39.同級生
シャーメインの研究室は綺麗に整っていた。
見たことないマジックアイテムばかりで少しだけ怖かった。
「シャーメイン。色々質問してもいいかな?」
「は、はい。リ、リディア様ですよね?」
「は?そうだよ」
「すみません。あまりにも若い頃のお姿だったので」
「ああ。それについては後で説明するよ」
「わかりました。話を折ってすみません」
シャーメインは頭を下げた。
「ところでさっき兵士に言っていた演技ってなに?」
「それはですね。見てもらった街の様子ですが、すべて演技なのです」
「どういうこと?」
シャーメインの話は昔から意味が分からなかったが、今も変わっていなかった。
「この島には至る所にこのマジックアイテムを設置しております」
シャーメインは四角い金属の箱を持っていた。
「これは魔力量が多い者に反応をするマジックアイテムです。これで現魔王軍がこの島にいきなりやってきても対応できるようにしています」
「それと演技は何が関係してるの?」
「この街には囚人はいません。魔王軍が街に来た時だけ、悪魔族や協力してくれている虫人族と霊人族が囚人役をしているんです」
「ということは非人道的なことはしてないの?」
「はい!当たり前です」
シャーメインは笑顔で答えた。
「街まで案内した兵士が他種族をバカにしたような発言をしていたけど!」
「それも作戦です。魔王軍の者がこの街に来た時に、珍しい虫人族や霊人族を奴隷に欲しがらないようにするためです」
「なるほど……」
「私達はそうやってこの島の者を守っています。虫人族と霊人族には私が捕えたという実績にするために協力してもらっています」
「っていうことは、シャーメインは僕の味方って考えていいのかい?」
「はい。リディア様のおかげで色々とやらせてもらっていた恩義があります。それに案外長い付き合いですから」
シャーメインはニコっと僕に微笑んだ。
「なので!!!リディア様のお話も聞かせてください!!!お連れのお仲間はモンスターですよね!!!見たことない種類です!!触っていいですか?ダメですか?」
良い雰囲気が一気に台無しになった。
だけどシャーメインは昔からこういう男だった。
「僕の話の前に、なんで君が現魔王軍の怠惰の悪魔候補なの?」
「それはですね、15年前にゴフェル様に言われたんです。何かあったときは、敵に潜り込んで地位を得ろと」
「またゴフェルか……」
ゴフェルには感謝してもしきれない。
「私の研究は敵であろうと有益と考えるだろうと言われました。なので特製の薬で作物の収穫量を増やして魔王軍に提供することと、リディア様の魔剣イグニクスの研究でこの地位を得ることができました」
「え?僕の剣があるの?」
「はい。現魔王が管理していましたが、誰もうまく使うことができなかったため研究することになりました」
「あれがあれば少しは戦える。返してもらうことはできる?」
「当然です」
「ありがとう」
僕はシャーメインに頭を下げた。
「そうしたら15年前から今に至るまで、僕とルゼに何が起こったか話すね」
「はい!!!!是非!!!!」
僕は興奮するシャーメインを無視して今までのことを話し始めた。
▽ ▽ ▽
「ということは、このタンクさん達が異世界人と心を通わせてるということですか!!」
「そうだね。テイムはしてないけどみんないい子」
シャーメインはタンク達に詰め寄っていく。
「お、おい!リディア!こいつはどうすればいいんだ?」
「タンク。シャーメインは興味があると触れずにはいられないだ。少しでいいから我慢して」
「な!」
タンク達は嫌々シャーメインにベタベタ触れられた。
「リディア様と言葉を交わすモンスター!!最高です!もっと触らせてください!もっと見せてください!」
この状態になったシャーメインは誰にも止められない。
「ところでシャーメイン。この諸島をまずは制圧しようと思っているのだけど、他の怠惰の悪魔候補について教えてくれない?」
「わかりました。あと少し触ってからでもいいですか?」
「1分だけね」
「はい!!」
シャーメインは堪能するかの如くタンク達に触れた。
「そろそろいい?」
「はい!何でも聞いてください」
シャーメインは満足した表情をしていた。
「まずは他の怠惰の悪魔候補について教えて」
「わかりました。この島の呼び方は知っていますか?」
「ゴフェルが使っていた呼び方?」
「そうです。それなら話しやすいです」
そう言うとシャーメインは諸島の地図を取り出した。
「怠惰の悪魔候補がいるのは参の島と伍の島と陸の島です」
「壱の島と肆の島は?」
「壱の島は龍人族を恐れて怠惰の悪魔候補が逃げ出して本島にいます。肆の島はほとんどが沼地で暮らすことが難しかったのかこちらも逃げ出して本島にいます」
「なるほど」
僕達が倒さないといけない怠惰の悪魔候補は残り2人ということか。
「それぞれの島には役割があります」
「役割?」
「参の島と伍の島は狂暴な囚人を入れるための収容所としての役割しかありません。この弐の島は食料と木材の調達。陸の島は石材と鉱石の調達です」
「それを捕まえている者にやらせていると?」
「はい。この島は違いますが、陸の島はそうでしょう」
陸の島を偵察に行ったファジャ達が心配になった。
「怠惰の悪魔候補は強いです。弱いのは私だけです。参の島にはイフミィ、伍の島にはマズドール、陸の島にはダッズラがいます」
怠惰の悪魔候補の名前を聞いて、僕は驚いた。
ダッズラとイフミィはマズドールと同じく同級生だ。
「なんで同級生ばっかり…」
「みんな実力者です。それに私以外は魔王様を恨んでましたからね」
「恨まれるようなことした?」
「部下にしなかったことを根に持っていると思います」
「あー。それは3人の性格が…」
「ははは。心の底から自分が部下に馴れたことを誇りに思います」
「そうだね」
シャーメイン自慢げに笑った。
「マズドールは既に倒したとおっしゃってましたね」
「うん。ダムザムで捕まえてるよ」
「なるほど。それで次は陸の島ですか?」
「うん。いま鬼人族と蟻人族が偵察に行ってる」
僕がそう言うとシャーメインは真面目な表情になった。
「それならすぐに援軍を送るべきです」
「ダッズラがいるならそうした方がいいね」
ダッズラは魔法を使わない戦闘では1番の成績だった。
だが頭の悪さと素行の悪さで部下にはしなかった。
「わかりました。私も全面的に協力します。陸の島を制圧した後に石材や鉱石の納品が無くなると怪しまれます。そこらへんを私が上手くやりましょう」
「ありがとう」
僕とシャーメインは今後の話を詰めた。
優秀な者と話をするとこんなに早く物事が決まると改めて実感した。
「そういえばなんでそんな見た目なの?」
「え?」
「シャーメインって同い年だったよね?」
「はい。130歳ですね。あ!見た目の事ですか?」
「そう」
「それはマズドールのエクストラスキルです。優先的に良いマジックアイテムと上質な食料を提供することの見返りで『老喰菌』というものを使ってもらったんです」
言われてみればマズドールも若々しかった。
「それは見た目だけ?」
「いえ。身体が完全に若返っています」
「それはシャーメインだけ?」
「いえ。ダッズラとイフミィ、それに現魔王も若返っていたと思います」
「そうか…」
悪魔族の寿命は150歳前後だ。
体力やスタミナの面で優位を取れると思ったが難しそうだ。
シャーメインとの話が終わると、シャーメインの目の色が変わった。
僕はその目をよく知っていた。
逃げようと思ったがもう遅かった。
僕はルゼ達を迎えに行く日まで、僕とタンク達は研究対象としてシャーメインに粘着され続けた。




