまりにも情けない。



 徹底的に大城と戦う覚悟を豪山は固める。



「……久々に聞いたな、ああいう喝。「あいつ」以来だ」



 以前も聞いた本気の喝を成海は久々に思い出す。彼に言われた通り、王者を前に気持ちで完全に負けていた。


 此処で奮い立たせて戦わなければ、弥一と思い浮かべた人物にも顔向けが出来ない。



 3点のビハインド、もう一度戦う為にキャプテンとして声を出す。



「リスク恐れるな! 攻めるぞ!」



 成海の言葉に立見はそれぞれ前を向いた。このまま八重葉に負けられない。弥一に言われっぱなしで終われない。




 成海はボールを持ってドリブルで八重葉陣内へ攻め込む。



「(またか)」



 この試合、何度も成海からボールを奪っている村山が忍び寄り、死角から足を伸ばす。


 今回もその繰り返しになると思った。



 だが、成海は行くと見せかけて右サイドを走る田村に左足でボールを転がす。



「(本気でやれだと? 充分本気だってのに! もっと本気出せってかこの野郎!!)」



 弥一の言葉に腹が立っている田村は、タッチラインに流れそうなパスに意地のダッシュで追いついてトラップ。



「お!?」



 ボールが出ると思っていた八重葉DF戸川の出足が遅れ、田村が追いつくとは計算していなかったらしい。



 ドリブルで前へ運び、田村は中央の成海に折り返す。




 村山が再び迫ると、成海はパスを受け取らずにスルー。


 想定していなかったプレーに、村山も振り回れる。



 ボールを受け取ったのは何時の間にか前線へ上がっていた影山。相手の守備が迫る前に前線の豪山へ、左足の低いボールが蹴られた。



 豪山がパスを受けると後ろから迫るのは大城。この圧を受けて前を向く事が難しく、190cmの大型DFによるプレッシャーが許さない。



「(此処だ!)」



 厳しい守備を受ける中で、豪山は後ろを向いたまま右の踵でボールを蹴り、大城の股下を通した。


 一瞬の閃きから器用なプレーを見せ、ボールが八重葉のゴールへ転がって進む。



「うおっ!? と!」



 急にボールが大城の股の間を通って来た事に、豪山のまさかのバックヒールシュートに八重葉のGK下川は驚く。ボールを弾いた後、体ごとボールに覆いかぶさりキープ。



「くっそ!」



 豪山はシュートが決まらず悔しそうな顔を見せる。大城や下川の隙を突いて、決まれば技ありのゴールだった。



 この試合初めてのシュートは、一瞬だけ王者を慌てさせる一発となり、立見としては流れが変わる切っ掛けにしたい。




 GKのスローイングから素早くパスを繋ぎ、八重葉はカウンターに出る。



「10番俺行く! 川田18番注意!」



 間宮の指示で守備陣がそれぞれ動き、カウンターに備えて4点目は絶対に阻止すると気持ちも乗って、序盤よりも相手へ積極的に向かう。



「(守備陣に負担をかけないように……! ボールを奪えないまでも時間を稼げれば!)」



 成海はボールを持つ八重葉MF海道の前に立つと、ボールを無理に奪いには行かず、間合いをとってパスコースを消しに行く。



 これに海道は足が止まり、ボールを送るターゲットを探す。



 守備戦術の一つで相手の攻撃を休ませ、味方の守備体制が整う時間を稼ぐ。ディレイと呼ばれるものだ。



「戻せ!」



 声が飛ぶと海道はボールを戻し、戻す指示を出した村山が受けようとしていた。



 球がグラウンダーで迫って来ると、右足を振り抜いて捉えた球は立見ゴールへ勢いよく飛ぶ。



 思い切ったロングシュートで4点目を狙いに行く。



「っ!」



 村山のシュートを川田がブロックすると、弾かれて球は高く舞い上がる。照皇が向かって跳躍すると同時に間宮もジャンプすると、空中戦でヘディングの激突。



 ボールはゴールの方に流れていき、安藤が球をキャッチして八重葉の攻撃を終わらせ、4点目は与えなかった。



「(そうそう、ちゃんと出来るじゃん先輩達と川田)」



 この試合初めてのシュートに加え、攻撃を送らせて相手に遠めのシュートを撃たせて防ぐ。さっきまでの立見と比べれば確実にプレーが良くなっていた。



 弥一は立見が立ち直った事を確信すると、草の上から立ち上がる。



「じゃ、戻るよ。今度はフィールドに居ると思うから」


「あそこに? お前吹っ飛ばされて怪我しても知らねぇぞ。仲間にあんな事言ったんだし、自分で下手なプレーやっちまったら空気また悪くなる。それを分かった上で言ってるか?」


「勿論」



 帽子の男子は弥一が試合に出るなら、彼は色々とリスクを背負う事になると考えている。チームに喝を入れた張本人が下手だったら、立ち直ったチーム内に亀裂が走るかもしれない。



