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第九話「新たな歩み」

 あれから約一ヶ月が経った。

 今日、ついに退院することができる!

 

 この一ヶ月間楽しかったこともあったが、きつかったこともあった。


 エイドが持ってきてくれた魔導学院の入学試験用の本を読みながら少しでも知識をつけようと勉強を続けていた。

 ……だが、内容がとても難しい。特に魔法理論。あれは6歳で理解できる内容ではない。

 だが、幸い俺の治療を担当してくれた治癒士が魔導学院の卒業生で、リハビリの合間を見てわかりやすく勉強を教えてくれた。

 そのおかげで、大体は理解ができるようになった。


 このリハビリもなかなかきつかった。

 長い間、ベッドに横になっていたせいか、少しだけ筋肉が衰えてしまっていて最初の頃は立つことにさえ苦労した。

 

 毎日の努力のおかげで、今では怪我をする前までくらいに元気になった。


 そろそろエイドが迎えに来てくれる頃だ。

 

 ——


 少し時間が経った頃。

 

「ロイ!退院だってな!やっと家に帰れるな!」

 

 そう言いながらエイドが俺を抱き上げた。

 恥ずかしいな……


「うん!もう大丈夫だよ!元気いっぱいになった!」

「どうも、息子がお世話になりました。1ヶ月間治療してくださりありがとうございます。」


 エイドが治癒士さんに敬語を使った!地味に父さんが敬語を使っているところを見たのは初めてかもしれない。

 

「いえいえ。こちらこそ久しぶりに楽しかったですよ。次からはこんなことはないようにしてくださいね。」

「わかりました。本当にありがとうございました。」

「ロイくんも魔導学院の入学試験がんばってくださいね。」

「ありがとうございます!」


 相変わらず、この治癒士さんは優しい。

 この1ヶ月間辛いリハビリも笑顔で励ましてくれた。

 本当にお世話になった。

 

 それから治癒士さんとお別れをして冒険者ギルドをあとにした。


「ロイ。久しぶりの外だ。なにか欲しいものでもあるか?」


 欲しいものと言われても特にはない。とりあえず今は家に帰りたい。


「ううん。特にないかな。とりあえず今は家に帰りたい。」

「そうだよな。よし。家に帰ろう。」


 それから馬車に乗り、村に向かった。

 

 馬車がゆっくりと走り出す。

 窓の外に広がる景色を見ながら、俺は久しぶりの帰路に胸を躍らせていた。

 相変わらずこのノルディアの町には活気がありとてもきれいだ。

 

 ——


 それから数時間後。

 

 ケツが痛い。

 これから始まるのはどうかと思うが、痛いんだ。

 正直、馬車は長旅には向いていない。数時間乗っているだけでこんなにもケツが痛いのだから。


 まあ、それは置いとこう。そうこうしているうちに村へと帰ってきた。


「ロイ!お帰りなさい!やっと戻ってこれたわね!」


 フィオナが出迎えてくれた。


「うん!ただいま!」


 そう言いながら母さんに抱きついた。

 とても安心する。


「ロイ!遅かったじゃないか!みんな待ってたんだぞ!」


 そう言いながら出てきたのは、ルークと、道場の仲間たちだった。


「みんな!久しぶり!」

「おう!久しぶりだな!怪我の具合は大丈夫なのか?」

「うん!もう完全復活だよ!」

「良かった!ようし。ならもう修行していいってことだよな?」

「え……?」

「はやく道着に着替えてこい!初めて魔物と戦ったロイと模擬戦をしたいやつがいたくさんいるんだ!」


 おいおい、まじかよ。この前まで怪我でぶっ倒れてた人をこんなにも軽々しく修行に誘うか。

 まあ、体もなまってるだろうしちょうどいいんだがな。


 退院初日から修行。

 ……どうやらのんびりする暇はなさそうだな。

 ははは。きっつー。


 ——

 

 王都某所。


 部屋の壁一面には古い魔導書などが整然と並び、机の上には大量の資料が積み上がっていた。

 だが、それでありながら清潔であった。

 その一番上には紋章が刻まれた書類が積まれていた。

 窓の外には、若者たちが魔法の訓練に励む姿があった。


 そこに20代くらいの若い男が座っており、黙々と事務仕事をしていた。

 

 コンコン。

 静かな部屋にノックの音が響いた。


「どうぞ。」

「失礼します。監視対象のロイ・アルクディスの件で参りました。」


 そういうと男は手に持っていた資料を置き、耳を傾けた。

 

「たしか、6歳にしてジェネラルゴブリンを単独討伐した少年でしたよね。」

 

「はい。その監視対象が、退院し村に戻ったそうです。現在はアルクディスの家にある道場で修行をし、そして魔導学院への入学を目指し、勉学を始めているそうです。」

 

「そうですか。……そのまま監視は続けてください。変化があれば報告を。」

 

「承知しました。」


 男は窓の外を見つめ、小さく呟く。


「ロイ・アルクディス。これからどこまで成長するのかが楽しみだ。」


 ——


 翌朝。


 退院してから初めての朝。いつも通り早起きをした。道場に早く行き、自主練をするためだ。

 だが昨日は、めっちゃきつかった。

 なぜか、この1ヶ月間で道場の人数が増えておりその全員の相手をした。

 もう、死ぬかと思った。あんな経験はもう懲り懲りだ。


 だからといって修行をサボってはいけない。

 道場に行き、木刀を手に取り誰もいない道場で自主練を始めた。

 早朝の修行はいい。空気が澄んでいて、息が吸いやすい。

 朝日がちょうどよく当たっていて気持ちがいい。


 一通り素振りを終えたところでフィオナから声をかけられた。

 

「ロイー朝ごはんよー。」

「わかった!」


 家に戻り机の前に腰を掛けた。


「いただきまーす。うん!めっちゃおいしい!」

「ありがとう。」


 自主練をした後の朝食は良い。体全体に染み渡る。

 そして久しぶりの母さんのご飯。

 

 久しぶりに食べるからか、とても美味しく感じる。

 いや、いつもの料理がまずいって言ってるわけじゃないからね!?

 いつも美味しいよ!?


 まあ、とりあえずやっといつもの日常が戻ってきた。

 

 これから始まるのは、学院入学までの長い修行の日々。

 これから辛いこともあるかもしれないが、俺は絶対に諦めない。

 最高の人生を掴むために。そして、魔導学院へ入学するために!

 

 魔導学院への道は、まだ始まったばかりだ!

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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