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もう一人の天才

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 土日に部活休みで身体を休ませ、月曜から再び立見のそれぞれの部は活動する。



 朝からグラウンドの方で野球部の掛け声が聞こえて来るのも慣れてきて、サッカー部も朝練を開始していた。ウォーミングアップを済ませて朝練はボールを扱っての練習を行う。



「この日は放課後にインターバルトレーニング、身体への負担が大きく週2回が望ましいから此処で1回やって2日程開けてもう1回。効率良いトレーニングもやり過ぎたら毒や刃となって選手を苦しめる事になるから」


「はあ、効果良くても頻繁にやれば良いってもんじゃないんですね」


 摩央へ京子は練習メニューの組み立て方を説明、この日にインターバルトレーニングを一度行う。今部員達はボールを使い実戦に近い練習の最中だ。



 インターバルトレーニングは身体への不可が大きい。そして疲労回復に時間がかかる。その為何時どのタイミングでトレーニングを行うかも重要になってくる。


 朝練よりも放課後の方が良いと、実際に経験した部員達とも相談して決めていた。朝練ではその後に消耗した身体で授業もこなさなければならないので、心身共に負担が大きくなり、勉強やスポーツ両方に悪影響を及ぼす恐れが出て来る。


 それなら放課後の方に当ててこれを乗り越えれば後は帰って休めるので、回復に時間をかけるという意味でも此処が現時点でベストだろう。






「ねー、誰かボール持ってきてー!4つぐらい!」


 その時に声が飛んだのは弥一、彼は大門と共にゴールマウスの前に居る。



「な、なんだ急に?」


「杉原君。倉庫の方にあるから行きましょ」


 そう言うと京子はサッカーボールを摩央と共に倉庫へ行って取りに行く。倉庫からボールを4つ取り出して二人は弥一の元に戻って来た。




「わざわざありがとうー♪」


「急にボールを4つも必要って何をしようとしてんだよお前」


「こうするんだよ」


 摩央からボールを受け取ると弥一はゴール前、エリア内にそれぞれボールを置き始める。大門にゴール前に立つように言うと、大門はゴール前に立って身構える。




「いくよー」


 弥一が開始の合図をすると4つ目のボールは自らの足元にあり、弥一はゴールマウスへ向けて左足でボールを蹴る。



 蹴られたボールはグラウンダーで速く、転がっているボール3つの中で真ん中のボールに正確に当たる。ゴールへ真っ直ぐ向かうグラウンダーシュートは当たってコースが変わり、ゴールに飛んでいた。



「くっ!」


 急にコースが変わった事に虚を突かれる大門。コースが変わり大門から見て正面から左へと飛ぶボールに向けて地面を蹴り、ボールへとダイブ。



 かろうじて左手を伸ばして掌に当て、コースの変わったシュートをセーブする。




「(よし!)」


 大門はこのシュートを止めて成功だと思った。その直後。




「それを止めたのは良いけど、そこ」


「え?あ!」


 弥一はゴール正面を指差している。それに大門も見てみれば、当てられて転がったボールがゴール内にまで入っていた。一つのボールを止める事に成功したが、もう一つの方は駄目だったという事になる。




「1回の変化するシュート止めて油断し過ぎ、それに止めてたシュートは完全に外出てなくて相手に拾われてるかもしれないし。ボールを完璧にその手に収めるか外に弾き出すまで一瞬も集中力切らしたら駄目。守護神が集中切れたら終わりだよ?」


「う……面目ない」


「謝る暇あるなら構えて構えて、もっかいー」


 普段マイペースな弥一からダメ出しを受けまくる大門に、返す言葉は何もなかった。それから間もなく再び2本目が始まろうとしている。




「何だあの練習、普通にシュートとかしないのか」


「サッカーでは時としてシュートが敵や味方に当たって、なんでもないシュートが一転して非常に厄介なシュートに変わる事はよくある」


 変わった練習だなと思い、摩央が見てると京子の方は興味深そうにこの練習を見ていた。



「その変化にも対応出来るようにする為、ボールにボールを当ててどうコースが変わって変化するか分からないシュートをセーブ。更に当てたボールもゴールに向かうのを対応するのは、セーブしたボールにすぐ相手がシュートしてきてそれに対する反応を良くする。こういう練習はプロや強豪校、更に代表キーパー練習でも取り入れてやっているらしいから」


