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第四話「努力の成果」

 6歳になった。


 この1年、大きな変化があった。

 家に道場ができたのだ。

 もちろん師匠は鬼畜親父のエイドだ。

 なぜ道場ができたのか。

 それはだな、あれから毎日剣の修行をしていた。なのでもちろん目立つわけだ。

 そうしたら村の子供達もやりたいと言い始めて、庭では狭くなってしまったのだ。

 なので、新しく道場を作ったのだ。

 

 それからというもの、死ぬんじゃないかというくらいの修行してきた。

 毎回毎回、エイドが力加減をミスるせいで身体中があざだらけだ。

 だが、その厳しい修行のおかげで、俺の剣筋は少しずつエイドのものに近づいていた。


 修行は決して楽しいもの、ではなかった。

 それでも、苦痛だと思ったことは一度もない。

 成長をひしひしと感じるのもそうだが、第二の人生初めての友達ができたのだ。

 道場ができたことにより、子供達が来るので必然的にできた。

 この世界で初めての友達ができたのは本当に嬉しい!


 そんなことを考えながらみんなと道場で修行をしていると、エイドから招集がかかった。


「よし。集まったな。今日は基礎訓練は一切しない。だが、日頃の努力の成果を見るために模擬戦を行ってもらう。男は男と。女は女と組め。1組ずつ見てやる。」


 エイドはこんな硬い言い方をしているが、師匠ズラをしているだけだ。俺の体ばっこばっこ殴ってたくせによ。

 まあいい。望むところだ。この1年間の成果が発揮できる!

 俺は唯一無二の友達でもあり、最大のライバルでもあるルークと模擬戦をすることになった。

 

 みんな、本気でやり合っている。

 今までの努力を少しも惜しまずに出している。


「次!ロイとルーク」

 ロイ&ルーク「はい!」

「あの二人がこの道場で一番強いらしいよ。」

 コソコソ話はやめてくれ。全部丸聞こえだ。

 ちょっと照れちまうじゃねえか。


「構え!始め!」

 俺とルークは少し横にずれながらゆっくりと見合っている。

「いくぜ!」

 次の瞬間、本気で突進してきて剣を振りかぶってきた。

 あの時の俺なら馬鹿正直に受け止めていただろう。

 だが今の俺は違う。

 防御の体制になり剣を受け止める。そして、剣を滑らせ、相手の体勢を崩す。

 その瞬間を狙って木剣を振り抜く。

 だが————

「読んでたぜ、ロイ!」

 ルークは無理やり体勢を戻し、俺の一撃を受け止めた。

 ……やっぱり、こいつは強い。

 


 まだ間合いを取る。


 このままじゃダメだ。

 ルークはどんな攻撃を受けても、防御が完璧だ。


 ならば、どうするか。


 防御する暇すら与えないほどの速度で攻める。

 俺はエイドとの修行で一度だけ見た技を思い出す。

 最初にエイドから受けた、あの一撃。


「ふぅ……」


 息を整える。

 

 そして――——


「はぁ!」


 地面を蹴った。

 今までの中で最速の踏み込み。

 一瞬でルークとの距離を詰める。

 そして、剣を滑らせる。

 

 カンッ!

 

 防がれた。

 だが、終わらない。

 

 カンッ!

 カンッ!

 カンッ!

 右、左、下。

 

 連続で木剣を叩き込む。


 防御の隙間を探すように、何度も何度も攻め続ける。

 

「速い……!」

 

 ルークの表情がわずかに変わる。

 

 だが――——


「くそっ!」

 これでも崩れない。

 どれだけ速く振っても、ルークはすべて受け止める。


 そして──——

 

 カンッ!!

 強烈な一撃で、俺の木刀は高く宙を舞った。


「勝負ありだな。」

 

 ルークの表情がわずかに緩む。

 

 ……甘い。


「まだ終わってない!」


 地面を強く蹴り、その勢いのまま回し蹴りを叩き込む。

 ドゴッ!


「ぐっ……!」


 完全に意表を突かれたルークは、そのまま大きく吹き飛んだ。


「勝負あり!勝者ロイ! さすが俺の息子だ。」

 

 道場中に大きな歓声と拍手が響いていた。

 ルークを見てみると気絶していた。

 

「ロイ、ルークを寝かせといてくれ」

「わかった!」

 

 この、俺の力加減の出来なさは親譲りらしい。


 この戦いのあとは、他の生徒の模擬戦を見ていた。

 一人一人の癖、体の使い方をよーく観察する。


 全員の模擬戦が終わったあと、みんなの前でエイドに呼ばれる。

「ロイ。こっちにこい。」

 ……おいおい、あんさん。

 嫌な予感しかしないんですが!?

 やばいボコられる未来しか見えない!

 どうにかして逃げ出す方法……ない……

 

「は、はい……」

「ロイ。お前はこの一年で見違えるほど成長した。だが、並の剣士と比べたらまだまだだ。俺にもまだ及ばない。来い!」

 

 うん……意味がわからない!なぜ?なぜなんだ?

 この流れ、絶対褒められるやつだっただろ!

 なんで戦うことになってるんだよ!

 

「はい……。行きます!」


 今回はルークとの模擬戦で学んだ。

 速さだけじゃ勝てない。

 ならば、今度は違う戦い方を見せる。


 エイドは静かに木刀を構えている。


「ふっ!」

 勢いよく地面を蹴る。だが今回はルークとの模擬戦とは違う。加減をしてある。


 そして頭めがけ振り下ろす。

 だが、軽々と止められる。

「想定内!」


 このまま次に移行する。

 横腹、胴、足元へと狙いを変えながら攻め立てる。

 エイドはその場から一歩も動いていない。


「終わりか?」

「まだだ!」


 フェイントを入れる。

 右へ斬ると見せかけ、すぐに手首を返し左へ。

 今までの俺ならできなかった動きだ。

「ほぅ。」

 初めてエイドの口から感心したような声が漏れる。

 ……よし!


 その瞬間だった。

「だが、甘い。」


 エイドがたった一歩踏み込む。たった一歩だ。

 ただそれだけで空気が変わる。

 次の瞬きをするまもなく気づいた時には木刀は手から外れていた。


 気づけば、エイドの木刀が俺の喉元で止まっていた。


「勝負あり、だな。」

「……参りました。」


 道場にいた全員が静まり返っていた。

 たった一歩。

 その一歩だけで、俺とエイドとの実力差を思い知らされた。


「今日の稽古はここまで!」

 

 エイドの一声で、張り詰めていた空気が一気に緩む。

 子供たちは口々に感想を話しながら、それぞれ家へ帰っていった。

 俺も木刀を片付け、家の中へ戻る。


 ——夕食。


「ロイー! 今日、ルークに勝ったらしいわね! やったじゃない!」

「う、うん! 父さんにはボコボコにされたけどね……」

「辛くなったら、いつでも言っていいのよ。」

「大丈夫だよ!」

 

 こういう時のフィオナは、本当に優しい。

 一方のエイドはというと、気まずそうに黙々と夕食を食べていた。

 

 ……たぶん、あとでフィオナに怒られたんだろう。

 少しだけ同情してやろう。

 だが、1つだけ気になることがある。

 普段のエイドは、どこにでもいる優しい父親だ。

 それなのに木刀を握った瞬間、人が変わったように強くなる。


 

 父さんは、一体何者なんだ……

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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