36.ゲーム対決
俺はこっちに来てから少し不安なことがあった。
会社から全く連絡がない。
GWはみんな休んでいるが、有給の時に連絡が来ていてもおかしくない。
だけど全く連絡来ない。
「どうしたんですか?」
ルゼが心配そうに俺を見ている。
「いやなんでもないよ。会社から連絡来ないけど大丈夫かなーって思っただけ」
「あーみなさん優秀ですから。特に問題なく業務が進んでるのでは?」
「多分そうなんだけど。何かしら助けを求める連絡が来るものかと思ってて」
「ちょっと寂しいってやつですね」
「まあね」
寂しがってるおっさんを客観視したら、少し恥ずかしくなった。
「ハルキさん!気分転換にゲームしません?」
「ゲーム?」
「はい!今日配信でやろうと思ってたゲームを試したくて!」
「俺、見る専なんだけど平気?最後にちゃんとゲームしたのは大学の時だから……」
大学の時に高校の同級生達とやったのが最後だ。
10年近くも前なんて考えたくもなかった。
「私も初めてやるんで大丈夫ですよ!話題の格闘ゲームですよー」
「あー。そのシリーズならやったことあるな」
「じゃあやりましょうよー!」
「うん」
俺は少し不安になった。
ルゼ様のゲームスキルは残念ながらとても低い。
俺も10年前はそれなりにゲームを嗜んでた。
配信前にルゼをボコしてしまうんじゃないか。
「じゃあ準備しますね」
そう言うとルゼはゲーム機を準備し始めた。
▽ ▽ ▽
ダンシングファイター11。
今回やるゲームだ。
俺が昔やったのは9だった気がする。
「さあ、やりましょう!」
「OK!」
俺はこのシリーズにずっといる黒人強面キャラのドン・ガイを選んだ。
ルゼもこのシリーズではおなじみのチャイナドレスで大きなヒョウタンを背負っているモンモンを選んだ。
「じゃあ対ヨロです!」
「よろしくー」
数分後。
俺はまさかのノーダメージで完全勝利をした。
「ル、ルゼ……」
ルゼはものすごく悔しそうにしていた。
その表情すら可愛くて見とれてしまった。
「もう1回」
「え?」
「もう1回」
「わ、わかった」
俺はすぐにキャラクターを選択し、ゲームを始める。
数分後。
ノーダメージではないが、ほぼダメージを受けずに勝利をした。
さすがにこれはまずい。
「ル、ルゼ。このゲームはビギナーズラックがあるみたいだね」
「私も初心者ですよ」
「えーっと」
俺は自分が女性慣れをしてないことを恨んだ。
これは接待をすべきなのか。
「ハルキさん。接待しようとしてますよね」
「え?あー」
「ダメですよ。今日配信でやるんです。少しでも上手くなりたいんです。私が不機嫌になっちゃうかもしれませんけど、手は抜かないでください」
「わかったよ」
そういえば俺はルゼ様の下手だけど頑張る姿に惹かれていたことを思い出した。
「じゃあ何回かやって練習しよう」
「お願いします!」
俺達は再び対戦を始めた。
▽ ▽ ▽
対戦結果は50戦47勝3敗。
ルゼも最後の方は慣れてきたみたいで、勝てるようになっていた。
「ありがとうございます!これで配信でも出来そうです」
「それは良かったよ」
「じゃあそろそろ配信準備しますね」
俺は配信準備に少し興味があった。
「配信始まったらリビングに行くから、準備を見ててもいい?」
「いいですけど、何も面白い事はないですよ」
「どうやって身体を画面に出してるか気になって。魔力でやってるとは聞いてるけどさ」
「なるほど。良いですよ。じゃあ配信部屋に行きましょ」
ルゼと共の配信部屋に向かった。
配信部屋には4台のPCがあった。
「そっちの2台はお姉ちゃんのです。配信はたぶんこっちでやるので」
「なるほど」
「まずは配信用のPCに魔力を注ぎます」
ルゼはPCに触れた。
すると画面にルゼ様の本当の姿が現れた。
「私と同じように動くんですよ」
ルゼがそう言うとPCの中のルゼ様も口を動かした。
「これって俺もできるのかな?」
「うーん。難しいと思います。魔力は微量でいいのですが、魔力操作が上手くないと難しいと思います」
「そうなのか」
「きっとハルキさんがPCに魔力を込めるとPCが壊れます」
「あぶな!いま試してみようかと思っちゃったよ」
「プールから水を1滴だけ出すような器用さがないと難しいです」
「俺には無理だ!」
俺はさすがに諦めた。
「じゃあそろそろ配信始めますね」
「うん。俺はリビングで見てるね」
「はい!」
俺はリビングに降り、ルゼ様の配信を見る準備を始めた。
▽ ▽ ▽
ルゼは配信で全敗した。
オンライン対戦で戦うと配信で言い出したときは驚いた。
CPUと戦うものだと思っていた。
練習では俺が使っていたキャラとしか戦ってなかったから、初めて見るキャラ達に翻弄されまくっていた。
これはさすがにへこんでるだろう。
「ハルキさーーーん!!!!」
ルゼがリビングに降りてきた。
「勝てませんでしたー!!!」
「見てたよ。頑張ってたね」
「はいー。知らないキャラにボコボコにされましたー。練習したいですー」
「全然付き合うよ」
「本当ですか?」
「うん」
ルゼは半泣きだったが笑顔になった。
「明後日から会社なので、今日と明日はみっちり練習に付き合ってください」
「え?」
「さあ、やりますよ!!」
「う、うん」
俺は徹夜でルゼの格ゲー特訓に付き合うことになった。




