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第13話:『透明な絶望』

国境の平原。

カイル王子率いるグラナード王国の騎士団、三千が陣を敷いていた。

対するレムリア帝国側――そこには、一騎の兵もいなかった。


ただ、草原の真ん中に、白い天幕と優雅なティーテーブルが一つ。

そこには、かつて自分たちが追放したはずの令嬢、アルティナが一人で座り、静かに本を読んでいた。


「アルティナ!貴様、こんな場所で何を……!大人しく戻れば、これまでの罪は許してやる。さあ、結界を張り直せ!」


馬上で叫ぶカイルの声は、苛立ちと焦りで震えていた。

だが、アルティナはページをめくる手を止めず、顔すら上げない。


「……五、四、三、二、一。境界線を越えましたわね」


「何をブツブツと……!者ども、突撃だ!あの女を捕らえろ!」


騎士たちが一斉に馬を走らせる。

だが、アルティナまえあと数十メートルの地点で、奇妙なことが起きた。


キィィィィィィン!


耳を突き刺すような高音と共に、先頭の騎士たちが「何もない空間」に激突し、火花を散らして突き飛ばされた。

馬たちが狂乱し、後続が重なる。まるで透明な巨大な壁が、そこに存在するかのように。


「なんだ!?何が起きた!」


「……『不透過領域(サイレント・ウォール)』。私が独自に開発した、魔導演算による絶対の境界ですわ」


アルティナはようやく本を閉じ、立ち上がった。

彼女が鉄扇を軽く振ると、今まで見えなかった巨大な幾何学模様の壁が、淡い青光を放ちながら姿を現す。

それは空高く、そして地中深くまで続く、神の業とも思える障壁だった。


「貴方たちの剣も、魔法も、その貧弱な覚悟も。この壁を〇・一ミリも揺らすことはできません。……そこから私を眺めているのが、今の貴方たちに許された唯一の権利ですわ」


「ふざけるな!こんなもの、数で叩けば壊れるはずだ!全軍、攻撃開始!」


カイルの怒号に応じ、三千の兵が、あるいは魔導師たちが、持てるすべての火力を透明な壁に叩きつける。

だが。

爆煙が晴れた後、そこには傷一つない壁と、優雅にお茶を飲み直すアルティナの姿があった。


「演算通りですわ。……さて、殿下。攻撃を続けるのは勝手ですが、貴方の背後を見てはいかがかしら?」


「背後……?」


カイルが振り返ると、そこにはいつの間にか、レオン率いる帝国の重装騎兵一万が、退路を断つように布陣していた。


「あ、アルティナ……!貴様、私を罠にかけたのか!」


「いいえ。貴方が自ら、私の描いた『詰みの盤面』に飛び込んできただけですわ」


アルティナの冷徹な声が平原に響く。

攻撃は通じず、退路は断たれた。

三千の兵士たちの間に、言葉にならない絶望が伝染していくのを、アルティナは冷ややかに見つめていた。

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