第10話:『一ヶ月後の解答(アンサー)』
レオンと交わした「一ヶ月で領地を立て直す」という約束の、最終日。
フェンリル領の城門前には、帝国の軍部高官や、アルティナの噂を半信半疑で聞きつけた文官たちが顔を揃えていた。
「……信じられん。本当に、あの『死地』が……」
高官の一人が絶句した。
かつて泥にまみれ、死臭が漂っていたはずの街は、今や純白の石材と機能的な街路を備えた、王都に勝るとも劣らない美しい要塞都市へと変貌を遂げていた。
そして何より、街全体を覆うドーム状の「青い光」――アルティナが展開し続けている常時発動型結界が、周囲の魔の森を完全にシャットダウンしている。
「お待たせしました、皆さま」
城門が開き、アルティナが姿を現した。
レオンを従え、悠然と歩くその姿には、一国を背負う王女以上の威厳が備わっている。
「レオン殿下との約束通り、フェンリルの『再編』は完了いたしました。……現在の人口動態、防衛指数、ならびに今後十年の収益予測データはこちらです」
彼女が指を弾くと、高官たちの目の前に空中で光り輝くグラフや数字が並んだ。
一ヶ月で税収が二倍。魔物の被害ゼロ。インフラ整備完了。
魔法演算による「究極の効率化」が導き出した、非の打ち所がない解答。
「バ、馬鹿な……!こんな短期間で、これほどの事業を成し遂げるなど、神の御業でもなければ不可能だ!」
文官が叫ぶ。アルティナは、その騒がしい声を鉄扇を広げて遮った。
「神などという不確かな存在に頼るから、計算が狂うのです。私はただ、無駄な摩擦を省き、すべてのリソースを最適化したに過ぎませんわ」
アルティナは高官たちの横を通り過ぎ、レオンの前に立った。
「……いかがかしら、レオン殿下?貴方の『投資』に対する配当としては、十分かしら?」
レオンは並び立つ重鎮たちを一度見渡し、それからアルティナの方を抱き寄せた。
周囲の驚愕をよそに、彼は誰よりも誇らしげに、獰猛な笑みを浮かべる。
「十分すぎる。……おい、聞いたか、貴様ら。今日この瞬間より、アルティナ・フォン・グラナードは、我がレムリア帝国の『全軍顧問軍師』だ。不服がある奴は、今すぐこの結界よりも硬い魔法を作ってから発言しろ」
沈黙。
かつて「追放された令嬢」だった少女が、他国の軍権を掌握した瞬間だった。
「光栄ですわ。……さて、地盤は整いました。レオン殿下、次は『攻め』のフェーズに移ってもよろしくて?」
「ああ。お前の好きなように盤面を動かせ。俺はそのための剣になってやるよ」
アルティナの冷徹な知略と、レオンの圧倒的な武力。
二つの最強が嚙み合った瞬間、世界は静かに、けれど確実に崩壊と再構築の音を立て始めた。
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