第七話「動き出す歯車」
「ん……」
まぶたが重い。
起きようとした瞬間に全身に重い痛みが走る。
「いってぇ……」
ここはどこだ?見たことがない。
窓際を見てみると豊かな町が広がっていた。
「目覚めましたか。よかったよかった。」
「あなたは誰ですか?ここはどこ?」
白衣みたいなものを着ている。医者か?
「僕は治癒士だ。そしてここはノルディアの冒険者ギルドの上にある治療室だよ。」
「僕に何があったんですか?」
「狩りに行ったところまでは覚えているよね?」
「はい。」
「そのあと本来ユグドラの大樹林には出現しないはずのジェネラルゴブリンが現れた。それに君のお父さんは、子供を同行させることをギルドへ申告していなかった。だから一ヶ月の活動停止処分となったんだ。」
うーん。やっぱりだめだったんじゃねえか!嫌な予感ゴリゴリ当たっとるわ。
「父さんは大丈夫なんですか?」
「ああ。軽傷だったから、もう治療は済んでいるよ。」
いや、まあ当たり前だよなあ。確認していなかった父さんが悪い。
「君の傷具合を見るに、たぶん今後1ヶ月ほどはここで安静にしてリハビリをしないといけないだろうね。」
だよなあ。できれば今すぐにでも修行に戻りたいのだが。
まあ、なったものはしょうがない。
「君の家族を呼んでくる。安静にしててくれ。」
「はい。」
治癒士が出ていってから考え事をしていた。
あれはなんだったんだろう。一瞬でジェネラルゴブリンが潰れてしまった。
まあ、今考えてもしょうがない。治療に専念しよう。
——
少し経った頃。
「ロイ!」
エイド、フィオナ、パーティーの仲間、そしてルークが来てくれた。
「大丈夫?怪我は痛くない?」
「ごめんな。俺が森へなんか連れて行ったから。」
「大丈夫だよ。いい経験になった。もちろん怪我は痛いけど、大丈夫!」
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だって!怪我が治ったらまた修行しようぜ!」
そう言って笑ってみせる。
だが、エイドたちの表情はどこか晴れないところもあった。
なんだ?まあ、とりあえず治療に専念しよう。
——
同時刻、王都。
王都中心部にある、とある建物。
普段なら静寂に包まれているはずの部屋には、七人の人間が集まっていた。
部屋の中心には調査官が立っていた。
「七星護賢様。ご報告します。」
調査官は頭を深く下げる。
「ノルディア近郊、ユグドラの大樹林にて、本来出現しないはずのジェネラルゴブリンの存在が確認されました。」
「……ジェネラルゴブリン?」
一人が反応する。
「ジェネラルゴブリンは上級の中でも魔災級に近い魔物だぞ。本当に出たのか?」
「はい。存在は確認できました。」
「討伐隊は出したのか?」
「はい。討伐隊は派遣しました。……ですが、1つ問題があります。」
「問題だと?」
「はい。討伐されたのです。しかしその死体は押し潰されていました。」
その瞬間部屋の空気が変わる。
「誰が討伐したんだ。」
調査官は少し間をおいて答える。
「それが……不明なのです。」
「不明だと?」
「現場に残されていたのは、大きく陥没した地面。押しつぶされたジェネラルゴブリンの死体だけでした。」
沈黙が広がる。
「押しつぶした……?ありえない。」
一人が呟く。
「はい。しかし、更に不可解な点があります。」
「なんだ。」
「現場には魔法の痕跡が残されていました。」
「魔法?」
「ですが、既存の魔法術式と一致する魔法はありませんでした。」
七人の表情が変わる。
「まさか……」
「はい。」
調査官は頷く。
「《固有魔法》アスペクトマジックの可能性があります。」
部屋に静寂が落ちる。
「アスペクトマジック……」
「1000人に1人授かるかどうかの極めて特殊な魔法。発現する魔法は人によって異なり、二つと存在しないと言われるもの。」
「それを……誰が使った?」
その問いに、調査官は答える。
「現在分かっているのは、ノルディア近郊にある村に住んでいる一人の少年です。」
「少年……か。名前は何だ?」
「ロイ・アルクディスというらしいです。」
七人は黙り込む。
「そうか。分かった。その少年に監視をつけろ。」
低い声が響いた。
「監視……ですか?」
「彼が何者なのか、確かめる必要がある。これは命令だ。」
「はっ。承知いたしました。七星護賢の名の下に。」
調査官は一礼し、静かに部屋を後にした。
「はっ!面白くなってきたじゃねえか。退屈してたところなんだ。」
一人の男が、口元を吊り上げる。
「少しは言葉を慎め。七星護賢としての自覚を持て。」
隣りにいる人物が冷静に言い放つ。
「はいはい。わかりましたよ。」
男は肩をすくめ、軽く笑う。
「……では、解散だ。」
その一言を合図に、七人は静かに席を立つ。
次の瞬間、その姿はまるで最初からそこにいなかったかのように消えていった。
——
ノルディア冒険者ギルド二階。治療室。
「はぁ……」
窓から差し込む夕日を見ながら、小さく息を吐く。
……待て待て。
なんかこれだと俺が、夕日を見て黄昏れてるナルシストみたいな感じがするんですけど!?
俺はナルシストじゃないよ!?勘違いすんなよ!?
外では冒険者たちが今日狩ってきた魔物の話で笑い合っている。
俺はまだベッドから起き上がることすらできない。
当たり前だよな?1日で治るわけないもんな?
「早く治さないとな……修行で遅れを取るわけにはいかないし。」
とはいえ、あの紫色の魔法陣は何だったのだろうか。
考えても考えても答えは出ない。
まあいい。当分はこの治療室からは出られないだろう。
エイドたちに本を持ってきてもらおう。これからしばらく暇になりそうだ。
こうして、俺の治療生活が始まった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
面白いと思っていただけたら、ぜひ下の☆☆☆☆☆から評価していただけると、とても励みになります!




