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アカメの悪魔  作者: 海蛙
4巻(想定)

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84話 来訪者

 皆で楽しんでいたらすっかり遅くなってしまった。


 でもまぁ…こういう日があってもいい。


 何を錯乱したのかソースの代わりにチョコレートをかけて食べようとしていた陽さん、商店街のマダム達にもまれててんやわんやになっていた葵くん、おっちゃん達と盛り上がった結果酒を飲まされそうになっていた湊くん。


 まだ祭りの前だと言うのにとても騒がしくて、例年の手伝いよりも数段楽しかった。


 最後に食べきれなかった分は包んでくれたし、兄さんたちも食べるかな?


「ただいまぁ」


「アカメお疲れ様!やっと帰って来たか!」


 家に着くと早速兄さんが出迎えてくれた。


 何やら待っていたようだが…どうしたんだ?


「どうしたの?」


「毎年手伝いに行くとこうして持って帰ってくるだろ?おばさんもう分かってるからあんまり作んないで待ってたんだよ」


 「お腹空いたぁ…」と両手のご飯をひったくられてしまった。


 なるほどそういうことか…確かに毎度だもんね。


 いつも手伝いに行った奴はたらふく食べてくるし、何かいっぱい持って帰ってくるしで、確かに作り損な節はあったね。


 手を洗ってリビングに行くと、早速兄さんが机に貰い物を広げて喜んでいる。


「おぉー!うまそー!俺も手伝いに行きたかったなぁ」


「アンタ食べたいだけだろ?」


 まぁ、これを楽しみにして手伝いに行ってる節は僕も兄さんも半分くらいはある。


「僕!僕!たこ焼き!とポテト!」


「はいはい取ってあげるね。アカメは?お腹空いてるかい?」


「ううん、食べてきた」


「やっぱりね」


 しょうがない子ね、と笑顔交じりのため息をつかれる。


 いつもありがとね、おばさん。


 少し離れた位置から皆が僕が貰って来たものを食べてる様子を見る。


 何だか分からないけど嬉しくなる。


 お父さんとかが居たら、見えてる景色ってこんな感じなのかな…。


 美味しそうに食べてる様子を見ていたら口が寂しくなってきたので、一緒に貰って来たスイカを何等分かにしてお皿に移す。


 そのうちの一つを貰ってリビングを後にした。


「スイカ切ってあるから、食べたい人取ってね」


「おう!ありがとうな!」


 自分の部屋へと戻り、窓を開けて風を受けながらスイカを齧る。


 瑞々しい甘さと若干の種の不快感を感じる。


 種を吐き出してもいいけど、一々面倒だしなんか汚い感じがして結局食べてしまう。


 日中は暑いけれど、夜になるとまだ寒さを少し感じる。


 手伝いで汗をかいてきた後ってのもあってちょっと冷えるかもね。


 眼を閉じて息をゆっくりと吸うとお香のような匂いが微かにする。


 うちのか余所のかは分からないけれど、多分蚊取り線香かな?


 暑いってだけでどこか騒がしさが倍増して感じる夏も、夜になれば段々と静かになっていくのを感じる。


 このゆっくりと沈んでいく感じが好きで、たまにこうして一人で外を眺める。


 色々あったなぁ…ほんと…。


 悪魔になって、苦しんで、失うものもあって…だけど、ちゃんと歩んできた。


 成長した自負はあるけれど、これからもっと苦しむのだろうなという謎の自信もある。


 僕に出来るのは、その時に備えて出来得る限りの力をつけることだけだ。


 空を見上げると、茜が差した空が段々と青みがかるというか黒くなっていくというか、浮かんだ雲にも影が差し始める。


 もう少し経てば、また屋敷に向かう時間になる。


 …早く会いたいな。





 屋敷に着いて正門を潜ろうとすると、門の前で誰かがやり取りしているようだ。


 レイ姉さんと…誰だ?顔が外套で覆われていて分からない。


「だーかーらぁ!居ないって!居ても会わせない!ダメったらダメ!」


「いつの間にそんなに子供っぽくなったのぉレイ?ちょっと顔だけでも…」


「ダメー!悪影響!」


 何のやり取りだよ。


 とりあえず姉さんが駄々こねてるのは分かった。


 全く、よそ様あんまり困らせちゃ駄目だよ?


「姉さん、どうしたの?」


 何かしらの助け舟を出そうと思って、近づいていくと姉さんがギョッとしたような顔をする。


「あらぁ?もしかして君は?」


「ち、違う!この子は新入りのポチだよ!」


 誰が犬だ。


 いや、犬かは分からないけど…僕アカメだし…。


「姉さん?あんまりよそ様を困らせちゃ駄目だよ?」


「ち、ちがっ!これはアカメを守ろうと!」


 歯切れが悪いな?どうしたんだろう?


 姉さんの意図を図りかねていると、近くをフワッとした香水の香りが漂う。


 そして、肩にそっと触られた感触があった。


 後ろを振り返ると、姉さんを挟んで見えていた外套の人が僕の後ろにいるではないか。


 嘘だろ…油断していたとはいえ、見えなかったぞ…。


 これでも強くなった自信はあるんだけどな…姉さんとまともに口を利ける外部の奴なんだから弱い訳ないか…。


「やっぱり、君がアカメくんね?会いたいと思ってたの」


 冷や汗をかく僕の肩から手を離し、外套のフードを取る。


 より華やかな香水の香りが広がり、その顔が露わになった。


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