↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/4

第-?話 最後の一人

―記憶している唯一の名前は、オーダー、たぶん私の名前はオーダーなのだろう。


 オーダーの外見はだいたい10歳ぐらいだろうか。髪は灰色でボロキレを1枚を着ていた。オーダーは自分の目の前にある機械へと歩き出していた。躊躇なくその機械の中へ入り、目をつむりその時が来るのを待っていた。


 次に目を開けたとき、オーダーは永遠と続く砂漠に一人、場違いに立っていた。砂嵐は吹き荒れ、人工物や水も存在せぬように思えた。先程の機械もそこにはない。


 ―そこは名前をつけるなら死の世界とでもいうのだろう。そこには植物も生物も何も無い。枯れた大地が続いているだけだった。今の私には歩くことしかできない。なぜあの機械が私をここにつれてきたのかはわからないが、きっとなにか意味があるはず、そんな希望論を立て、私はどこまでもここを歩いていく。今この時はあの機械がワープさせてきたここで何かを成し遂げなきゃならないから。


 オーダーは数日歩いていた,何も景色が変わることはなかった。


 ―気づいたことがある、どうやら私の体は水も栄養も必要のない体らしい。大体の世界には、人と呼ばれる知的生命体がいるようだった。人は獣の身体をしていたり、魚だったり、あるいは、猿みたいなのもいるらしい。私はその中でも、猿に似ているようだが毛は頭にしかないらしい。人は大体の場合、水と栄養が必要らしいから、私は人とは違う別の生命なのだろうか、人が言うような神様みたいな。


 オーダーは歩いて、歩いて、歩いた先に、砂嵐が終わると一軒の家が見えてきた。草の一本も生えていない死の世界に、一軒と一人がオーダーに背中を向けて佇んでいた。


 その人は、オーダーがいった中では、猿に近い方の人であった。ということは彼は、大きく見ればオーダーと似ていた。年齢は70代近くに見え、髪の色は白髪、性別は男性のようだ、鍛えているのか、彼は70代近くに見えるのにとても健康的な体格をしていた。


 彼はオーダーに気がついたようだった。目をまんまるに見開き、口を閉じるのも忘れたようだった。相手をまじまじと見つめ、少女だということに気がついた途端、大人として守るものとしての威厳を発揮しようとしたのか、すぐにオーダーに優しい笑顔を向けていた。


 「やあ、どこから来たのかな。まだこの星にわし以外の人間がおったとは驚きじゃのう」


 彼が親について聞かなかったのは、この星に長く住んだ経験と知識からだろう。


 ―初めての生物だった、虫でも犬でも龍でも神でも大罪でもなく、人だった。私と似ている人だった。私は眼の前にいる人に声を掛ける。


「あなたは⋯一人⋯なの⋯」


 此時、観測した中でオーダーは初めて声を出した。そして眼の前にいる男が、オーダーが初めて声を交わした魂だった。


「ああ、そうだね。わしは一人じゃ」


 男は空にある何かを遠く見上げて答えた。


「そう⋯」


「たぶんこの星には今、わしと君しかいないじゃろう」


―私は多分傷つくべきだったのだろう、しかし私にはまだ人や、他の生物が理解できていないから、悲しむことはできなかった。今、私のしたいことは眼の前の男の名前を聞くことだ。


「それじゃあ、あなたの名前を教えて?」


「ルーカス、それがわしの名じゃ」


 オーダーにとって初めての自分以外の名だった。


「ルーカス」


 オーダーは初めて聞いた名を噛みしめるように、大事に呟いた。


「君の名を教えてはくれないか?」


「オーダー」


―唯一、私の脳に刻み込まれていた名を、私の名前だと思って答えた。


「オーダーというのか。ここまで大変だっただろう、少し休んでいかないかい。君に時間があるなら」オーダーに背を向き、ルーカスは家の中へ入っていく。きっと彼はオーダーがついてくることがわかっていたのだろう。


 ―私にはその道しかないのが彼にはわかったのだろうか、私は人について行くことにした。


 オーダーが椅子に座り始め、数分が経過していた。椅子は立て付けが悪く、木が軋む音がゆっくりとこの部屋に伝わっていく。またそれとは違う音が聞こえていた、日が燃える音とやかんから水蒸気がところ狭しと出ていく音が。


