第五話「始まりの剣」
あの模擬戦から3ヶ月。
今も相変わらず修行を続けている。
ルークとの勝負以来、攻め方だけではなく防御の仕方などにも力を入れるようになっていた。
——
カンッ!
カンカンッ!
木刀の交わる音が聞こえてくる。
「ふっ!」
「まだまだ!」
ロイの木刀がルークの胴を捉え、倒す。
「そこまで!」
「相変わらずロイは強いな。」
「お前と修行してるからだよ。」
あの模擬戦をしてから自分自身の弱みがわかり、そこから弱点を克服したことで剣術は目に見えて伸びていった。5回中4回ほど勝てるようになってきた。
「お前この3ヶ月で一気に強くなったよな。どうやって強くなったのか教えてくれよ!」
「うーん。そんな事言われてもなあ。強いて言えば自分の弱みを知ってそこを直す努力をすればそのうち強くなるっていうか。」
「それができたら苦労しねえんだよ!」
と笑いながらルークは言った。
自分でも感じる。魔法を使わず、純粋な肉体と剣術だけで少しずつ強くなっている。
その実感が、何より嬉しかった。
——
その日の夕食。
「ロイ。そろそろ実践をしてみるか?」
と、急に言い始めた。
「どこに行くの?」
「ユグドラの大樹林だ。」
ユグドラの大樹林とは。
いつもエイドが狩りに行っているここらへんの森のことらしい。
「え?行っていいの?母さんいいの?」
「本当は不安な部分もあるけれど、エイドがついていてくれるなら大丈夫かなと思ったからね。」
まさか、あのフィオナが許可をしてくれるとは。
俺の成長を喜んでくれているらしい。
「よし!明日から行こう!……と言いたいところなんだが、ロイ用の剣とか防具、必要なものを揃えなきゃいけないから明日は1日買い物に出かけるぞ。」
「わかった!」
よっしゃあ!初めて自分の剣を持てる!
どんな剣なんだろうか?
考えるだけで胸が高鳴った。
明日は町に行く。
俺だけの剣を手に入れるために。
そう考えながら眠りについた。
——
次の日。
朝は早起きだった。
「気をつけていってきてね。町を楽しんでおいで!」
フィオナが送りに出してくれた。
馬車に乗り、この村の少し先にある町に向かっていった。
「着いたぞ!」
エイドの声で馬車が止まる。
俺は馬車から子供のように飛び降りた。
……まあ、子供なんだがな。
「うわあ……!」
目の前には石畳の道が広がり、多くの人が行き交っている。
行商人の客を呼ぶ声が聞こえ、鍛冶屋からは金属を打つ音が聞こえた。
俺が住んでいる村とは大違いだ。
「ここがオスクディア最北端の町、ノルディアだ。ここには日常品から武器を扱う店まで何でも揃ってるぞ!」
エイドが自慢げに言う。
なぜ、エイドが自慢げなのかは置いといて、とりあえず何もかもが桁違いだ。
「すごい!めっちゃすごい!」
「俺も初めてここに来たときはびっくりしたよ。だがな、王都はもっとすごいんだ!」
「いつか行ってみたい!」
王都か。将来行くことになりそうなところだ。今から楽しみに待っておこう。
「ところで父さん。まずは何を買うの?」
「まずはメインの剣だな。2本買おう。今から使う用と、将来デカくなった時用だな。」
エイドさん、太っ腹!剣は多分結構な値段するだろう。だが、2本も買ってくれると言ってくれたのだ。
ありがたくいただこう。
それからエイドの行きつけという鍛冶屋に向かった。
鍛冶屋に向かっている途中にも目を引くものがたくさんあった。
女性が好きそうなネックレスや宝石、杖まで並んでいた。
エイドが言った通り、本当になんでもある。
周りを見渡しているうちに目的の鍛冶屋についた。
鍛冶屋もすごい。そこら中に剣が並んでいる。
大きい剣から、子供用の剣まで。
「よう!ガイル!」
「おお久しぶりじゃねえかエイド。そこにいるちっこいのは息子か?」
おお。なんかいかにもって感じの人だな。
鍛冶師と聞くと、ドワーフみたいなものをイメージしていたが、普通の人間だ。
だが、筋肉がエグい。さすが鍛冶師と言うべきか。
「ああそうだ。ロイっていうんだ。」
「はじめましてガイルさん。」
「はじめましてだな。鍛冶師のガイルだ。エイドとは長い付き合いになる。ところで、今日はなんの用事だ?」
「ロイの剣を買いたくてな。これから使う用と将来のための2本だ。」
「こんな小さいやつに剣をか?」
小さいやつとなんだ。小さいやつとは。
俺、同い年の中ではまあまあでかいぞ?
