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第十話「三年間の成長」

第10話「三年間の成長」

 あれから約三年が経った。

 9歳になった俺は、今日も朝日が昇る前から誰もいない静かな道場で木刀を振っていた。


「百二十一、百二十二、百二十三!」


 三年前、退院したあの日から、俺の毎日は魔導学院入学のための試験勉強と、修行の繰り返しだった。

 そしてこの三年間には忘れられない出来事がいくつもあった。


 ——一年目・6歳の冬


 一年目の冬に大事件が起きた。

 いや、まあ大事件っちゃ大事件なんだが村が襲われたとかではない。

 

 その時俺は6歳だった。そうあの大事件が起きた年だよな。忘れもしないエイドが「子供を連れて狩りへ行く」と申告を忘れ、1ヶ月間活動停止になった年。じゃなくて、ジェネラルゴブリンと戦った年だ。

 

 その大事件とは……!

 エイドから一本を取ったのだ!

 まあ、運が良かったのもあるが一本は一本だ。

 あのときはめっちゃ嬉しかった。

 四歳から剣術を学び始めて、まさか約二年で勝てるようになるとは思わなかった。

 あの鬼畜親父に勝てたんだ。本当に涙が出るかと思った。

 だが、次に発せられた言葉に俺は絶句したのを覚えている。


「よし!とりあえず半人前は卒業できたな!来年からは本気でしごいてやる!楽しみにしとけよ!」


 もうやだ。何だよこの鬼畜クソ親父。俺の中で新たな悪口が誕生してしまった。正直のところ修行が増えるのはいい。

 自分が強くなるためには必要なことだとわかっているからだ。

 だが、レベルアップするのは聞いてない。本当に。

 あと、1つ思うのが武導国家「ヴァルガス」の人たちはこんなに強いのだろうか。

 だとしたら、絶対に喧嘩だけは売りたくない。もう、ボコボコにされるのは嫌だ。


 ——2年目・7歳の夏


 この夏は、もう。もう。色々絶望の連続だった。

 ある程度入学試験の勉強も進んできて、魔力制御に関して興味を持っていた。

 ある時考えた。自分でやってみようじゃないかと。

 それでやってみた。結論。

 意味わかんない。何が魔力だ!と投げ出したくなるほどに。

 魔力なんて微塵も感じない。もうほんとに絶望した。

 もしかしたら、これからずっと魔法使えないんじゃないかと思った。


 それに畳み掛けるようにエイドの本気の修行が始まった。

 これもまた鬼畜も鬼畜。今までとはレベルが段違い。

 エイドに攻撃を当てようもんならカウンターでフルボッコ。

 俺が立ち上がった瞬間にまた攻撃が飛んでくる。

 もう息子だと思ってないだろ、と思うくらいにきつかった。そのうち慣れたが。あははは!

 まあ、毎日フィオナに怒られて、しょんぼりしながら夕食を食べるエイドの姿を見るのはなぜか清々しい気持ちになった。

 学べ、エイドよ。


 ——3年目・8歳の秋


 この秋は印象に残っている。なぜかというと、二年ぶりに狩りに出たからだ。

 二年前の初めての狩りはジェネラルゴブリンが出たりで散々だった。

 だが、この秋は二年前のような事件は起きなかった。


 基本的にやったことは、普通のゴブリンやフォークラビットなどを俺一人で倒したことだ。

 あの時に比べたら、格段に強くなっているので倒すのに苦労はしなかった。

 我ながら、よく成長したよな。

 ということで、秋からほとんど毎日、ユグドラの大樹林で実戦形式の修行をしていた。

 もちろん、エイドはギルドに申告していた。してなかったら、もう終わりだよな。

 

 ——


 まあ、そんなこんなでこの三年間は過ごしてきた。

 色々あった。本当にいろいろ。

 9歳になった今でも勉強と剣術は続けている。

 剣術はもうやめたいと思うくらいにきつい。あの鬼畜クソ親父め。

 勉強の方はとても楽しい。前世では勉強もそこそこできていたのだが、色々めんどくさかった。

 だが、この世界の勉強は魔法なので勉強が楽しいと思える。

 俺が勉強している姿を見るたび、エイドはしかめっ面をしていた。

 

「そんなに勉強をして楽しいのか?」


 というほどに。たぶんこの世界の俺の立ち位置は「剣術が得意なガリ勉」という立ち位置だろう。

 改めて考えてみると結構やばいやつなような……

 まあ、気にしない気にしない。


 ——


「ロイ〜!朝ごはんよ!早く来なさい!」

「わかったよ!」


 三年前の大事件で負った怪我が治ってから毎朝、誰もいない道場で自主練をする習慣がついた。

 その修行が終わったあと、母さんの朝ごはんを食べるのが日課になっている。


「いただきまーす!うん!いつも通りめっちゃ美味しい!」

「そういってもらえるとやる気が出るわ!」


 相変わらずフィオナは優しくおっとりとしている。母親の安心感を心の底から感じられる。

 父親はしらん。


「ロイ。少し話があるんだがいいか?食べながらでいい。」

「う、うん……」


 あぁ。嫌な予感しかしない。聞きたくねぇ。


「お前も9歳だ。来年は魔導学院の入学試験がある。」

「うん。そうだね。」

「そこでだ。王都へ行ってみないか?」


 ん?聞き間違いか?いつも危険なことしか誘ってこないエイドが、王都に行こうと誘ったのか!?聞き間違いじゃないなら最高だ!

 

「え!?行っていいの!?」

「あぁ。もちろんだ。来年一発本番というのも嫌だろう。下見に行くんだ。王都の雰囲気や、町並み。魔導学院も少し見てこよう。」

 

 よっしゃあ!エイドさんまじ感謝!


「今回はフィオナもついていくから安心だ。」

「母さんも来るの!やったぁ!いつ行くの?」

「できたら今日が良いんだが……いいか?」


 まぁじ!?最高じゃん!


「もちろんいいよ!朝ごはん食べたら準備するね!」

「泊まりだからちゃんと準備しろよ!」

「はい!」


 そうして、俺は朝ごはんを急いで食べ、自分の部屋に向かった。


「あらあら。あんなに急いじゃって。よほど楽しみなのね。」

「王都は良いところだ。ロイ行けば目ん玉が飛び出るだろうな。」

「そうね。わたしたちも準備しましょう」

「そうだな。」


 ——


 数十分後。馬車。

 

 よし!準備オッケー!これから王都だ!めっちゃ楽しみだ!

 こんなにはしゃいだのは、エイドに勝った以来だな……

 嫌なことを思い出した。

 まあ気を取り直して王都へ出発だ!

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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