 ―あれが水なのだろうか、初めて見る流動体に私の心は少し踊っている。人は沸騰?に気がついていないようなので人に声を掛ける。


「水は⋯」


「ああそうだね」


 どこかルーカスの心がここに無いかのようにオーダーには見えた。


 ルーカスが紙コップにインスタントコーヒーを入れ、お湯を回しかける。オーダーに渡し、「蜂蜜はいるかい」と聞いてきたが、オーダーは味にこだわるタイプではなかったのでそれを遠慮した。


 ―人は毒を私に出したのだろうか、きれいな透明だった水がコップに入れた途端、黒くなった、香りもついている。


「これは何、毒?」


 ルーカスはとても驚いているように見える。


「すまない、これはねコーヒーという飲み物だよ、苦いけど君は飲めるかい。」


 ―ああ思い出した、コーヒーというのはこういうものなのか。


「いや大丈夫飲めるよごめん人」


「ルーカスと呼んでくれないかな」


 人というのは名を大事にするのを忘れていた、なので言い直すことにした。


「わかったよルーカス」


 二人のコーヒーの飲む音だけが響き渡る。香りが室内に霧散し、いつしか空いている窓から逃げていく。静かだった、今は風も吹いていないから、コーヒーの飲む音しか聞こえない。カップを持つ、カップを置く、口に運ぶ、口につける、口の中に入れる、喉に通す、そんな普通のことを静かに何も喋らずに、ただそれだけ。


 しかしルーカスがそんな静かな時を壊す。


「君はどうするんだい」


「私は、多分ここにいるべきだと思う。うん、そうするべき」


「そうかい」


 ルーカスは少し笑顔を見せた、それは心の奥底からきているものだった。


 いつしか、ルーカスとオーダーの両方がコーヒーを飲み終わった。空のコップが並べられる、オーダーがコップを片付けようとしたが、先に手が動いたのはルーカスだった。


 ルーカスがコップを洗い、コップはその汚れを全て落とし、水切りかごの上に置く。オーダーに一つの疑問が生まれた。どうやってきれいな水を生み出しているのか、しかし一旦心のなかにしまい込む。ルーカスが手を拭いたあと、部屋の奥に歩み始めた。ちょこんと置かれた小さいマットを剥がし、そこには地下への扉があった。


 ルーカスは、扉を開けると、オーダーの方を向き手招きをする。


「オーダー来てくれるかい」


「わかった」


 オーダーとルーカスが地下に続く階段を歩いていくと終りが見えてきた。


 そこは倉庫のようなところだった。陳列棚が無数に存在し、どこまでも続いているルーカスが持っているランプだと奥までは見えない。オーダーが呆然と奥を見ようとしていると、ルーカスはいつもどうりといったような足取りで置くまで歩いていく。ルーカスに続き、オーダーもその背中についていく。


 数10メートル歩いたあたりでルーカスが立ち止まる。オーダーが声をかけようとしたが、先にルーカスが喋り始めた。


「君が知っているかはわからないが、この惑星には第三次世界大戦というものがあった。新ソビエト連邦によるウクライナ侵攻、ヤコウとアメリカによる緊張状態、それが全て破裂し起きてはならない戦争が起こってしまった」


 オーダーにとっては全てが聞き慣れない言葉だった。オーダーが質問を重ねる。


「ルーカスが何を言っているのかがわからない、世界大戦も他のも私は聞いたことがない」


 ルーカスは心底驚いた顔をしていた、それは常識の知らない人に向ける目だった。


「何も知らないのかい」


「そうだよ、ルーカス」


「まず第二次世界大戦というものは知っているかい」


 オーダーはその言葉にも心当たりがない、オーダーは首を振り問いに対しての回答をする。


「君はどこから⋯」


 か細い声で喋る、そんな声がオーダーの耳に届くはずがなかった。


「世界大戦というのはね、この地球に存在している国が全て争うことを意味しているんだよ」


「世界大戦」


 外の世界から来たオーダーにとってはとても信じられるようなものではなかった。


 ―私は人を少し勘違いしていたようだった、しかしそれでは終われなかった知らなくてはこの世界が辿った足跡を。


「ルーカス教えて、世界大戦の全てを」


 ルーカスが床に座る、オーダーも同じように座りそしてルーカスが喋り始めるこの星の軌跡を。


「まず第一次世界大戦から始めようか⋯」


 そうしてルーカスが喋り始めたのは君たちの世界とは少し違う道を辿った世界の物語だった。この世界の人々は最終的には人間の手によって、世界に点々といたものをこの男以外消し去ってしまったのだった。


