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【本編完結済】Memory's Dogma - 記憶をデータ化できる2030年の日本で巻き起こる脳科学×異能サスペンス  作者: 高橋ワタル
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18ー6 提示された真相

 すごく嫌な予感がした。レイナの肩に掛けていた手を離し、黒田に駆け寄ろうとした。


「お前、たちも……道連れだ!」


 直後、部屋全体に警報音が鳴り響き、女性の機械的なアナウンスが流れ始めた。


「秘匿措置シーケンスが実行されました。本研究施設は二十分後に爆破されます。各スタッフは避難してください」


 何だって? 研究施設を、爆破?


「おい、今すぐこれを止めろ!」


 俺は黒田の左手首をつかみ、叫んだ――見ると、黒田は既に事切れていた。


「くそ……」俺はゆっくりと、黒田から手を離した。肩に手を掛けられ、振り返る。「ヒロキ……あれを見て……」


 レイナが指差した方向は、そらのが収められている装置だ。装置上部に投影されているARディスプレイは赤色に変化しており、“Disconnected”と書かれていた。


「こ、これは……?」


「恐らく、装置の中のソラノは……」レイナは周囲を見回した。「きっと、クロダの死と共に、他の皆も……」


 レイナは、そこで言葉を切った。俺も周囲を見回すと、全ての装置が同様の状態になっていた。それだけで充分、この状況が何を意味しているのかはわかった。


「そんな……」


 ここに居る全ての発現者たちが、息を引き取ったというのか。


「ここも……じきに危なくなる」レイナが静かに言った。「ヒロキ、行きましょう。真実を知っている私たちまで死んだら、誰も止められない。だから、生きてここから出ないと」


 そうだ。俺たちにはまだ、やることがある。この真実を、生きて持ち帰ることだ。そらののくれたこの命を繋ぐ――俺に今出来ることは、それしかない。


「ああ、そうだな。行こう」


「ええ」


 俺たちは立ち上がった。再び女性アナウンスの声が聞こえる。


「秘匿措置シーケンスが実行されました。本研究施設は十九分後に爆破されます。各スタッフは避難してください」


 あと十九分――何とかここを抜けださなければ。


「葵さんも、行きましょう」俺は葵さんの方を向いて、そう言った。


 だが、葵さんは首を横に振った。


「私は……そらののそばに居る」


「アオイ……」


「そらのを守れなかった私に……これ以上、生きる意味なんて」


 俺は葵さんの手を握り締めた。


「葵さんが行かないなら、俺もここに残ります」


「……っ! 何言ってるの!」


「だって、そらのを守れなかったのは、俺も同じですから」


「裕樹……」


「秘匿措置シーケンスが実行されました。本研究施設は十八分後に爆破されます。各スタッフは避難してください」


――あと十八分。


「葵さん、お願いします。俺を、ここで死なせないで下さい」


 俺と葵さんは、暫く沈黙していた。それは数秒か、数十秒か。やがて、葵さんの手に力が込もるのを感じた。


「――わかった」そう言って、葵さんはゆっくりと頷いた。そこには以前の葵さんの意思が宿っているように思えた。


 不意に足元が揺れた。同時にすさまじい轟音。更に地下の方では、既に爆発が始まっているのか――?


「急ごう……葵さんも!」


 俺たちは連れ立って部屋の入口へと向かった。

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