第23話:『世界のバックヤードへ、ようこそ』
扉の先に広がっていたのは、幻想的な魔法の世界とは対極にある、無機質な回廊だった。
天井には規則正しく並んだ発光体が、アルティナたちの足音に反応して淡い白光を灯していく。
「……信じられんな。魔法の残滓を微塵も感じない。なのに、これほど巨大な構造物が自律して動いているとは」
レオンが警戒を解かぬまま、壁の継ぎ目を見つめる。アルティナはその滑らかな壁面を指でなぞりながら、頭の中で膨大なデータを処理していた。
「魔法ではなく……電子と回路の理ですわ。レオン殿下、ここは神が作った聖域などではありません。……何世代も前の先人類が遺した、『世界管理サーバー』の成れの果てですわ」
回廊の突き当り。巨大な広間に出た二人の前に、空中に浮かぶ無数のホログラムが投影された。
そこには、大陸の全地形図と、それぞれの国に蓄積された「魔力総量」がリアルタイムのグラフで表示されている。
「これは……グラナード王国に、レムリア帝国?なぜ、我が国の軍事配置まで筒抜けなんだ!」
驚愕するレオンの視線の先、グラフの一つが真っ赤に点滅していた。
「――異常値の検出。対象、個体名:アルティナ・フォン・グラナード。……世界の予定調和を大きく逸脱した行動を確認。……排除プロトコルの検討を開始します」
部屋全体に無機質な合成音声が響き渡る。
それと同時に、床下から数体の「守護者」――魔法耐性に特化した鋼鉄のゴーレムたちが這い出してきた。
「排除、ですか。ふふ、面白いことを言いますわね。……あの方たちが拝めている神の正体が、ただの自動管理プログラムだったなんて」
アルティナは動じず、鉄扇をバサリと広げた。
彼女の脳内では、すでに遺跡の基幹システムへの逆ハッキングが完了しつつあった。
「レオン殿下、前衛をお願いしますわ。……五分(三〇〇秒)だけ、この鉄クズたちの相手をしていていただけます?私は、この『傲慢な神』の権限を剥ぎ取って、リストラ(解体)して差し上げますから」
「……はっ、五分もいらねぇよ。お前がその椅子を奪い取るまで、一歩も近づけさせやしないぜ!」
レオンが大剣を抜き放ち、鋼鉄の守護者へと突っ込む。
アルティナは、空中に浮かぶ仮想キーボードを高速で叩き始め、世界の理そのものを書き換えるための「演算」を開始した。
追放された令嬢は、いまや一国の再編を超え、この世界そのものの「管理者」へと手を伸ばそうとしていた。
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