 そして彼はその長い語りの後にこう締めくくった。


「⋯最後に残ったのは俺だったのかな⋯」


 そしてルーカスは下を向いた、何かを思い出すように。


「それがこの世界の歩んだ道、それはとても悲しいね」              


 ―この世界の『人』はとても愚かなのだろう。それだけしか思いつかなかった。


 数分の沈黙が流れ、ルーカスが立ち上がりオーダーに問う。


「わかってくれたかい、わしの世界を」


「十分わかったよ、ルーカス」


 ルーカスが再び歩き始め、オーダーがルーカスに続いた、数メートル歩いた程度でルーカスが立ち止まり一つの陳列棚に体を向ける。


 棚に置かれた、英語でミネラルウォーターと書かれたペットボトルを手に取ると、オーダーに突き立て、「これを持ってくれるかい」と喋り、オーダーが手に取った。


「ルーカス、これはなんて読むの」


 ルーカスはまた驚いた顔をした、今まで言葉が通じていたのだ驚くのも無理はない。しかし少し不自然な反応だった、この星に人は彼しかいないのに。


「これは水と読むんだよ、オーダー」


 初めてみた文字だった、いやそもそも私は文字を知っているのだろうか。どうして私はこの言葉だけを知っている。


 ルーカスが数本水を取り、そのうち二本をオーダーに渡す。オーダーが一本落としそうになるとルーカスは素早く水を棚に転がし、落とした二本をキャッチする。オーダーが最後に持っていた一本を見つめオーダーに微笑む。


 ―私は初めてまじまじとルーカスの手を見たかもしれない、手は傷がたくさんあってそれは私の予想では軍人の手だった、いやもう引退した軍人なのだろうか。聞こうとも思ったけどまだ聞けるほどルーカスの心に迫れた気がしなかった。


 ルーカスとオーダーが地下から上がってくると何も変わらない部屋がそこにあった。


数カ月後 予想年月日2083年9月16日


 私がここに来てから、数カ月、あるいは5ヶ月くらいだろうか。ルウ爺と過ごしてわかったことがたくさんある。この世界の言語の一つである英語について、ルウ爺がどうやって過ごしてきたかなどだ。


 ―戦争が終わったのが、2038年そこからルウ爺は最後の任務地であるヤコウという国で過ごしていったらしい、ルウ爺が生き残ってる理由はそこだけは聖地として核という兵器は使われなかったらしい。


 ―しかし人は止まらず兵器を使い聖地さえも消し飛んでしまった。ここは最後にルウ爺を守った嘆きの壁があった場所らしい、あの地下は偶然あったらしくその上に嘆きの壁の瓦礫を使って建てたらしい。


 ―英語も読み書きできるようになった。ルウ爺はこの言語以外にも日本語を使うことができるらしいのだが教えるのが難しいと言って教えてはくれなかった。一つ気づいた事があるルウ爺は毎日日記をつけているらしい、私が日記を見ようとしても見してくれなかった。前に「今書いている日記以外にも日記はあるの」と聞くとルウ爺は「あるよ」とは喋っていたが見せてはくれないだろう。


 今、ルーカスの前には一人の少女がいる。4月4日にルーカスの前に現れ、オーダーと名乗った少女は持っているコップの中を見ながら匂いを嗅いでいる。


「ルウ爺、またコーヒーなの、ジュースとかはないの」


 本当に彼女は変わった、最初に出会ったとき彼女の第一印象は『わからない』だった。


 最初に会ったとき彼女は人ではなかった、もっと別の神のようなものだと認識した、俺以外に人は生物はいないと思っていたから。彼女に文字を教えた歴史を教えた、しかし俺の過去は教えられなかった。