「へ、へええ……」


「ボールだけでなく三角コーンを置いて、というバージョンもあるみたい」


 京子の解説に摩央は聞いて驚くしかない。クールな彼女だがサッカー関連になれば饒舌だ。




「それじゃあー……」


 弥一は今度は合図を出す、と見せかけていきなりシュートして右のボールへと当てた。急な開始に大門は反応出来ず、今度は1個目のボールも止められなくてゴールを許した。



「相手さんはこういう急な始め方のフリーキックとかセットプレーする場合あるよー、今合図出して開始って頭も身体もその意識になってたよね?」


「う……!」


 合図して蹴る、そう思っていた大門は図星だった。そのイメージが頭にあったのでまんまと弥一に騙される形となったのだ。




「今度は止める!何時でも打って来い!」


 気合を入れ直す大門、バシっと自分の掌に拳を当てて構える。







「待て、その練習俺にもやらせろ」


 再び弥一がボールを蹴ろうとした時、横から口を挟んで来た人物。2年GKの安藤だ。


「あ、先輩すみません。ゴールマウスを独り占めしてしまって」


 先輩の安藤を差し置いて後輩の自分がゴールを使って大門は頭を下げた。



「その事を責めてるんじゃない、ただ……あのイタリア天才坊やに面白い練習してもらってるの見て興味湧いてきた」


 そう言うと安藤もキーパーグローブを付けてゴール前に立つ。



「プロとかもやってるなら俺もやるー!」


「俺も、2本連続セーブに挑戦してみたいし!」


 そしてそれは他のキーパー達も呼び寄せ、ゴール前に3つボールを置いてシュートのトレーニングはキーパー全体で行う事になる。




「はいはい、順番順番。順番ねー」


 ボールを蹴る役の弥一はそれぞれのキーパーへと向けてボールを蹴る。右や左や真ん中、更に最初のスタートも合図通りかと思えば、急に始めたりわざと遅らせて焦らすなど色々な想定をして彼は行っていた。



 更にはボールに当てるかと思えばそのまま当てず、普通にコースをついたシュートを撃つ時もあった。打たれたキーパーはこれが頭に無かったようで、反応が遅れてゴールを許している。



「普通のシュートまであんのかよー!」


「変化だけ強くなって直球に弱かったらダメでしょうー」





「これ、キーパーには良いけどキーパー練習ばかりであいつ自分の練習出来て無いんじゃあ?」


「いえ、そうでもないかもしれない」


「え?」


 キーパー練習に弥一が付き合っていて、摩央はこれでは弥一の練習が全く出来て無いのではと思えてきたが、京子は弥一を観察していて気付く。



「ただボールを蹴ってるように見えるけどよく見れば彼、右足と左足を同じぐらい使って蹴っていていずれも正確にボールをボールへと当てている。彼は彼で集中しているのかもしれない。右も左も同じように正確に蹴って狙えるように、それが何十分続いても継続出来るように、そしてたまにシュートも織り交ぜて彼のシュート練習にもなってる」


 京子に言われて摩央は弥一の方をよく見てみる。



 言われてみれば弥一がボールに当てるのを外すのを見ていない。右足も左足も正確に狙って当てる事が出来て、並の集中力やボールコントロールじゃなかった。


 弥一の頬に汗が伝ってくるがそれでも彼の正確無比なキックは衰えず。




「(もしかして……彼に並ぶような天才かもしれない?)」


 京子はスマホの方に映る画面の方へと視線を落とす。




 そこに映し出されているのは今度対戦する八重葉学園の試合。その試合が動画にあり、画面の中で八重葉学園の選手達が映し出されていた。





 白いユニフォームにアルファベットでYAEBAの文字、白い軍団が相手の守るゴールへと攻め上がる。


 早いパス回しに華麗な個人技、個々のレベルがそれぞれ高い。






 その中でボールを受け取った背番号10の選手、坊主に近い黒髪で身長は180cm。かなり鍛え上げられて良い体格をしている。左から相手DFから激しいショルダーチャージを受けるが全くバランスは崩さない。




 チャージを受けながら10番の選手は右足を振り抜く。エリアの外からであり距離は遠い。



 ボールは大きくゴールバーを超える。





 そう思った時にゴールは急激に鋭く落ちてゴールを捉える。それは弥一が小学生とサッカーをしている時に見せたロングドライブシュート、それと同じシュートを八重葉の10番も撃っていた。




 急激に落ちるドライブはゴールネットを揺らし、決められたキーパーもDFも呆然となる。その横で喜び合う八重葉の選手達。





 その中で10番の選手は表情をあまり変える事なく、ただ右拳を高く突き上げた。



 10番の選手はまだ2年生、にも関わらず彼には既に貫禄が感じられる。王者としての貫禄が。







 照皇誠しょうおう まこと



 2年生ながら既にエースナンバー10を背負い、10年に一人の天才と言われる高校No.1ストライカーの彼がイタリア帰りの天才と出会う時は近い……。

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サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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