第六話「目覚めた力」
大樹林に入ってから少し時間がたった。
さっきまでいた森小屋の空気とは全く持って違う。
いつ何時魔物に襲われるかわからない恐怖などがありなんともいえない重々しい空気だ。
今のところは問題はないが、どんな魔物がいるのだろうか。
異世界系でよくいるゴブリンとか出ちゃったりするのかな。
これが、生まれて初めての実戦。
今まで何度も剣を振ってきた。
何度も修行をしてきた。
でも、相手が魔獣となれば話は違う。
俺は腰にある剣へ手を伸ばした。
ユグドラの大樹林に入ってから、エイドらの表情が変わった。
「ここは森じゃない。魔物の住処だ。気を抜いたらすぐ死ぬぞ。」
「まあ、私たちがいるから大丈夫だけどな。」
「いつも入ってるからって油断したらすぐおだぶつだからな。」
パーティーに緊張の空気が走っている。
魔物狩りってこんなにも怖いものだったのか。
イメージではわちゃわちゃしながらも敵をどんどんなぎ倒していくっていうイメージだったけど。
突然、エイドがピタッと止まった。
「待て。魔物がいる。あれは、たぶんフォークラビットだ。」
「父さん、あれはうさぎなの?」
「いやうさぎに見えるが、うさぎから変化し、凶暴になったやつだ。」
だよな。うさぎにしては目が赤いし、なぜか角も生えているし。たぶん立ったら体長が40cm位はあるんじゃないか?
この世界の魔物ってこんなものがうじゃうじゃいるのか?
考えるだけで怖いわ。
「フォークラビットは群れで行動する魔物だ。どうやら今回は群れとはぐれた個体らしい。よし、ロイ。あいつを狩ってこい。大丈夫。ピンチになったら助ける。」
「わかった……」
いやいや、急に狩れと言われてもなあ。
まあやってみるっきゃない。
いま、あのうさぎは草を食べている途中だ。だからそろりそろりと近づいて……
今だ!
「ふっ!」
地面を蹴る。一直線に駆け抜け、振り下ろした剣がフォークラビットの頭を正確に捉えた。
「よくやった!初めてにしてはいい出来だ。そして、この角とか皮をギルドに持っていってお金に変えてもらうんだ。」
そう言うとエイドたちはフォークラビットの角や皮を取り始めた。
くっそグロいんですけど……
「思ったんだけど父さん。僕は冒険者ギルドに登録しなくてよかったの?」
「ああ。大丈夫だ。……というよりかは基本的には満10歳になるまでは登録しちゃいけないんだ。なぜ10歳ならいいんだというのは……まあまた今度話そう。」
なんか引っかかる終わり方だな。
「なら10歳未満でこんな森に入っちゃっていいの?」
「ああ。一定数の大人がいれば大丈夫だ。たぶん……。」
いやいや、本当に大丈夫なのか?
ガルフォードがエイドに小声で言う。
「というかエイド、お前息子にどんな修行させてんだ?あの太刀は子供が振るような太刀じゃねえ。」
「そうだろう。そうだろう。この俺が鍛えたんだからな!」
「褒めてるんじゃない!あいつに無理をさせるなという意味だ!あいつもまだ6歳。あんまり無理させんじゃねえよ。」
「わかってる。あいつには強くなってほしい。」
「なんの話ししてるの?」
「いや、ただの世間話だ。」
なんとも怪しかったがまあ良いとしよう。まずは狩りに集中することが大事だ。
——
それから数時間。
フォークラビットやホーンラット、小型の魔物を何体か討伐しながら森を進んだ。
初めての実戦だったが、エイドたちの助けもあり徐々に戦いにも慣れていく。
「よし。そろそろ良いかな。今日は結構な収穫だ。」
「結構な量になった。そろそろ帰ろう。」
エイドたちが荷物をまとめ、来た道を引き返そうとした時だった。
ガサッ。
森の少し奥から、草を踏む音がした。
「……しっ。止まれ。」
「父さん、どうしたんですか?」
小声で言う。
どうしたのだろうか。魔物がいることはわかるが、こんなに緊張したのは初めてだ。
ガサッ……ガサガサッ。
音は1つじゃない。
「囲まれたか?」
全員が戦闘態勢に入る。
そして次の瞬間。
茂みをかき分け、一体の巨大な魔物が姿を表す。
「まさか、そんな。ジェネラルゴブリンがいるなんて!」
……大きすぎる。威圧感が半端ない。
「ロイ!下がっていろ!ガルフォード!行くぞ!」
「本気か?ジェネラルゴブリンに挑むなんて無謀だ!」
「だけど今はやるしかない!エレノア!サポートを頼む!キルバートは怪我をしたら回復をしてくれ!」
そしてエイドとガルフォードが駆け出す。
エイドの剣が火花を散らす。
しかし刃は皮膚を浅く裂くだけ。
ガルフォードの渾身の一撃もジェネラルゴブリンは腕一本で受け止め、そのまま弾き返した。
まずい、まずいぞ。このままじゃ全滅しちまう!俺も参戦しなきゃ。
「ふっ!」
「ロイ!やめろ!お前がかなう相手じゃない!」
俺は最速で剣を滑らせゴブリンの懐に飛び込み斬りかかる。だが、切り傷すらつかない。
そして、巨大な拳が腹部にめり込む。
「がっ……!」
衝撃で肺の空気が押し出され、呼吸ができない。
そのまま俺の体は木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされた。
何本もの木に叩きつけられ、ようやく止まった。
「くっそ!まずい。たぶん左腕と肋骨が折れたな。」
痛い。苦しい。辛い。血が出ている。意識も朦朧としている。とてもじゃないが立てる状況じゃない。
だが、無情にもジェネラルゴブリンが追いかけてきた。
なんで追ってきたんだ!エイドやガルフォードがいたんじゃなかったのか!
まさか……そんなはずはない。
「グアァァァァァオ!」
怖い。足がすくむ。
だが俺はここで人生を終えるわけにはいかない!
「絶対に生き残ってやる!」
その瞬間。
ジェネラルゴブリンの足元に、巨大な紫色の魔法陣が静かに浮かび上がった。
その巨体が重力に押さえつけられ、膝をつく。
「グ、ガァァァァァッ!?」
巨体が地面へと叩きつけられ、大地が大きく陥没した。
「……やった、のか……?」
全身から力が抜ける。
視界がぼやけ、意識が朦朧としてくる。
「ロイ!ロイ!」
エイドの声が聞こえながら意識が途絶えていった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
面白いと思っていただけたら、ぜひ下の☆☆☆☆☆から評価していただけると、とても励みになります!