 ルーカスはオーダーのことを認識せず自分だけの世界に入っていた、それに気づいたオーダーがルーカスの方に触れたときルーカスが上を向き、そしてオーダーに笑ってみせた。


「ああ、すまないオーダー少し考え事をしていてね」


「ルウ爺私がいるからね、いつでも相談して」


 オーダーの言葉が目に耳に刺さった。まるで何も話していないルーカスの罪を認識させられたような気がして、けれどルーカスは話せなかった。


「大丈夫だよオーダー、どうしたんだいわしにできることがあるなら何でも聞くよ」


「それじゃあ、ここにジュースとかはないの?私一回飲んでみたいな」


「うーん流石にないかな、甘いものはすぐに腐ってしまうからね」


 少しルーカスが考え込んだあと、なにか思いついたようでオーダーに笑顔を向け


「できるかもしれない、なんちゃってジュースだけどね」


 オーダーも笑顔を顔に表し、オーダーに向けてみせた。


「ありがとうルウ爺!!」


 地下に食材を取りに行ったあと、二人はテーブルに向き合っていた。


「これでできるの」


「きっとできるよ」


 テーブルの前には、蜂蜜といくつかの香辛料そして水が置かれていた。オーダーたちが外に出て、ルーカスがマッチを使って火をつけると紙などを集めたものに投げ入れ、上に鍋を置き、その中に蜂蜜と香辛料を入れる。蜂蜜がだんだん、焦げていきカラメルのような匂いが鼻に入ってくる。


「いい匂いだね、ルウ爺」


「そうだね、わしも初めてやるから驚きじゃよ」


「そうなんだ」


「最初の頃はまだジュースも飲めるのがあったんじゃけどな」


 二人が談笑しているとジュースの素になるものは出来上がったようでルーカスが鍋を火から離すと、少し冷めるのを待ってから紙コップに注ぎ水で薄める。それをオーダーに手渡すと「ルーカス風なんちゃってコーラじゃ。」と言って自分の分も作り始めた。


 ルウ爺から手渡されたコーラ?を飲んでみた、初めて飲んだ味でとっても美味しかった。今までコーヒーばっかり飲んでいたから甘い飲み物は本当に美味しかった。けどルウ爺が作ってくれたものなら何でも美味しいのかもしれない。


 青く澄んだ空を見上げながら、二人はコーラもどきを飲むのだった。ちなみにルーカスにとってはこのコーラは微妙な味だったらしい。まあ炭酸も入っていないんだから仕方ないところではあるが。


2年後


 オーダーは12歳になっていた。ルーカスが尽力したおかげとオーダーの頭が良かったこともあるのだろうが。その御蔭でオーダーは今、学力を高校レベルにまで上げることができていた。


 これはある日の昼のことである。その日はオーダーは昼に起きていた、部屋にはオーダーしかいなくルーカスはどこかへ行ったようだった。オーダーがテーブルの方を見ると一つの本が書かれていた。それは日記だった、よく見てみるとナンバーが書かれていない。いつもルーカスが書いているのはナンバーが振ってあるので、オーダーは不思議に思った。


 オーダーが手に取り、読もうとしたときルーカスの喋っていたことをオーダーは思い出したが好奇心には勝てず開いてしまった。


2027年3月14日


いつ死ぬかわからないのでこれを記すことにする。これを見ている人へ君が生きているならばこの罪を後世に伝えてほしい。


 最近メディアは「第三次世界大戦、第三次世界大戦」と喋っている。いつも話しているのは「どこに爆弾が打たれたか、何人死んだか」とかだ。アメリカは大丈夫だと信じたいが。


2027年9月7日


 国民から軍隊にいかなければいけない人が出るらしい、国連軍と称したそれはまさに特攻兵だ。連合国の中から選ばれ、兵につき一生を軍人として過ごす。こんなの嫌な夢だ、信じたくない俺達は死ななければならないのか。


2027年9月26日


 親父と俺が選ばれた。弟は大丈夫だったが、紙にはもう任務地が書かれていた。親父がウクライナ国境で俺がインド国境、ウクライナ国境での死者数はもう100万人を超えたらしい、母さんがずっと泣いている。ずっとずっと


2027年10月11日


 任務地で一人の日本人と出会った、そいつも例の紙で選ばれたらしく体格で見れば同年代なのにそいつは明らかに小さく痩せて見えた。どう見ても軍人ではなかった。


2027年10月13日


 最近日記を書くことが増えた気がする。例の日本人(まあやつは自分のことをゼロという明らかな偽名で名乗っているが)が俺に日本語を教えてくれた。まあヤツの教え方はあまりうまくないからあまり教えにはならないが。


2027年10月21日


 ゼロが俺に夢を教えてきた。世界から涙をなくしたいんだと、でもやつはもう失敗したと言っていた。資金集めの最中に兵役に就くことになってしまったからもう諦めたと言っていた。


2027年10月30日


 最初の任務が決まった。あと4日で死ぬんだと、簡単に言っちまえば盾だ。ちゃんと鍛えてるやつの盾になって進めだと最悪だ最悪だ。あいつが任務を聞いてからすぐに俺に時計を渡した、ニキシー管の時計だと。あいつは好きなアニメで出たから買ったと言っていた。ついでに俺に渡したのは俺が生き残りそうだからって。