 彼の言葉に弥一は短く返事を返す。



「得点は知らないけど、確実に言える事はあるよ。僕が出たら八重葉はもうこの試合得点出来ない」


「何?」



 此処から逆転すると意気込む訳ではなく、得点出来るかどうかも知らない。ただ、弥一は言い切った。



 王者八重葉は自分が試合に出たら、もう1点も取れないと。





 ボールを持った安藤が、パントキックで大きく蹴り出して前線へ送ると、審判の笛が吹かれた。



 前半の40分が終了して、両チームがベンチに戻って行く。



 立見イレブンが戻って来ると弥一は彼らの前に現れる。



「先輩達、最後の10分ぐらいはちゃんとマシなサッカー出来たじゃないですかー」



 怒鳴ってた姿は何処にもなく、何時ものマイペースな弥一だ。




「お、お前! まずは謝罪だろ!? 先輩達に対してあんな暴言って……!」


「え? 謝る必要あんの?」



 摩央は先輩達に言った事があのまま許されるとは思えず、その前に謝ってしまった方がいいと詰め寄るが、弥一は何も悪い事はしてないと譲らなかった。



「必要は無い」



 ドリンクを飲んでいた成海は謝罪しなくていいと、弥一と向き合う。



「正直お前の言う通りだった。言葉では奮い立つような事を言っても、知らず知らずの間に心と体は八重葉に屈してた。お前があそこで怒らなかったら前半3-0程度じゃ済まなかったかもしれない」



 弥一に怒鳴られ指摘された事、それは否定が出来ない事実だと成海は認める。



「それでキャプテン、後半どうするんですか? 立ち直ったのは良いけど、相手の八重葉はそう簡単にゴール許さなそうですし」



 後半に向けてどうするか、弥一は成海の顔を見上げて問う。



 2軍が多いとはいえ相手は王者八重葉で、ゴール前には屈強な大型DF大城が健在なので、彼らの守備から1点は簡単ではない。それが追いつくための3点、逆転の為の4点ともなれば至難の業だろう。



「歳児、身体を動かしといてくれ。後半鈴木に代わって交代だ」


「! はい……!」



 成海に後半から出るように言われると、優也はアップの為に走りに向かった。



「それと神明寺、大門。二人も川田、安藤に代わって出てくれ」



 その後に弥一、大門の方へ目を向けて成海は一気に1年達へ交代を告げる。



「あ、は、はい!」



 大門は呼ばれてベンチから立ち上がり、優也に続いてアップへと向かった。



「はーい」



 弥一の方は既に軽く走った後なので、アップは終わっている。その間に敵チームの男子と喋ったりしていたのは内緒だが。




「おい」



 そこに弥一を呼ぶ声が聞こえ、振り向くと腕を組んでいる間宮が弥一を睨むように見ている。



「あれだけの事を言いやがったんだ。てめぇがフィールドで情けねぇプレーでもしたらタダじゃおかねぇぞ」



 自分達に散々言って、弥一がまるで歯が立たず八重葉の前に屈するなら、間宮は弥一を許す気は無い。守備で足を引っ張ったら怒鳴るのは間違いないだろう。



「しませんよ。そんなプレーしたら、サッカー部をすぐ退部してサッカー辞めますからー」



 鋭い目つきの間宮を前にした弥一は変わらずマイペースに、ただ大胆な発言をする。間宮の言う情けないプレーをしたら、サッカー部を退部してサッカーを辞めると。




 グイッ



 その時、間宮は弥一の胸ぐらを右手で掴み上げると自分へと引き寄せた。



「ちょ、間宮君!?」



 間宮が弥一に手を上げるのではないかと思い、幸は慌てて止めようとしている。


 


 他校を招待しておいて、此処で暴力事件でも起こせば大問題となってしまう。



「本気で言ってんのかチビ?」



 至近距離で弥一を掴んだまま見下ろす間宮。迫力のある眼力が間近にあって、後輩なら大抵は怯む。



 だが、弥一はまるで恐れる様子が無く間宮を見上げていた。



「本気ですよ。僕は連中に1点もやるつもり無いんで、これから先も誰にも」




「……相変わらずビッグマウスだな、フン」



 間宮が弥一を離すと、これを見ていた幸は喧嘩が起こらないと一安心。





 ハーフタイムが終わり、八重葉の面々はフィールドへ戻る。


 それぞれ軽く汗を吹いたりドリンクを飲んだり話し合って、後半に向けての話し合いと何時も通りの八重葉のハーフタイムの過ごし方だ。



「おい、あの説教チビ出て来たぞ。ユニフォーム着てる」


「マジか。あんな小さいのが高校サッカーついて来れんのかよ?」



 八重葉の一部は立見がフィールドへ出て来る中で、ユニフォームに袖を通した弥一に気付く。周囲と比べて小柄な身体で小学生や中学生ならともかく、身体が大きくなっている高校のサッカーで通じるのかと、それぞれ話していた。



 その中で再び目が合ったのは弥一と照皇。



「や、天才ストライカーさん」


「……」



 照皇は明るく笑いかけ、手を振ってくる弥一の姿を黙って見ている。




 ついに二人の天才はフィールドで向き合う時が来た……。

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