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『鉄壁の軍神令嬢、隣国で「詰み」を宣告する』 〜婚約破棄して私を追放した無能な王子、私が守るのをやめた瞬間に国が滅びそうですが……今さら戻ってこいと言われても、もう手遅れですわ〜  作者: 影山ネル
【第2章:要塞都市の守護女神(アイギス)〜私の領地に手出しはさせません、たとえ神であろうとも〜】

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第20話:『神の雷(いかずち)さえ、私の計算内です』

「おのれ、魔女アルティナ……!神の威光を汚した罪、その身で償うがいい!」


広場の壇上、司教の一人が狂ったように叫び、懐から禍々しい深紅の水晶を取り出した。

それは教団が禁忌として封印していた、古代の魔導兵器『神罰の雷(裁きの光)』の起動キーだった。


空が俄かに掻き曇り、渦巻く雲から黄金色の雷光が溢れ出す。

それは単なる自然現象ではない。一点に凝縮された膨大な魔力が、広場にいる数千の民衆もろとも、すべてを焼き尽くそうとする破壊の奔流だ。


「アルティナ!あれは不味いぞ、出力が異常だ!」


レオンが即座に大剣を構え、彼女の前に出ようとする。だが、アルティナはその肩を鉄扇で制し、一歩前へと踏み出した。


「……エネルギー充填率、九十八パーセント。指向性、固定。……ふふ、ようやくまとも数式(相手)が出てきましたわね」


アルティナの銀色の瞳の中で、空から降り注ごうとする光の軌道が、無数の数式となって分解されていく。


「皆さま、動かないで。……これより、真の『守護(アイギス)』をお見せしますわ」


ドォォォォォン!


鼓膜を震わせる轟音と共に、天から巨大な黄金の雷柱が降り注いだ。

悲鳴を上げる民衆。だが、直撃の瞬間、アルティナの頭上に展開されたのは、幾重にも重なる「幾何学的な光の結晶」だった。


「――全方位演算防御・鏡面位相(フェーズ・ミラー)、展開」


パチパチと激しい火花が散る。

しかし、神の雷と呼ばれた破壊の光は、アルティナの結界に触れた瞬間、あろうことか「九十度の角度の屈折」し、街の空の彼方へと受け流された。


「な……!?神の雷を、逸らしただと……!?」


「逸らしたのではありません。光の波長を計算し、結界の表面を『全反射』の角度に調整しただけですわ。……貴方たちの神は、入射角と反射角の法則さえ無視できないようですわね」


アルティナは、鉄扇をバサリと閉じた。

すると、空に滞留していた余剰エネルギーが、彼女の演算によって再構築され、今度は教団の司教たちが立つ壇上を優雅に包み込む「檻」へと姿を変えた。


「――拘束(チェック)。さて、神の御許へ行く前に、横領とテロ行為の罪状について、一から十まで計算(清算)して差し上げますわ」


光の檻に閉じ込められ、腰を抜かす司教たち。

民衆は、自分たちを守り抜いたアルティナの背中に、今度こそ真の畏怖と敬意を抱き、一斉に跪いた。


レオンは愛剣を鞘に収めると、呆れたように、けれど誰よりも誇らしげに笑った。


「神様も災難だな。お前みたいな理論派(バケモノ)を敵に回してしまうなんてよ」


「……失礼ですわね、レオン殿下。私はただ、世界から『無駄な混乱』を取り除きたいだけですわ」


アルティナの視線は、もはや敗北した教団にはなかった。

この現象の裏で動いている、さらなる「世界の歪み(バグ)」を、彼女の演算はすでに捉え始めていた。

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