2027年11月4日


 全員死んだ、あいつも死んだ、俺だけ生き残った。日記ともらった時計しかない。これを見てる奴がいたなら申し訳ねえな、血で書いてあるから見づらいだろ。


2027年12月3日


 見つかっちまった、せっかくここまで逃げたのにな。凍えてるところを見つけられて、また任務地を告げられた。次はウクライナだとよ、第一次のメンバーが全員死んだからって、親父の死を悲しむ暇も与えられなかった。


2027年12月31日


 年末決戦とも言うべきか、遠いところで核が落とされたらしい。こっちも俺以外全員死んだ。また生き残った。


2027年1月1日


 見つかって入れられる


2027年1月5日


 生き残った


2027年2月1日


 今日も明日も生き残る。お前は預言者だったのか。


2027年3月1日


 どうせ生き残る


2028年1月1日


 ほら言ったとおりだったろ。書く必要もない、仲良くなっても全員死ぬんだから。


2029年1月1日


 見送るのは疲れた、死にたい。


2030年1月1日


 いつ終わる


2031年1月1日


 神よどうか助けてください


2032年1月1日


 神はいない


2033年1月1日


 俺が死ぬまで終わらないのか、死んでも終わらないのか?


2034年1月1日


  俺に命令を


2035年1月1日


 誰もいないのか


2036年1月1日


 美しき核の花火


2037年1月1日


 人にあってもすぐに


2038年1月1日


 最初の地へ歩もう歩こう一緒に


2038年12月31日


 ついたのにもう終わってしまうのか


2039年1月1日


 俺だけを残して全て消えてしまった、もう見る人も生物も植物もないなら書かなくていいよな、そうだよな。


2083年4月2日


 昨日一人の少女が、ここに来た。嬉しかった、また人と同じ時間を歩めるのが。彼女が人間でないのならそれでいい、彼女には秩序の道を歩んでもらいたい。これからまた著そう、この本以外の紙に


現在


 ―見たよルウ爺全部、きっと歩むからルウ爺が願った道を


 オーダーは本を元あった場所に置くと、外に出てルーカスの帰りを待つのだった。


1年後


 オーダーが日記を見てから一年がたった、オーダーももう中学校に入るべき年齢になっていた。高校卒業レベルには頭も良くなり、ルーカスが教えるべきこともなくなっていた。


 変わったことがあった、最近ルーカスは寝込むことが多くなった。風邪ではないが、咳をして、目も悪くなっているようだった。年なのだろう、ルーカスの寿命も限界を迎えつつあった。


 ルーカスはオーダーに対してこの世界と自分のことについて喋ることが多くなっていた、忘れてほしくなかったのだろう世界にあった人々のことを、歴史を自分の歩んだ道を話せないことがあっても。


 オーダーは今、コーヒーを作っている、寝ているルーカスと自分のために。最近はオーダーが一人で地下に行き、生活に必要なものを取っていた。オーダーはルーカスが咳をすると慌ててそばに近寄り、ルーカスの手を掴む。そしてルーカスが「大丈夫だよ。」と喋ると元の場所に戻り、ルーカスを見る。そんなことをここ数ヶ月は続けていた。


 今も咳をすると、ルーカスのそばに近寄り手を掴んでいる。ルーカスは寝ているのか手を握ってくれている存在に気づかず、すやすやと寝ている。そのままじっとしていると、水が湧いた音がしたので、ルーカスの手とやかんを交互に見てから名残惜しそうに、手を話しやかんの下へ近寄る。


 やかんの下で燃えている火を消すと、紙コップに水を注ぎ一つはテーブルの上にもう一つは手で持ちながら、片方の手ではルーカスの手を握っていた。


 コーヒーに息を吹きかけて冷まし、コーヒーを口に運ぶ。そうしているとルーカスが目を開け、オーダーを視界に入れるとオーダーに語りかけた。


「オーダーご飯にしようか」


「そうだねルウ爺」


 オーダーはルーカスに微笑んだ。


1年後


 ルーカスはさらに寿命が縮まっていた。ここ最近は起き上がることもなかった、オーダーはスプーンで口に運ばせることによって、ルーカスに食事を与えさせえていた。


 ―人には寿命というものがあるらしい、ルウ爺が言うことはなかったけど本で見てしまった。多分ルウ爺はそろそろ死んでしまう、けどそれは絶対に嫌だ。死んでほしくない死んでほしくない、私にはルウ爺しかいないのに。


