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30.報告会

起きると、テントにはルゼの姿はなかった。

テントから出ると空は暗くなっていた。


焚火の近くに座っているルゼを見つけた。

「おはようございます」

「おはよう。そろそろ出発する?」

「いえ、明るくなるのを待ちましょう」

「了解」

かなり寝ていたみたいだ。


俺はルゼと共に食事の準備を始めた。


「お姉ちゃんは上手くいってるでしょうか?」

「リディア様なら大丈夫でしょ。ファジャやウィノナも付いているし」

「そうですね……」

やはり少し不安みたいだ。


「そういえば引っ越しなんだけどさ、帰ったら少しずつ始めようと思う」

「そ、そうですね」

いきなり引っ越しの話をしたせいか、ルゼの身体に力が入った。


「それで相談なんだけど……」

「な、なんですか?」

「えー。ルゼ様のグッズは持って行っていい?」

「あっ。私も自分のグッズは持ってるのでまとめましょうか。ハルキさんは非公式のグッズもいっぱい持ってますし」

「ルゼ、その話はやめなさい」

言葉は濁してくれたが、少し恥ずかしくなった。


「タンクさん達も住むんですよね?」

「うん。そのつもりかなー。会社には来ないでほしいけど」

「そうですね。帰ったら住所変更とかもしなくちゃですねー」

「あー元の世界でもバタバタになるのかー」

俺は手続きなどをしなくてはいけないことに嘆いた。


「そういえば、今日って何日?」

「今日は4月28日ですよ」

ルゼは何も見ずに答えた。


「休みが5月9日までだから、あと11日」

「はい。それまでにこっちのことをある程度は落ち着かせたいですね」

「そうだね。てかGWに配信しなくていいの?」

「もうバタバタで諦めました。元の世界に帰って会社のみなさんに『魅了』で負担をかけた分をお返ししたら、会社を辞めようと思ってます」

「ルゼは働く必要ないもんね。魔力は俺からもらえるし、お金も配信で稼げてるし」

「はい。配信しながら、お姉ちゃんの手伝いをしようと思います」

「楽しみだ」


俺の中にはしっかりルゼ様の部下だという気持ちがしっかりあった。



▽ ▽ ▽



俺達は明け方に出発をし、蟻人族の街に半日程で到着した。


蟻人族の長のティーマさんに報告をすると驚かれた。

制圧を済ませたことも驚かれたが、マズドールを俺が倒したことが信じられなかったようだ。


そしてビーとティーを返却しに貸してくれた蟻人族の元に行った。

ビーとティーは俺達と離れるのを嫌がった。

テイムをしている蟻人族と話をすると、ビーとティーのテイムを解除してくれた。


その蟻人族が言うには、テイムしたモンスターの感情が何となくわかるらしく。

ビーとティーの俺への好意や離れたくないと思っている気持ちなどが伝わったらしい。

俺が『テイム』を取得してないことが少し不安そうだったが、ビーとティーの意思を尊重してくれたみたいだ。


俺とルゼは借りている家でリディア様の到着を待った。


▽ ▽ ▽


リディア様は俺達が到着した翌朝に帰ってきた。

ファジャとウィノナの他に蜻蛉族を5人連れていた。


報告会を行うために俺達はティーマさんの家に集まった。


「2人共、無事だったんだね」

リディア様は俺達を見て安心した表情を浮かべた。


「はい。なんとかなりました」

「お姉ちゃん達も無事でよかった」

ルゼも嬉しそうだ。


「まず僕から報告をするね。ファジャとウィノナと共に蜻蛉族と水黽族の街に行き、協力をしてくれることになったよ」

「おー」

「そしこの諸島にいる虫人族の情報を蜻蛉族の長が提供してくれた」

「これで協力してくれる人を増やせるね」

「うん」

リディア様は頷いた。


「僕達の今後の動きなんだけど、蟻人族と蜻蛉族と水黽族と共にダムザムを制圧して拠点にしてから他の虫人族に接触しようと思ってる。なのでダムザム偵察部隊に状況を聞きたいな」

「えっ」

「あっ」

「どうしたの?」

良い報告をするはずなんだが、何故か言いにくい。


「えー。お姉ちゃん。ダムザムの制圧が完了しました……」

「ほへ?」

さっきまでかっこよかったリディア様がちょっと抜けてる女の子になった。


「どういうこと?どういうこと?」

「お姉ちゃん落ち着いて。まずダムザムは怠惰の悪魔候補と呼ばれる悪魔族が管理してました」

「怠惰の悪魔候補?」

リディア様は首を傾げた。


「現魔王軍はスキルを奪う方法を手に入れているようです。私達のように改変ではなく、奪って誰かに与えられる技術です。元魔王軍幹部の中で唯一スキルを改変されていないのがゴフェル。そのゴフェルを捕まえてスキルを奪った際、『怠惰の悪魔』をもらえる可能性があるのが怠惰の悪魔候補らしいです」

「スキルを奪うことなんて本当にできるのかい?」

リディア様は驚いている。


「強欲・暴食・色欲・憤怒も新しい取得者が現れたようですが、スキルを奪って現魔王の部下に配られたとダムザムを管理していた怠惰の悪魔候補のマズドールが言ってました」

「マズドール!?あの?」

「はい。あのです」

リディア様は苦虫を潰したような表情をした。

やはりマズドールにはいい思い出が無いようだ。


「それでマズドールは今どこに?逃げられてるならまずくない?」

「いえ。ハルキさんがボコボコにして両角を折って、ダムザムの牢屋に監禁してます」

「え?は?」

「ダムザムに掴まっていた鬼人族やその他の種族も開放し、ガシャールさんの指揮でダムザムを管理しています」

ルゼがそう言うとファジャの目が潤んだ。


「ルゼ様。父は生きているんですか?」

「うん。ランスンさんも他の鬼人族もみんな無事でしたよ」

「よがっだー!」

ファジャは泣き出した。


当然だ。

両親が12年も消息不明で、幼いファジャは長として種族を引っ張ってきた。


ウィノナはファジャを抱きしめて慰めていた。


「鬼人族が無事なのは本当によかった。えールゼとハルキさん。僕の理解が追い付かないから、ダムザムで起きたことはまた後で詳しく話してくれる?」

「はい」

「と、とりあえず。ダムザムを拠点にすることはできそうだから、他の虫人族探しをしよう。細かいことは2人から詳しく話を聞いてから決める。ごめん、全然頭が追い付かない」

リディア様は予想外の報告でパンク寸前の様だ。


報告会はほぼ強制終了のような形で終わった。


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