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内務省所属平和庁直属特務機関「転生局」  作者: 塚山 凍
五章 鏖殺人と仮面舞踏会
75/200

十話(五章 完)

短いです。

「すまなかったな。迷惑をかけた」


 鏖殺人の第一声は、疲れを感じさせない謝罪だった。

 どう反応すべきか判断に困り、トモカズはとりあえず、と言った態で頭を下げる。

 それから、不躾であることを承知の上で、ベッドに寝転がる鏖殺人の姿を──特にその顔を見つめた。


 意識不明で担ぎ込まれたというのに、その顔は依然として仮面に覆われている。

 当然だ。ここに運ぶ際、トモカズはそれを外さなかったのだから。

 外そうとしたのだが、意識を取り戻した彼に抵抗されたのだ。


 ──ナイト連邦のメンバーもそうだけど、なんであんなに仮面に拘るんだろうか?息苦しいだけだろうに……。


 この会議が始まる前、局長のリュウに仮面を外すかどうか聞いて、機嫌を損ねたことを、トモカズはぼんやりと思い出す。

 顔に傷跡があるだとか、よっぽど顔に自信がない、と言うのならまだ話は通るのだが、病気で倒れた際にも外さないとなると、その拘りは何やら異様なように感じられた。


「会議の参加者は、どうなった?」


 何ら言葉を発さないトモカズに焦れたように、鏖殺人が口を開く。

 しばらく自分の思考に夢中になっていたトモカズは、それでようやく自分を取り戻し、慌てて報告をした。


「会議は一時中断して、刃野局長と天司顧問にはそれぞれの滞在場所に移動していただいています。お二方とも、ティタン局長のご容態を心配しておられました」

「これからの会議の予定については?」

「お二方とも、ティタン局長の判断に従う、と」

「そうか。なら、今年の転生憲章の会議は中止だな」


 一瞬、トモカズは驚愕から目を見開いた。

 そして同時に、強い安堵感に包まれた。


 鏖殺人があれほどにまで雄弁を振るっていた会議を、いくら一度倒れたとはいえ、延期ではなく中止にするというのは、驚くべき決断だったが────。

 それ以上に、予定より早く、この神経を使う職務を終えられる、と言う喜びの方が強かった。

 それほどまでに彼の気分は悪いのだろうか、と少し心配にはなりつつも、結局、鏖殺人の気分が変わらないうちに、トモカズは了承の意を示す。


「分かりました。刃野局長と天司顧問には、そのように伝えておきます。司会役であるティタン局長のご気分がすぐれないのであれば、続行は不可能ですしね」


 トモカズの言葉を受けて、鏖殺人はかすかに頷く。

 お互いに言わなくてはならないことは報告し合い、トモカズと鏖殺人は同時に口を閉じた。


 それから数舜の間、保健室は奇妙な沈黙に包まれた。

 鏖殺人は、もはや伝えることはない、と言わんばかりの態度で寝そべり。

 トモカズの方は、さすがに病床にまで来ておいて、二言三言で帰るのは失礼にあたるかもしれない、と考え、身動きしない。


 見ようによっては酷く間が抜けた時間。

 それを打ち切ったのは、トモカズの方だった。

 沈黙に負け、質問を口走ったのである。


「あ、あの、お聞きしたいことがあるんですが……?」

「……何だ?」

「あー、えーと、今年の会議でやり残してしまった議題は、どうしましょうか?」

「来年度に持ち越し、だな」


 わかりました、と一言口に出しておき。

 トモカズは、義理は果たした、という態度で踵を返す。

 そのためだろうか。

 彼は、鏖殺人の最後のつぶやきを、聞き逃した。




「……『来年』が存在すれば、の話だが」

五章の中でちらちら登場した拷問使やドラクル帝国、タイガ王国というものについては、拙作の「拷問にも、才能って要るよね?」(https://ncode.syosetu.com/n5343fs/)で詳しくやっています。

興味のある方は、お読みいただければ幸いです。

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