 もうオーダーは自分の目的も忘れていた、オーダーはただルーカスと過ごしたいだけだった。


 (寿命があと少しだというのが頭でわかるくらいわしはもう衰えきっていた、ここまで生きられたのはすごいと思う。ゼロから全てを始めここまでこれたのは、もうたくさん頑張ったのだわしは寝てもいいと思う。けどまだだめなのだ、オーダーを一人残すわけにはいかないのだ、まだ一人で暮らすには早すぎる。だから置いていけないのに体はそれを許してくれない)


 人の肉体というのはときに生きることを許してくれない、二人がどれだけ離れたくなくともいつかは離れてしまう。そしてその時はいつも突然やってくる。


 ルーカスはある時自分が死ぬのを知覚してしまった、それは近い未来30分後か1時間後かそんな早く来てしまう事がわかってしまった。だからルーカスは今まで思っていたことを吐き出すことに決めた。


 ルーカスはもうとっくに動くはずがない足を一歩一歩踏み出し始めると、外においてある椅子に座り、オーダーが起き上がってくるのを待っていた。


 オーダーが起き上がり、異変に気づいたときオーダーは心底焦った表情をしながら家を歩き始めた。数分後庭にいるルーカスに気づくと、ルーカスの下へ走っていった。


「ルウ爺大丈夫、歩いても平気なの」


「オーダー、君にはやるべきことがあるのだろう」


 オーダーは自分が考えていたもののどれにも当てはまらない答えに心底驚いていた。しかし驚いている暇がルーカスにはないのでオーダーに対する二言目を口にする。


「オーダーこの世界はきっと失敗だったのだろう。けど君にはきっと私達とは違った道を歩むことができるはずだ。人間を最も殺したのは今では人間自身だ、今これを変えることはできない。けど君になら変えられるのだろう、高望みをしているのかもしれないが。でもどうかできるだけ悲しい無念の死が減るようにしてくれないかな」


「私は、私は」


 次の言葉が出なかった、涙しか出なかった。


「オーダー君にならできる、きっと君がやりたいと思っていることが。どこまでも飛んでいくことができるはずだ、私はそう信じている。君に問いたいことがある、君は何なんだい」


 ―答えるしかなかった。今まで伏せていたことを


「私はオーダー、あなた達とは違うかもしれない、人間ではないかもしれない。もう一度いうね、私はオーダー、あなたの手を取り、あなたが夢見た世界を作るために、どこまでも飛ぶ、■■」


言葉は跳ね返るものがないこの世界をどこまでも駆け抜けた。


「オーダー愛しているよ。選別がある、あれを持っていくといい」


 ルーカスは一つの時計を指差した。オーダーが時計を取りに行って戻ると、ルーカスは杖をついて背中を見せていた。オーダーがルーカスの前に立つと、ルーカスが少し上を見上げオーダーを見る。


「大きくなったねオーダー」


「うん、とてもね」


 オーダーの目から涙がたれてくる。泣き止もうとしても、涙は止まらなかった。ルーカスがオーダーに別れを告げる。


「今までありがとうオーダー、どうか元気でいつまでも」


「またあなたに会いに行くよ、ルーカス。いつか絶対に」


 オーダーは歩いていく、どこに続くかわからない道を。オーダーの耳に誰かが倒れる音が入ってきた、オーダーが反射的に後ろを向く。


 ―ルウ爺が倒れていた、手を取りに行かないと助けなきゃ走らないと、なんで今光るの何がどうして手を取らせてよ、ああ見えなくなっていく。ルウ爺がああ微笑んでくれている、苦しいはずなのに、ああ光に飲まれていくここからはじき出されてしまう、この世界から。


 (オーダーが光に飲まれていた。きっとここからいなくなってしまうのだろう、けれど良かったここでの目的は果たせたのだろう。最後に私は何かを成し遂げられたのか、ありがとうオーダー、私の罪をなくしてくれて。眠たいな少し目を瞑ろうか)


 オーダーは久しい場所を訪れていた。暗い空が続くここに、空には丸い黒色の物体が等間隔で配置されている。そしてオーダーの眼の前には世界転移が置かれいる。


「まだ終わってないの、次はどこへ行けばいいの」


 オーダーは歩き始めた、世界転移に向けてそしてオーダーは新たな世界へと足を踏み入れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。