コインスナック
ボクたちは、第三チェックポイントへと向かう。またお仕事を頼まれるかと思ったけど、何も起きなかった。
次は、高速道路を利用する。インターチェンジで料金を払って、突撃した。
さすがにオープンカーでは、風が強すぎる。ボクは天井を元に戻す。閉じきったのを確認し、さらに加速した。
競うように、マミちゃんが横づきしてくる。窓の向こうでマミちゃんがニッと笑いかけてきた。
反対の車線には、ネウロータくんがいる。
ただ、ケイスさんがしきりに後ろを気にしていた。
ケイスさんの背後には、ククちゃんチームがいる。安全運転で、ボクたちについてきていた。
更に一時間かけて、パーキングエリアに到着する。道の駅、といえばいいか。
お昼時だけあって、食堂はどこも混んでいた。かといって、次のPAは遠い。
「ダイキ、これなに?」
いい香りのする自動販売機が、ズラリと並んでいる。売っているのはホットサンドイッチや、うどんなどだ。
「コインスナックだ!」
昔懐かしいコインスナックである。ボクも、大昔のドライブインでしか見たことがない。どれも、現役で稼働していた。
「おうどんって書いてる」
チサちゃんが興味を示したのは、うどん自販機だ。
「自動でおうどんを作ってくれるマシンだよ」
カップ麺にお湯を注げばできあがり、のタイプではない。生麺を湯切りして提供するのだ。
「すごい!」
変わったガジェット好きなチサちゃんの、琴線に触れたらしい。
「食べてみる? きっと物足りないと思うけど」
「いっぱい自販機がある。色々食べられる」
まるで遊園地に遊びに来た子供のように、チサちゃんは好奇心を溢れさせた。
うどん自販機にコインを入れる。
マシンから、ゴーッとけたたましい作動音が鳴った。中でうどんを作っているのだ。
でき上がる間に、他の自販機も観察する。
「じゃあ、ボクがカレーライスをもらおうかな? チサちゃん、シェアし合おう」
「うん!」
カレーは、パウチをレンチンするだけだ。白米もろとも、温める。
昨日のカレーも美味しかったけど、レトルトカレーはまた違った味を届けてくれるのだ。
焼きそばとカップ焼きそばくらい違う。
「急に、スケールが落ちた気がしますわね」
インスタントな昭和遺産を前に、ククちゃんがゴネた。
「夜が豪華だから、お昼は軽めにするわ!」
「それに、第三チェックポイントはもうすぐ。おやつの時間に到着する。夜までに、軽めのスイーツを入れる予定」
旅のしおりを読みながら、チサちゃんとマミちゃんが語り合う。
「それなら、いいですわね。我が国のスイーツは、おいしいですから」
ククちゃんも、納得してくれたようだ。
「何より楽しいじゃない! ねえ、チサ?」
「うん!」
チサちゃんが楽しそうなら、いいか。
下の受け取り口から、容器に入った麺が飛び出す。
「ホントにおうどんが出てきた」
「ボクのカレーも完成したよ」
料理が揃ったところで、テーブルに着席する。
「いただきます」
味はチープだけど、ちゃんとしっかりしたカレーだ。
「おうどんは、いかが?」
「おいしい!」
昨日のシメもうどんだったが、チサちゃんは気にしない。
ボクも、人のことは言えないか。
「ハンバーガー、買い占めたくなるわね!」
「またハンバーガーですか。お好きですね」
「ジャンクは食べられる時に、食べておきたいの!」
マミちゃんは、コインスナックでもハンバーガーを食べている。
「ラーメンもイケるぞ」
「そうね。チャーシューが思っていたより大きいわ」
ネウロータくんチームは、ラーメンにしたらしい。
「じゃ、シェアする。あーん」
チサちゃんが、おうどんをつまんだお箸を近づけてきた。
「ボクも、あーん」
カレーのスプーンを、チサちゃんの口へ運ぶ。
「うーん。最高」
チサちゃん、カレーを楽しんだ。
「昨日のカレーとは、なんか違う」
「でしょ? レトルトには、レトルトの良さがあるんだ。別の食べ物だね」
どっちが優れているんじゃない。
「わたくしも、おうどんにしますわ」
「ホットサンドはよろしいので?」
「おうどんですわ!」
なぜかククちゃんは、頑なにうどんをオーダーした。作る工程が楽しかったのかな?
「出てきましたわ!」
ククちゃんが子供っぽく、ハシャイでいる。
「なんですの? 学術的に興味があるのですわ!」
超がつくほど、昭和遺産だけどね。
「なんか、一日目のキャンプは遠足で、今日は社会科見学をしていた気分だなぁ」
うどんをすすりながら、ボクは考えていた。
「とおっしゃいますと?」
「いかにも、子どもが考えてくれた企画っぽいなって。子どもがウキウキするような探検が、いぱいあるなって」
ボクは、ヨアンさんの問いに答える。
「そうですね。幼稚ですよね」
「マイナスな意味じゃないです。すごく楽しいイベントですよ」
落ち込むヨアンさんに、ボクは訂正を入れた。
「チサちゃんが喜んでくれているから、きっといい企画なんですよ。ありがとうヨアンさん」
ボクらが昼食を堪能している中、ケイスさんとトシコさんは早々と食事を済ませている。
コーヒーでくつろいでいた。いや、平静を装っている。
「なにか、気になる点がありますか、ケイスさん?」
「いえ。特には」
ケイスさんが、あたりを見回す。
「引っかかることはあるのですが、情報が少ないです。現地でわかることでしょう。それに……」
「他にもなにか?」
「気づきませんか? つけられているんですよ、クク様が」
えっ! 全然気づかなかった。そんな、怖いよ。
「クク様を、とは限りません。私はてっきりマミ様を狙っているのかと想像したのですが、どうもクク様を常に監視しているような目線を感じるのです」
「いつから?」
「レース直後からです」
そんな以前から? 最初からじゃないか。
「ほら、早く口を開けなさい。食べさせてあげますわ!」
「お嬢様。自分で食べられますから」
「いいから早く! これは命令ですわ!」
ボクたちの不安を、知ってか知らずか。
標的にされているらしきククちゃんは、ヨアンさんに「あーん」しようと必死だった。




