第二話「異世界の常識」
あの決意を固めてから約一年が経った。
俺は2歳になっていた。
この世界での生活にもだいぶ慣れてきていた。
体もしっかりしてきて、この世界の文字も少しずつ読めるようになってきた。
言葉も喋れるようになり、やっと意思疎通ができた。
最近は文字を覚えるために、家にある本を読むことが多い。
前世では仕事ばかりで、読書なんてほとんどしたことがなかった。
この家には本の数こそ多くないが、どれも興味深いものばかりだ。
そして、その中に一冊、この世界について書かれた本を見つけた。
「家庭用 世界の基礎知識?」
こんな本があるのか。
家庭用ということは、どこの家にも一冊は置いてあるような本なのだろうか。
……まあ、考えていても仕方ない。
早速ページをめくってみる。
一通り読み終え、俺はこの世界について多くのことを知った。
本の内容を簡単にまとめると、こんな感じだ。
この世界には3つの国がある。
魔導国家「オスクディア」
武導国家「ヴァルガス」
神聖王国「セレスガディア」
名前の通り、
オスクディアでは基礎魔法の研究と教育が盛んに行われている。
ヴァルガスでは武術や剣術を極める文化が栄えている。
セレスガディアでは神への信仰によって扱う神聖魔法が受け継がれている。
基本的にこの3カ国は良好な関係を築いており、どこの国にも剣士や魔術師がいるらしい。
そして、この村は魔導国家「オスクディア」の端に位置しているらしい。
ってことは、魔法学べんじゃん!っしゃ!
そして、とても興味深い項目を見つけた。
前にも言った通り、この世界には魔法が存在する。
魔法ってめちゃくちゃワクワクするじゃないか。
そんなことを思いながら、夢中で読み進めていると、特に興味深い項目が目に入った。
1.基本魔法について。
本によると、魔法は基本的に4つに分類されるらしい。
1. 生活魔法
2. 攻撃魔法
3. 治癒魔法
4. 固有魔法
……ここまではいい。
生活魔法、攻撃魔法、治癒魔法は名前だけで何となく想像がつく。
このすべてに共通するものは属性があるということだ。
基本属性は、火、水、土、風、雷となる。
人は生まれつき、それぞ異なる属性適性を持っている。
適性が高いほど習得に時間はかからず、ぞこまで魔力も要さない。
だが、適正が低いと習得までに時間を要し、魔力も必要となる。
自分の属性適性は魔道具で図ることができるらしい。
いやいや、もう異世界って感じじゃん!俺ってどんな属性なんだろう?
火かな?水かな?考えるだけでワクワクしてくる!
セレスガディアの神聖魔法は神を信仰して得るからこの中には入らないらしい。
ヴァルガスでは、基本的な魔法は使えるが剣術、武術を極める文化があるらしい。
ほぉ。面白い文化があるもんだ。
だが、4つ目の『固有魔法』とは一体何なんだ?
俺は思わず、次のページをめくった。
固有魔法とは、この世に生まれた生命の魂に刻まれた、他者には決して再現できない、自分だけの魔法である。
その発現率は約千人に一人。
多くは命の危機や極限状態に陥った際に発現するとされている。
しかし、発現条件を満たせず、一生その力に目覚めないまま人生を終える者も少なくない。
なんかかっちょえぇぇぇ!いやいや、固有魔法ってめっちゃええやん!自分だけの魔法ってもう、なんか、もう!
俺も将来、固有魔法でるかなーと考えながら次のページをめくった。
2.魔力、杖または魔剣について。
魔法を扱うには魔力が必要であり、杖または魔剣を媒介とすることで、本来の力を発揮できる。
魔力は元々備わっているが鍛えることで魔力を増やすことができる。だが、上限はもちろんある。
杖と剣は必須というわけではない。もちろん杖なし、剣なしでも魔法は発動できるが生活魔法に限られる。
ならば母が使っていた『マジックファイア』は生活魔法なのだろう。杖とかなかったし。
3.魔法陣について。
魔法発動には魔法陣が必要らしい。
といっても、魔法陣はペンで書いたりはしない。魔法を発動した瞬間、足元や杖の先に自動で展開されるらしい。
……いや、めっちゃかっこいいじゃん。
あと、こんな記述もあった。
各国には、国公認の学院が設立されている。
その理由は、この世界に存在する魔物への対抗だ。
学院では戦う術を学び、多くの冒険者を育成しているらしい。
やはり、魔法があるということは魔物もいるのか。
学院と聞くと、前世の小学校や中学校、高校のようなものを思い浮かべた。
だが、どうやら少し違うらしい。
この世界の学院は六年制で、魔法や剣術、武術など、それぞれの国の特色に合わせた教育が行われるという。
へぇ……。
六年間か。前世に比べたらどうってことはないが。
ってことは、俺も将来この学院に通うことになるのかな。
なんだか、今から少し楽しみになってきた。
と、ちょうど本を閉じた時に父が帰ってきた。
「父さん!お帰りなさい!」
「おぉ!ロイ。ただいま。」
こうして改めて見ると、エイドはかなりいい体をしている。だが今日はやけに汗だくだ。
そういえばエイドはなんの仕事をしているのだろうか。聞いたことがない。
「父さん!」
「なんだいロイ」
「父さんはなんの仕事をしているの?」
「魔物狩りさ!村の周辺や山に現れる魔物を討伐して、その素材や魔石を冒険者ギルドに納品すると、お金がもらえるんだ。」
冒険者ギルド!いやいや、異世界のド定番じゃないですか!今日はテンションが上がることばっかりだな!
「こう見えてお父さん、とても良い剣士なのよ?」
母のフィオナが台所から話しかけてくる。
剣士?この国では剣術は習えないはずだ。どういうことだ?
「でも、父さん。この国って、剣術はあまり教えてないんじゃないの?」
エイドは少し驚いたように目を丸くし、それから優しく笑った。
「おぉ。よく知ってるじゃないか。父さんは昔、武導国家ヴァルガスで剣術を学んでいたんだ。生まれも育ちもヴァルガスさ。」
「だけど、いろいろあってお母さんと出会ってここに来たってわけよ。」
フィオナが微笑みながらそう付け加えた。
へぇ……。魔法だけじゃなく、剣の道を極めた人もいるのか。
この世界は、俺が思っていた以上に奥が深いらしい。
「でも、父さんは魔法を使えるの?」
「いや、まあ使えるっちゃ使えるんだが、ほとんど使わなくてな。俺は剣一筋なんだ。」
なんだよ。かっけぇじゃねえかよ。
「父さん!大きくなったら剣術を教えてください!」
「わかったよ。大きくなったらな。」
そういうと、エイドは笑いながらロイの頭を撫でた。
「というか、よくそんなこと知ってるな!」
「この子ったら、朝からずっと本を読んでるのよ?」
「ははっ!将来は学者かなんかにでもなりそうだな!」
いや、俺がなりたいのは学者なんかじゃない。
魔法も剣も、全部学んでやる。
この世界には、まだ俺の知らないことが山ほどある。
だからこそ、その全部をこの目で見てみたい。
そして、この異世界で最高の人生を掴んでやるんだ。
……よし。まずは大きくなろう。
話はそれからだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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