38.シャーメイン
僕達は水黽族が作ってくれた筏で弐の島にやってきた。
「ここまでありがとう」
「いえ。我々はどうしましょうか」
「明後日にはルゼ達が来るから、明々後日の朝にまた迎えに来てくれる?」
「わかりました。見つからないように近くで待機しておきます」
「ありがと」
水黽族と別れ、僕とタンク達は街を目指した。
タンク達に索敵をしてもらいながら進む。
弐の島は情報通り、草原や森が多い。
「街らしいものはまだ見つからない。だけど至る所にこのマジックアイテムが仕掛けてあった」
「マジックアイテム?」
タンクから渡されたマジックアイテムは見たことないものだった。
「仕掛けられてたってどういうこと?」
「土の中や木の中に埋められていた。微量だが近くの魔力に反応しているようだ」
「なんだろう」
タンクと話しているとビュラとポンプが戻ってきた。
「リディアー!なんかこっちに飛んでくる!」
「え?」
「羽の生えた悪魔族!」
このマジックアイテムは侵入者を検知するものだったのかもしれない。
「タンク達はビーとティーを連れて隠れていてくれ」
「わかった」
タンク達はどこかに森の中に消えていった。
私はすぐに『変化』で女性の悪魔族に変化した。
バサバサ!
羽の音が聞こえた。
悪魔族は2人。
鎧を着ているから現魔王軍の兵士だろう。
2人は私を見つけて地上に降りてきた。
「魔王軍の方ですか?視察の話は聞いていなかったのですが…」
何やら勘違いをしているみたいだ。
僕は話を合わせることにした。
「わざわざ伝える必要があると思う?」
「いえ。失礼いたしました。すぐに街にご案内します」
兵士は慌てたように言った。
「ああ。街に着くまで色々話を聞かせてもらうわ」
「はい。我々に答えられることでしたら…」
兵士はちゃんと騙されているようだ。
「ここの街にはどの種族を捕えているんだ?」
「え?15年前に魔王様に歯向かった悪魔族が大半です。ご存じないのですか?」
兵士は僕に疑いの目を向けてきた。
「情報が間違っていないかの確認よ。私がやることに文句があるの?」
「い、いえ。失礼しました」
兵士は焦っていた。
「他の種族もいるでしょ?すべて答えなさい」
「は、はい。この島に隠れていた虫人族と霊人族を捕まえております」
「よろしい」
まさか虫人族と霊人族が捕まっているとは思っていなかった。
「ですが虫人族も霊人族も使い物にならないゴミですので、奴隷にはお勧めできません」
「は?」
私は兵士の発言に一瞬イラっとしてしまった。
「いや、本当に非力なんです。本島の住人や魔王軍の奴隷としては使えないほどの種族なんです」
僕は怒りを鎮めようとしているが、この兵士の発言が油を注いでいく。
「この街では囚人をどういう風に扱っているんだ?」
「主に木材の採取と農業をさせてます。魔王軍のみなさんに良質な作物を食べていただくために休み無しで働かせています」
僕はこの兵士を殴り飛ばしたくなった。
やはり現魔王軍はクズしかいない。
どうにか捕らわれている者達を助けないといけない。
ただ今ではない。
兵士に連れられて歩いていると城壁が見えてきた。
「こちらが我々の街カイドロンです。中には汚らしい奴隷が多くいるので触れないようにお気をつけてください。特に虫人族には穢れていますので」
僕は決めた。
みんなを助けるときに、この2人は必ずボコボコにすると。
門が開き、街の中に入ると広大な畑が広がっていた。
「すごい広い……」
「カイドロンでは魔人領で消費する作物の5割はここで作っていますからね」
「5割!?」
僕は素直に驚いてしまった。
「は、はい。ご存じですよね?」
「ああ。知ってるわ。気にしないで」
「わかりました…」
兵士は僕を怪しみ始めたみたいだ。
畑では看守が監視している中、ボロボロの服を着た者達が農作業をしていた。
街を進むと広場のような場所に出た。
「いま、担当者が参ります」
「それは怠惰の悪魔候補の?」
「はい」
こんなクソみたいな町を管理している者なんて絶対にぶっ飛ばす。
「お待たせしました」
声がして、振り返ると見覚えのある者が立っていた。
「え?シャーメイン?」
「はて?申し訳ありません。お会いしたことがありましたか?」
僕はマズドールに続き、同級生と対面した。
シャーメインは僕の部下だった。
とても優秀で僕とルゼと並ぶ学力、そしてマジックアイテムに精通している研究者だ。
学院の同級生で、私が部下にした。
15年前はどうしていたかわからないが、こんな非道なことをする男ではない。
研究第一で悪魔の大罪スキルを持っている者を研究対象だと思っているところ以外は普通の魔人族だ。
そんな彼がなぜ怠惰の悪魔候補として僕の目の前にいるんだ。
130歳くらいだったはずだが、どう見ても40代くらいの若さだ。
シャーメインの偽物なのか。
僕は賭けにでることにした。
シャーメインが15年前から変わっていないことを願った。
僕は『変化』を解いた。
「シャーメイン。なんで君が怠惰の悪魔候補なんかになっているんだ?」
シャーメインや僕を案内した兵士は目を丸くしていた。
「学院時代に何度も絵に描いた角と髪色。ほ、本物のリ、リ、リディア様ですか!!!!!!!」
シャーメインは僕に飛びついてくるが上手く避け、シャーメインは地面に倒れた。
昔から研究対象と判断したものをベタベタ触る癖があった。
「質問には答えないの?」
「え、えーっとですね。話は長くなるので研究室で話しても?」
「いいよ。だけど街の外に仲間を待たせてるから、街に入れてもいい?」
「問題ありません。では門に行きましょう。でもその前に……」
そう言うとシャーメインは兵士に話しかけた。
「街のみんなに演技は必要ないと伝えてくれ」
「「わかりました!」」
そう言って兵士は走ってどこかに行った。
僕とシャーメインはタンク達を迎えに門まで向かった。




