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109,永遠にそばにいることと温泉に行くことと仲居の女性の言葉

「そうだね。でも、絶対なんてことはあり得ない。ずっとあると思っていたフォレストランドがなくなってしまうように、ユウも、俺の前からいなくなってしまう日が来るかもしれない。


 ずっと孤独なままだったならまだしも、こんなに幸せな日々を過ごした後で、ユウを失ってしまったら……」

 

 伸が、片手で目を覆って言った。

 

「そんなことには、耐えられない」


 有希は、膝立ちになって伸を抱きしめた。

 

「伸くんは心配性だね。でも、それはきっと、何度も辛い経験をしたせいだね。


 僕はいなくなったりしないよ。一生、うぅん、永遠に伸くんのそばにいる。

 

 もしも、いつかまた僕が記憶を失くすことがあったとしても、そのときは、絶対に僕を離さないで。すべて忘れてしまったとしても、伸くんを愛する気持ちは忘れないよ。

 

 たとえ忘れたとしても、必ずもう一度、好きになるから」

 

 それだけは間違いない。なぜなら、今の自分もそうだから。伸が、有希の腰に腕を回しながら言った。

 

「ありがとう」



 

 それ以来、伸が今までよりも甘えてくれるようになった気がして、有希はうれしかった。有希が思っている以上に、伸は自分が年上であることを気にしていて、なるべく弱いところを見せないようにしていたのかもしれない。

 

 だが、恋愛に年は関係ないと思う。伸が自分を頼ってくれ、ときには弱音を吐いてくれるようになったことで、今まで以上に伸のことが愛しいし、より絆が強くなった気がした。

 

 

 やがて、夏が来た。今までは、夏は毎年、母と海外に旅行に行っていたのだが、今年は、伸の休暇に合わせて、伸と二泊三日で温泉に行くことになった。

 

 母に申し訳ない気がしていたのだが、母は、友人三人と、ヨーロッパを巡るツアーに参加することにしたという。母には母の交友関係があるのだから、申し訳ないなどと思うのはおこがましいと反省した。

 

 それと同時に、伸と旅行することを許してくれた母と、心おきなく旅行を楽しめることに感謝した。

 

 

「せっかくだから、うんといい旅館に泊まろう」


 部屋で、パソコンを使って情報を検索しながら、伸が言った。だが有希は、少し心配だ。

 

「でもさ、伸くん、まだ次の就職先も決まっていないし……」


 先のことは、フォレストランドが閉園してから考えると言って、伸は就職活動をしていないのだ。だから、無駄な出費はなるべく抑えたほうがいいのではないかと思うのだが。

 

 すると、伸が笑った。

 

「お金のことなら大丈夫だよ。長年、地味な生活を送って来たおかげで、それなりに蓄えはある。


 なんなら、しばらく働かなくてもいいくらい」

 

「へぇ。そうなんだ」


 堅実な伸らしいと思い、ほっとして、有希も笑った。

 

 

 

「僕たちって、どういう関係に見えます?」


 案内された旅館の部屋で、有希は、お茶を淹れてくれている仲居の女性に尋ねた。

 

「おい」


 伸が、あわてたように言う。女性が笑顔で言った。

 

「ご兄弟ですか?」


「僕たちって似てます?」


「そうですね。どことなく、雰囲気が」


「へぇ、そうなんだ。でも、残念。はずれです」


 伸が、不安そうな顔でこちらを見ている。有希は言った。

 

「僕たち、従兄弟同士なんです。二人で旅行なんて、初めてなんですけど」


「そうですか。どうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ」



 女性が出て行った後、恨めしそうに見ている伸に、有希は言った。

 

「伸くん、僕がなんて言うと思ったの?」


「いや……別に」


 有希はからかうように言う。

 

「恋人同士ですって言うと思った?」


「そんなこと、思ってないよ」


 有希は、茶菓子の包みを開ける。伸は湯飲みを両手で挟んだまま、まだ上目遣いにこちらを見ている。

 

「伸くんも、食べよう」


「うん……」


「ねぇ。仲居さん、兄弟に見えるって。伸くんは、親子とか、叔父と甥っ子とか言われると思っていたんでしょう」


「それはまぁ、十代で結婚していれば、ユウくらいの子供がいても、あり得ないことじゃないし」

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