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第11話:『兵糧攻めは、優雅に』

レムリア帝国の軍事会議室。

ずらりと並んだ将軍たちの中心で、アルティナは巨大な大陸地図を鉄扇で指し示した。


「現在、我が国レムリアと母国グラナードを繋ぐ通商路は三つ。ですが、そのうち二つは、私の結界が消えたことで活性化した魔物の領域に飲み込まれていますわ」


アルティナが地図に魔力を流すと、グラナード王国周辺の交易路が真っ赤に染まる。

それは、物流の停止、すなわち国家の壊死を意味していた。


「グラナードの愚か者たちは、残された唯一の『平原ルート』に全戦力を割くでしょう。……ですが、そこも今日、封鎖(デッドロック)させていただきますわ」


「封鎖だと?宣戦布告もなしに道を塞げば、国際的な批判を免れんぞ」


老将軍の一人が懸念を口にする。アルティナは、憐みすら含んだ微笑を彼に向けた。


「いいえ。私はただ、道に『関税』をかけるだけです。……それも、彼らが決して支払えない額の」


アルティナの戦略は冷徹だった。

彼女は前世の経済知識を使い、グラナード王国が輸入に頼っている「魔石」と「穀物」の市場を、レムリア帝国の資本で買い占めていた。

供給を絞り、価格を吊り上げ、さらに唯一の交易路な法外な「通行税」を課す。


「武力で街を焼くのは野蛮な行為ですわ。……首を絞めるように、じわじわと資産価値を削ぎ落していく。これが最も効率的な『再編』です」


会議室の空気が凍りつく。将軍たちは、目の前の美しい少女が、剣一本振るわずに一国を干上がらせようとしていることに戦慄していた。


その時、会議室の重厚な扉が開き、レオンが入ってきた。


「準備は整ったぜ、アルティナ。お前の言う通り、国境付近の商会はすべて俺の傘下に収めた。今、グラナードの商船は、お前の許可なくして一歩も動けねぇ」


「お疲れ様です、レオン殿下。……これで、あの方たちも気づくかしら。自分たちが捨てた『盾』が、今や自分たちの心臓を握る『刃』に変わったことに」


アルティナは、地図上のグラナード王都の上に、黒いチェスの駒――「キング」を置いた。


「さあ、カイル王子。貴方の守り(コスト)がどれほど残っているか、見せていただきましょうか」


グラナード王国では、止まらない物価高騰と食糧不足により、暴動の足音が近づいていた。

アルティナの復讐は、もはや個人的な遺恨を超え、巨大な国家買収へと変貌していた。

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