31.一時帰宅
蟻人族に借りている家に帰ってきた。
「さあ、何があったか話してくれるかい?」
リディア様は笑顔だが、なぜか圧を感じた。
俺達はダムザムであったこと、『異世界装備』について、マズドールから聞いた話をリディア様に伝えた。
「はー。おかしくなりそう」
話を聞いても、すぐには理解できないみたいだ。
「まずは蜻蛉族と水黽族の戦士をダムザムに向かってもらおう。僕達がやらなきゃいけないのは他の虫人族と接触することと、他の怠惰の悪魔候補が管理している街で捕まっている人の救出をして……」
リディア様はぶつぶつと独り言を言っていた。
俺はルゼを見た。
「この状態に入ると、頭の整理が落ち着くまでは何も聞こえないです」
「あーわかった」
10分程ぶつぶつとつぶやいていたリディア様が急に顔をあげた。
「よし。決まったよ」
リディア様の表情はスッキリしていた。
▽ ▽ ▽
俺達は一旦ダムザムに向かうことになった。
理由はファジャを両親に会わせたいとルゼが言ったからだ。
それにせっかく制圧できた拠点を現魔王軍に奪われたくはない。
なので戦力をダムザムに集めることになった。
ダムザムに行ったあとは、諸島の他の島に行く。
俺とルゼとリディア様は蟷螂族がいると思われる島。
ファジャとウィノナと数名の虫人族は鍬形族がいると思われる島に行く予定だ。
どちらの島にも怠惰の悪魔候補がいるだろう。
なので制圧ではなく偵察。
そして可能ならば虫人族との接触するのが目的だ。
「あと5人もマズドールレベルがいるんだよね。今の僕とルゼじゃ戦えないかもな……」
「お姉ちゃん。私は少しずつだけど、今の力の使い方を掴めてきたよ」
「え!?そんなに戦う機会があったの?」
「ダムザムではまったく戦ってないんだけど、帰ってくる途中にダンジョンを見つけて」
「ダンジョン!?」
「コアを壊したんだよね」
「えー!攻略したってこと?」
リディア様は驚いていた。
「うん。ハルキさんとタンクさん達と一緒にですけど」
「ボスはルゼだけで倒してましたよ」
リディア様は頭を抱えていた。
「ダムザムだけじゃなく、ダンジョンを攻略しているなんて……。本当にハルキさんは……」
「え?俺?」
なぜか俺が責められた。
▽ ▽ ▽
俺達はダムザムに到着した。
大所帯だったので、ダムザムに着いたのはリディア様の報告会から5日後だった。
ファジャと両親の感動の再会のおかげで、戦士達の士気は上がった。
ガシャールさん夫妻に今後の流れを話したら、この諸島について教えてくれた。
この諸島にある島にはゴフェルが適当につけた名前があるそうだ。
今いる島は伍の島。
残りの島にも名前に数字がついている。
龍人族の里がある壱の島。
森や草原が多い弐の島。
俺達が次に向かう島だ。
殆ど荒野で少しだけ森のある参の島。
沼地の肆の島。
人が暮らせるような場所ではないらしい。
そして火山地帯の陸の島。
ここはファジャとウィノナに向かってもらう島だ。
「お姉ちゃん。水黽族に協力してもらって海を渡るんだよね?」
「うん。明後日には蜻蛉族と水黽族がダムザムに到着するはずだから、合流したら移動開始かな」
「海を渡るのに3~4日くらいはかかるよね」
「それくらいはかかるだろうね」
ルゼはリディア様の目をまっすぐ見た。
「お姉ちゃん。そろそろ有給が終わっちゃう」
「あ!」
「このタイミングで一旦帰らないとダメかも」
「そうだったね。すっかり忘れてたよ。どうしようか……」
リディア様は頭を抱えた。
「リディア様。魔力を渡すのは鬼人族や虫人族でもできますか?」
「うん。できるはずだよ」
「それとワールドトリップで俺達だけ元の世界に戻すことはできますか?」
「やったことないけどできると思う」
「それならリディア様はこっちに残って、俺達だけ帰る方がいいかも。それで次の休みまでに、みんなから魔力をもらって俺達を迎えに来てもらえばいいと思うんですが」
「迎えに行ったときにハルキさんから魔力を持って戻ってくるということか」
「そうです」
リディア様は俺の提案を採用したみたいだ。
「金曜の夜に迎えに行けば、土曜の朝には出発できるよね」
「はい」
「僕が弐の島から迎えにいれば完璧だね」
「そうですね」
「わかった」
リディア様は頷いた。
「いつもの所にカードと通帳があるから、食料と植物の種を用意しておいてくれる?」
「うん。わかった。こっちで育てる用だよね」
「そう。長期戦になる可能性があるからね。使えないかもしれないけどマジックバッグも持って行って」
「わかった」
話が終わり、俺とルゼだけが元の世界へと戻った。
▽ ▽ ▽
俺とルゼは客間に帰ってきた。
「何回やっても慣れないな」
さすがに初めてワールドトリップを使った時ほどではないが、少し目が回る。
今回タンク達はリディア様のサポートのために残ることになった。
「14日までに色々終わらせちゃいましょう」
「そうだね。引っ越しとルゼの退社、後は頼まれた買い出しだね。マジックバッグが使えれば色々楽なんだけどな。
俺はマジックバッグを取り出し、中に手を入れた。
「ん?使えそうだよ」
「本当ですか?」
「うん。これならすぐに引っ越しできるよ」
「じゃあ明日はハルキさんの家、明後日は私の部屋の物を運んじゃいましょうか」
「そうだね。それに休みが終わるまでに買い出しも済ましちゃおう」
俺はルゼと休みが終わるまでの予定を決め、家に帰った。




