ククちゃん、大激怒⁉
「ごちそうさまでした」
食事を終えて、ガレージへと行く準備を始める。
燻製サンドを積んだトレーを、トシコさんが持つ。朝食を、オンコたちに届けるのだ。
「ボクらが、オンコたちに届けるよ」
「ダイキさん、お願いできる?」
ボクもトレーを手にした。
「わたしもやる」
「じゃあ、お願い」
チサちゃんと手分けして、トレーに燻製サンドとコーヒーを担当する。
「待ってダイキ! アタシたちも行くわ!」
なんと、マミちゃんたちまで手伝いだす。
「アタシたちの地区のドワーフも混じっていたわ!」
手伝ってくれるのは、マミちゃんたちだけではない。
「ククちゃんまで」
「せっかく、修繕してくださっているんですもの。お供させていただきます」
素直じゃないけど、感謝の気持はあるようだ。
キャンプの火を消した後、みんなで向かうことに。
「車、準備できているかな?」
「見に行く」
直後、ボクらはガレージへ。
「オンコ、おはよう」
仮眠をとっているオンコに、ボクは声をかける。
倒れるように眠っていたオンコの周りは、壮絶な作業だったのだろうという痕跡が伺えた。
「おっすー。もうクタクタだよ。朝ごはんが待ち遠しいね」
寝ボケまなこで、オンコが返事をした。
他のメンバーも、夜通し作業をしていたようである。
「話は食べ終わってから聞くよ。先にごはんをどうぞ」
「わーい、いっただっきまーす!」
先に手を洗ってから、オンコたち一同は食事を始めた。競い合うように、ドワーフたちが口へとサンドウィッチを詰め込む。
「たくさんありますから、がっつかないでね」
トシコさんが呼びかけても、腹ペコドワーフたちは止まらない。
「もうちょっとボリュームのある食事にしてやればよかったか?」
改良の余地がありそうだと、ネウロータくんはひとりごちた。
「まだまだたくさんあるから、遠慮なく食べなさい!」
マミちゃんは、ケイスさんと一緒にスーパーサブ周辺のドワーフにサンドウィッチを配る。明らかに許容オーバーな量を。
「まさに目が覚めるようなおいしさだね、ありがとうみんな!」
オンコ並びドワーフ全員が、サンドウィッチとコーヒーに満足した。
「朝食後は、もう一眠りするのである」
「同感だ。少し横になる」
ゼーゼマンとエィハスも、限界を迎えたらしい。
「すいません、ダイキさん。我々は今日、お役に立てません」
さすがのベルガも、寝癖を直す余裕すらない模様だ。
「いいんだ。ありがとうみんな」
オンコ以外の三人は、徹夜作業の疲労と満腹感で眠ってしまった。
「バッチリ調節しておいたから、安心して。それと、ハチシャクもコンバーチブルにしたから」
「できるの?」
「もちろん。オイラに不可能はないよ」
寝たままの状態で、オンコはサムズアップを決めた。
「ダイキ、コンバーチブルって何?」
「ハチシャクも、オープンカーにできるんだ」
「スゴイ!」
嬉しそうに、チサちゃんは手を叩く。
「何も音が聞こえなかったけど?」
驚くべきは、まったく音がしなかったことである。このガレージには、相当の防音機能があるらしい。
「ああ、ここは亜空間だから」
どのチェックポイントとも繋がっているという。
つまり、ここだけはどこにも干渉せず、干渉もされない。
「見たこともないドワーフさんたちが、いっぱいいるけど?」
ドワーフさんたちが集まっているのは、ハチシャクだけじゃなかった。
ネウロータくんの車にも、マミちゃんのバイクにも。
「さっき亜空間だって言ったじゃん。要はさ、ゴマトマ以外にもいるドワーフの連中も、ここに待機しているわけ」
便利だなぁ。
ただし、共通して作業できるのは、『魔王と玉座以外』なんだとか。使えるのは、オンコたち「魔王のパーティだけ」ってことになる。
ボクら魔王と玉座は、一度入ったチェックポイントへと「戻る」事はできるだけ。
「次のチェックポイントに進む」ことはできない。
ズルはできない仕組みなのだ。
「でももうムリ。少し暴れすぎたねー。久々に血が騒いじゃって」
本当に、さっきまで徹夜だったらしい。
「ちょっと! これはいったい、どういうことですの⁉」
ドワーフに向かって、ククちゃんが激昂している。
原因はすぐに判明した。
リムジンが、半分に切断されていたのである。
しかも、車体が海外の救急車みたいな造形に様変わりしていた。
「これでは急患ですわ!」
「でも、ミニバン型の方が負担は軽いよ。燃費もいい。リムジンタイプを生身の人間が動かすなんて限界だって」
駆けつけたオンコが、解説をする。
「しかし、高級感が」
「これでも、最高クラスのミニバンなんだけど?」
食い下がるククちゃんに対し、オンコも譲らない。自分たちは確かな仕事をしたと主張する。
「仕方ありませんわね。あなたの腕を信じますわ」
ククちゃんは、引き下がった。
「ごめんね、オンコ」
「大丈夫。あの子の本心じゃないって分かってるから」
オンコと別れたボクらは、テントを片付ける。
最後に、キャンプ場を掃除した。
ボクたちはいよいよ、第二チェックポイントへと向かう。




