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第7話:『効率化は、美しいですわ』

魔物の群れが消え去った翌朝。

フェンリル領の住人たちは、二つの意味で目を丸くしていた。

一つは、街を囲む白銀の結界が、朝日を浴びて宝石のように輝いていること。

そしてもう一つは、領主館の前に貼り出された”『第一次・領地再編計画』と題された巨大な布告だ。


「……なんだこれ?『ゴミの廃棄時間の指定』?『路地の排水溝の一斉掃除』?」


困惑する領民たちの前に、アルティナが姿を現した。

彼女は昨日までのドレスではなく、動きやすさを重視した軍装を完璧に着こなしている。


「皆さん、おはようございます。まずはその薄汚れた街路を片付けましょうか。不衛生は判断力を鈍らせ、疫病という名の『予測不可能なリスク』を招きますわ」


「で、でもよ、お嬢様。そんなことより、壊れた防壁を直さねぇと……」


一人の職人が不安げに声を上げる。アルティナは、手にした鉄扇を閉じて彼を指し示した。


「防壁?そんな非効率的な積み石、もう必要ありませんわ。私の結界(アイギス)がある限り、物理的な壁など税の無駄遣いです。……それよりも、貴方のその腕、建設ではなく『物流網の整備』に使っていただきますわ」


アルティナは、魔法で領地の立体図を空間に投影した。

そこには、現在の歪な街路を整備し、物資の移動を最短距離にするための「都市設計図」が描かれていた。


「この街の最大の問題は、動線の悪さによる経済の停滞です。……一週間で、メインストリートを舗装し直します。資材は、私が魔法演算で精錬した『強化石材』を使いなさい」


彼女が地面を手にかざすと、ガガガッ!と地響きが鳴り、転がっていた岩石が瞬時に滑らかな直方体へと姿を変えていく。

現代の建築学と魔導演算を組み合わせた、驚異の工期短縮。


「無茶苦茶だ……けど、この石、金槌でも傷がつかねぇぞ!」


驚愕する職人たち。

アルティナは次に、領地の財政を管理する新しい会計局を立ち上げた。

前世のコンサル知識で、使途不明金を一円単位で洗い出し、それを「教育」と「新産業」へと分配していく。


「……お嬢、いや、アルティナ様。あんた、本当は神様かなんかか?」


「いいえ。私はただ、無駄が嫌いなだけです。……さあ、掃除を始めましょう。一か月後、ここを『帝国で最も美しい街』にするのが私の最低ノルマですから」


一方、領主館の屋上からその様子を眺めていたレオンは、届いた母国(アルティナを捨てた国)からの報告書を読み、愉快そうに鼻を鳴らした。


「……向こうは結界が消えたせいで、国境付近の穀倉地帯が魔物に荒らされて、大飢饉の予兆だとよ。アルティナを捨てた代償、少しずつ効いてきたな」


アルティナは笑わない。

ただ、淡々と次の数式を練り、世界を自分色に塗り替えていく。

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