「ああ。見かけによらず結構強いんだぞ。」
「そうか。まあエイドのことだから、やばい修行をさせてそうだがな。」
「そんなこと言うなよ。」
エイドとガイルが昔話に花を咲かせていると、思い出したように言った。
「ああ、そうだ。ロイの剣だったな。ちょうどいいのがあるぜ。」
そう言うと、店の表ではなく裏に連れてこられた。
「ちょうど今日作り終わったやつだ。」
そこには、見た目こそ質素ではあるが長年の技術が込められた子供用の剣があった。
手に取ってみる。
そうすると、初めて持ったとは思えないほどにピッタリと手の中に収まった。
「どうだ?」
「これにする!これが一番いい!」
「よし。じゃあこれでいいな。将来のための剣は俺が選んでおくから外に出ていなさい。」
「はい!」
自分でもびっくりした。
あんなに手の中にすっぽりとハマる剣があるなんて。
あの剣は、一生の相棒になりそうだ。
そうこうしていると、エイドが出てきた。
「さあ、あとは防具とかだな。あとフィオナからおつかいも頼まれているからそれもいかなきゃな。」
「防具ってどんな物?」
「基本的には、服の下に着て切られても大丈夫なようにとかかな。」
どんなものなのだろうか。とても楽しみである。
——
防具屋についた。
あたりを見渡すと、革製なものから鉄でできた鎧などがある。
いろいろな防具を扱っているもんだ。
「こんにちは。息子の防具を探していて。良いのはありますか?」
「はい。あるよ!息子さんちょっとこっちに来てもらってもいいかい?」
「はい」
俺が店主の近くに行くと、メジャーらしきもので体を図っていた。
これで採寸を取り俺にピッタリとあった防具を探してくれるらしい。
「これが良いわね。来てみてごらんなさい。」
「おおぴったりだ。」
見事にぴったりだった。これで歩いたり走ったりしても問題はないだろう。
「これ買います。」
そうして俺の防具の買い物は終わった。
——
残りの必要なものを買い、馬車に乗った。
「どうだった?初めての町は。」
「すごかった。今まで見たことのない物がいっぱいあってとても楽しかった!」
「そうか!それは良かった!明日は大樹林に行って魔物を狩る。明日は早起きだから家に帰ったらすぐに寝なさい。」
「うん!」
そんな話をしているうちに家についてしまった。
馬車を降りたらフィオナが迎えに来てくれていた。
「ロイ!初めての町はどうだった?」
「めっちゃ楽しかった!」
「それは良かった!さあ、明日は大樹林へ行くんでしょ?ご飯食べて早く寝なさい!」
「うん。わかった。」
そうして一日が終わった。
——
次の日
「よし。準備できたな。」
「うん!」
「よし。まずは大樹林の近くにある小屋に行くぞ。」
そうして森小屋に向かっていった。
——
森小屋に着くとノックをしながら言った。
「おーい。みんな来てるか?」
ドアを開け、入る。
見ると、そこには3人がいた。
「よお。みんな。」
「遅いわよ。みんな結構待ってたんだからね?」
そこには赤色の髪で、20代くらいの綺麗な女性がいた。
「悪い悪い。ちょっとくらいでそんなにキレんなよ!」
「まあ良いけどさ。そこにいるのが噂のロイ君?」
「はじめまして。ロイ・アルクディスです。」
「はじめまして。私は魔術師のエレノア・エルクリスよ。」
おお!初めての魔術師に出会った!
魔術師って本当にいるんだな。
「僕はキルバート・ヴァイス。治癒士だよ。」
しかも治癒士まで!すごい!
「俺はガルフォード・ベルンだ。お前の親父と同じ剣士だ。よろしくな。」
ガルフォードは見るからに屈強で大男である。
少し怖い。あんな人に殴られたら一発でお陀仏になりそうだ。
「よし。このメンバーで大樹林へ入る。今回はロイがメインだ。基本的にはロイが自分で戦えるようにしろよ?」
「わかったわ。」
「おーけー」
「承知した。」
俺のためにそんなことまで。ありがたいとしか言いようがないな。
「よし。じゃあユグドラの大樹林に行くぞ!」
「おーー!」
そうして、俺達はユグドラの大樹林へ入っていった。
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