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内務省所属平和庁直属特務機関「転生局」  作者: 塚山 凍
三章 鏖殺人と証言集
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ある副局長へのインタビュー その一

 注:本インタビューで読みやすさを優先するため、インタビュー対象者の発言、言い方を記事にするに当たって多少変更しています。




 ──本日は貴重なお時間を割いていただき、本当にありがとうございます。


 白縫キョウヤ氏(以下、白):いやいや、寧ろ暇だったところだよ。


 ──ご冗談を。転生局の副局長であらせられる貴方が……。


 白:それが、案外冗談でもなくてね。僕は一等職員ではあるんだけど、ウチは局長の匙加減で仕事が決まるから。彼が仕事を持ってこない間は、結構暇なんだよ。


 ──本当ですか?


 白:聞いたことない?


 ──……恥ずかしながら。


 白:まあ、ウチの内部事情なんて、知っている人の方が少ないしね。気にすることでもないよ。


 ──ありがとうございます。今回のインタビューを通して、そういった事情を含めて様々な実態を明らかにして、転生局について世間の理解を深めたいと思っています。


 白:理解ねえ……(考え込む)。


 ──では、始めさせていただきます。




 ──最初に、白縫副局長ご自身のことについてお尋ねしたいと思います。


 白:僕?


 ──はい。ご出身や、転生局の配属に至るまでの経緯についてお聞きしたくて。


 白:別に良いけど、大した経歴じゃないよ。そもそも、出身や生まれだけならもう知ってるでしょ。あんな紹介状を持ってきたくらいだし。


 ──はい。確か、我が王都日報編集幹部の親族の方が……。


 白:そう、僕の父親だ。僕の父が働いていたのは王都日報じゃなくて、別の出版社だけどね。そこら辺のコネで、こうしてインタビューを受けることになったんだけど。


 ──では、幼少期は王都で過ごされたのですか?


 白:うん。実家がここの近くにあったから。基礎教導院と発展教導院については、王都の東の方にある地元のところに行っていたよ。


 ──その頃から、転生局を志して?


 白:まさか。転生者法の存在すら、正確には理解していなかったよ。そもそも、王都にいると鏖殺人……じゃなくて、局長の姿を見るのがせいぜいで、流石に異世界転生者の姿は見ないからね。そこまで関心は無かったな。


 ──そうなのですか。


 白:というか、一等職員にも別になろうとは思っていなかったよ。ぼんやりと、父親と同じ職業になるのかなって思ってた。


 ──では、どういった経緯でこちらの道へ?


 白:まあ、理由はあるけど……ちょっと長くなる、良いかい?


 ──大丈夫です。今まで取材に成功した者がいないことで有名な転生局への取材ということで、こちらも張り切ってますので。最近部数が落ち込み気味の我が社からすれば、これは社運を賭けたインタビューなんです。いくらでも時間をとりますよ。


 白:そう言われると緊張するなあ(笑)


 ──では、改めて。転生局を志した切っ掛けについて……。


 白:うん、始まりは本当に些細なことなんだよ。発展教導院の六年生だった時の文化祭が発端なんだ。


 ──文化祭?


 白:そうそう。学生が演劇だの出店だのやる、あの文化祭。その場にね、文化祭を盛り上げるために、学校側があるサーカス団を呼んだんだ。


 ──王都でサーカス団というと……有名な、アノハルマサーカス団のことでしょうか?


 白:いや、それよりも前の話。今はもうなくなっちゃったんだけど、ピリオドサーカス団というサーカス団があったんだよ。当時の校長が、そこの団員と知り合いでね。それで呼ばれたって話だったな。


 ──そのピリオドサーカス団は、どうされたのです?


 白:あくまで文化祭のゲストだからね。大がかりな芸は見せなくて、学生の演劇の合間に簡単な見世物をするだけだったんだけど……その時に、ある団員が面白い見世物を披露したんだ。


 ──面白い見世物?


 白:ええとね、説明が少し難しいんだけど……アレルで数十年前から流行っている遊び道具に、トランプっていうのがあるよね。七並べとか、ポーカーとかをするやつ。


 ──ありますね。


 白:あれを使った見世物だったよ。学生の中から一人を選んで、団員が持つトランプの束の中から一枚選んでもらう。それを壇上に呼んだ別の学生に破り捨ててもらうんだけど、何故か団員が急に手を叩くと、そのトランプが復活して、団員のポケットの中にある……そんな見世物だったな。その団員は確か、「手品」って呼んでいた。


 ──……不思議ですね。芸ならば、何か仕込みや種があるんでしょう。でも聞いている限りでは、どうやったらそんなことができるのか分かりません。


 白:うん、当時の僕もそう思った。さっきの説明に出てきた「トランプを破り捨てた学生」というのが、実は僕でね。確かに破ったはずのトランプが、いつの間にか復活しているのを目の前で見ると、訳が分からなくなったよ。


 ──白縫副局長は、間近でその芸を見たのですね。


 白:そうそう。しかもね、この芸は後半から意外な展開を見せるんだ。


 ──というと?


 白:丁度僕がトランプが復活したことを見届けて、観客席に戻ろうとしたときだったかな。ある男がね、突然ステージに上ってきたんだ。


 ──ある男?


 白:顔を覆うような青い仮面と黒いマスクを身に付けた、特等職員の男だよ。服は特注の軍服で、マントを羽織った姿だったな。勿論、帯刀していたよ。


 ──……その方は、もしかして……。


 白:そう、前の局長だ。今の局長の父親である、先代ティタンだね。


 ──では、その団員の方は……。


 白:うん、実は異世界転生者だったんだ。サーカス団に隠れ潜むことで、転生局から逃げ回っていたらしくてで。だけど急に見つかったらしくて……そのまま、僕の目の前で斬り殺されちゃった。


 ──(インタビュアー絶句)。


 白:いやあ、見事な殺し方だったよ。余りにも流れるような動作で行ったものだから、生徒たちはそういう見世物だと思ってしまって、しばらくはその団員が死んだことに気がつかなかったくらいだ。


 ──それが、白縫副局長が初めて……。


 白:うん。初めての転生局局長との対面であり、同時に初めての異世界転生者の死体確認だったね。まあ、それからは文字通り、腐るほど見ることになるんだけど。


 ──……それからのことをお聞かせください。


 白:一応、その団員と接触した生徒……つまり僕たちは取り調べを受けたんだ。特に、間近で異世界転生者の見世物を見ていた僕は、詳しい話が聞きたいってことで、学校を休んで転生局に連れていかれたんだ。


 ──異世界転生者がやっていたことについて、危険性の有無を確かめるためでしょうか?


 白:当たり。まあ、話をしたらすぐ解放されたけどね。でも帰り際に、僕は先代ティタンに質問をしたんだ。


 ──何をでしょうか。


 白:あの見世物は、魔法を使って行ったことでしょうか?


 ──はい?


 白:どうしても、そこが気になってね。直に聞いてみたんだ。あの手品は魔法によるものだったのか……そのことを確かめるために。


 ──白縫副局長は勇気がありますね……。

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