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第一話「そうして俺は生まれた」

記念すべき本編第1話です!ぜひ楽しんでください!

……ん?

 なんだ、ここは。

 何も見えない。何も聞こえない。

 だが、一つだけ分かることがある。

 暖かい。


 不思議と心が落ち着くような、優しい温もりに包まれていた。

 俺は確か、後輩の佐藤と飲んだ帰り、コンビニへ向かう途中 で……。


 死んだ、はずだ。

 なのに、意識はある。

 死んだにしては、おかしくないか?

 その時だった。

 突然、眩しい光が差し込む。

「うわっ!」

 次の瞬間、体が強い力で押し出されるような感覚に襲われた。

 

「おぎゃあ! おぎゃあ!」

 俺の口から聞こえたのは、人間の赤ん坊の泣き声だった。


「生まれたぞ! フィオナ!」

「生まれてきてくれてありがとう……ロイ。」

 

 恐る恐る目を開ける。

 そこには、思わず見惚れてしまうほど美しい女性がいた。

 その隣には、たくましい体つきをした男が立っている。

 男は女性の手を優しく握りながら、安心したような笑みを浮かべ、俺を見つめていた。


 ……誰だ?

 そう思った瞬間、体を動かそうとする。

だが、動かない。

腕も、足も、首も。

まるで自分の体ではないように、何一つ思い通りにならなかった。

俺にできることは、自分の意思とは関係なく泣き続けることだけ。


「おぎゃあ……おぎゃあ……!」

その泣き声を最後に、俺の意識は再び深い闇へと沈んでいった。


——


俺がこの世に生まれ落ちてから 一、二ヶ月ほどが経った頃か。

ようやくこの状況を理解できた。俺はいわゆる異世界転生というものをしたのだろう。

最初に目を開けた時に見た二人が、俺の母親と父親らしい。

ちなみに俺はロイ•アルクディスと名付けられた。

母親はフィオナ、父親はエイドという名前らしい。

え?なぜ生後約2ヶ月で言葉が理解できるのかって?

それはこの言語が日本語と同じだからだ。文字の形態などは全く違うのだが言葉だけは同じなのだ。

こんなご都合展開あるか?と思ったそこの君!

安心してくれ。俺も同じことを思った。

うぅん。失礼。まぁ、文字に関してはもう少し成長してから覚えよう。

今は成長することが一番だ。探検はそれからだ。


——


そこからまた、半年ほどが経った。

最近になって、ようやくはいはいを卒業できた。

両親は相変わらず仲が良く、俺が初めて立った時には、

「ロイー!立てるようになったのね!いい子だわ!」

と言いながら父と一緒に俺のことをハグしてくれた。

これまではずっとはいはいで移動していたのでこの成長は地味に大きい。

文字はいまだに読めない。歩けるようになったとしてもまだまだ子供だ。

歩けるようになり、少しだけ外に出てみた。外に出たと言っても、玄関から覗く程度なのだが。

この周辺の立地はとても田舎で山の高いところにある。

周りには畑や、果物の実る木があり、いかにも異世界!という風景が広がっている。

 ここは小さな村らしく、ところどころに家が建っている。

派手さはない。だが、不思議と落ち着く景色だった。

今までパソコンやスマホなどのデジタルに囲まれ、社会の波に揉まれながら生きてきた俺にとって、この場所は第二の人生を歩むには最高の環境だった。


そんなことを考えているうちに、いつの間にか外は夕暮れに染まっていた。

子供の体だからだろうか。時間が過ぎるのが驚くほど早く感じる。

そう思いながら、玄関の隙間から外を眺めていると、母のフィオナが台所へ向かった。

 

「そろそろ夜ご飯を作らなきゃね。まずは火をつけないと」

だが、不思議なことに火打ち石やライターのような道具は見当たらない。

「《マジックファイア》」

フィオナがそう唱えると、人差し指の先に魔法陣と魔法陣の上にライターほどの小さな炎が灯る。

その炎を薪へと移すと、パチパチと音を立てながら火が燃え始めた。

 

……え?魔法?

今の魔法だよな?

しかも、戦うためではない。

生活のために、ごく当たり前のように使われている。

俺はその光景に、ただただ愕然としていた。

 

そうしているうちに父のエイドが帰ってきて夕食の時間となった。

とはいえ、まだ子供なので固形物などは食べられないし、自分で食べることもできない。

なので、母に食べさせてもらっている。

三十四歳のおっさんだった俺が、こんな若い母親に食べさせてもらっていると思うと、恥ずかしいというか、なんとも複雑な気分だ。

 

「エイド、ロイったらね、外に興味津々なのよ。」

「いいじゃないか。今から外を知っておけば自分で外に出た時に心配しなくて済むじゃないか。」

「だけどねぇ?私は心配なのよ。歩けるようになってすぐ飛び出ちゃうんじゃないかって。」

「大丈夫さ。ロイは賢いもんなー?」

そう言いながら俺の頭を撫でる。

俺の父はどんだけ自由奔放なんだか。

夕食も終わり、父と母に寝かしつけられる。


だが、俺は寝ない。

今日あった出来事を整理しなければならないのだ。

そう。

魔法だ。

昼間に見た、あの魔法。

前世でいう魔法とは、魔物や敵と戦うために使うものというイメージが強かった。

だが、この世界では違う。

魔法は生活の一部として、ごく当たり前に使われている。

火を起こし、水を出し、暮らしを支えるための力。

それほどまでに、この世界では魔法が身近な存在なのだろう。

……ということは。

魔法があるなら、魔物もいるのか?

もし本当にいるのなら、この平和そうな村にも現れるのだろうか。

それとも、もっと別の場所に生息しているのか。

考え始めると、次から次へと疑問が湧いてくる。

そうか、魔法か。

ここが改めて異世界だということを再確認した。

これからのことを考えるとより一層ワクワクしてくる。

よし、決めた。

これからは平凡な人生なんて送らない。

絶対に後悔しない。

この世界で最高の人生を掴んでやる!

そう思いながら眠りについた。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
Xの企画から来ました。 転生直後の赤ん坊視点、思い通りに動かない身体のもどかしさがリアルで面白かったです(笑)。「ご都合展開あるか?」と読者に先回りするノリも軽快で楽しいですね。生活魔法をごく当たり前…
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