83話 祭りの手伝い
さぁ!ここから四巻スタートです!!
……是非是非、見届けていただけると。
「アカメくーん!それこっちに持ってきてくれるか!」
「はーい!今すぐ!」
「それ終わったらこっちも手伝ってくれるかい!」
「勿論!ちょっと待っててください!」
段々と日差しが強くなり、外にいるだけでじりじりと汗をかいてしまうようなそんな時期になった。
セミの声も日を経る毎に大きくなってきて、本格的に夏になってきたと感じる。
僕は祭りの準備で活気付いている商店街の手伝いをしていた。
おばさんの元で過ごしている孤児である僕らに、ここの人達はよくしてくれる。
買い物に行くとおまけしてくれたり、買い物じゃなくてもおばさんに持ってけと果物とかくれたり、近くを通るだけで気にかけてくれる。
そんなあったかいこの場所が好きで、日頃の感謝を込めてこういう時に手伝っているのだ。
護兄さんは今仕事だしユウはまだ小さいから、二人の分も僕が働かねば。
それとは別に、今年は僕一人じゃないからやる気も自然に出る。
「陽ちゃん葵くん筋が良くて助かるよぉ!この分ならあっという間に仕込みが終わっちゃうねぇ!」
「ありがとうございます!僕も楽しいです!」
「任せてください、こういうの得意なんです」
笑顔で答える葵くんとどこか得意げな陽さん。
「ほら頑張れ!男なら根性見せてみろ!」
「な、んで…こんなに、キツいんだ…」
反対側では湊くんが肩で息をしながら荷物を運んでいる。
これは早めにやること片付けて手伝いにいった方が良さそうだね…。
湊くん、何とか耐えてくれ…と思いながら、僕は急ぐのだった。
「っはー、はー…こき使い過ぎだろ…」
「ははは…お疲れ様」
日の当たらない石の階段のところに座り、湊くんはボクシング選手のような項垂れ方をしている。
労うように貰って来たキンキンに冷えたラムネを一本差し出すと「開けてくれ…」とお願いされる。
分かり切った結果を避けるために汚れても大丈夫そうなところで中のビー玉を押し出すと、案の定溢れてくる。
これを溢れずに開けられた試しがない。絶対に手がベタベタになるのはいかがなものか。
少々の不満を募らせなが湊くんに差し出すと「ありがとう…」と煽るように飲もうとする。
「ッあぁ!ビー玉邪魔ぁ!」
「風情がないよ湊くん、それがいいんじゃないか」
開ける時溢れるし飲みづらいし、不便しかないはずなのだが…これも含めてラムネの良さとなるのは実に不思議なものである。
自分の分も開け、隣に座ってだらけながら一緒に飲んでいると、陽さん達も終わったのかこちらに近づいてくる。
「あ、ラムネ。いいなぁ」
「あっちで貰えるよ。行ってこようか?」
「いや、いいよ。二人で行ってくる」
陽さんと葵くんもラムネを貰ってきたので、僕が立って座る場所を譲った。
四人ではギリギリ幅が足りないし、湊くんはダウンしているし仕方なし。
一緒になってラムネを煽っていると、少し陽さんが不機嫌めだった。
「どうしたの?」
「毎年やってるんでしょ?言ってくれれば手伝ったのに…」
「いや…去年は高校受験だったじゃん…」
陽さんと話すようになったのは中学二年からだし、今まで手伝って貰う機会がなかったのも仕方ないだろう。
分かってはいるけど納得いかない、という様子の陽さんに苦笑する。
「来年からも一緒に手伝うから!」
「あ、僕も!」
「俺は様子見で…」
湊くん…まぁしょうがいないか。何だかんだ来てくれそうだけどね。
「ありがとう。でも去年までは割と何とかなったんだよ。今年は規模が違うから人手が足りなくて…だから来てくれて助かったよ」
普段はただの地元の夏祭りであるが、今年はかなり違う。
僕は商店街の上の方に沢山掲げられた旗、精霊祭の文字を見つめる。
精霊教を主に信仰するユートリピア聖王国の一大イベントの一つ、全土で統一して行われる数年に一度の大掛かりな祭りだ。
精霊に感謝をし~なんてことが掲げられているが、あまり意識したことはない。要は規模の大きい楽しい祭りだ。
そして、今年はその祭りだけではない。
「今年は精霊祭だけじゃなくて、聖女の儀も行われるからね。稼ぎ時だって皆張り切ってるよ」
現在まで精霊教会で聖女として在り続けた人が退き、また新たな聖女が任命される凄いイベントが精霊祭の後に控えている。
聖女、勇者が魔王を打倒した英雄であるならば、聖女はもっと身近な民にとっての英雄である。
かつての悪魔と精霊を味方につけた人が争った大戦、その中にあって苦しむ人々のために奔走し、数えきれない人々を救ったまさに聖女と呼ぶに相応しい存在である。
話によれば偉大な精霊をつれていたとか、精霊を連れている様子がなかったことから実は悪魔なのではないか?との噂もあるが、真実は分からない。
何にせよ、そうして生まれた聖女の冠を被る人が今年決まるのだ。
祭りだ稼ぎ時だ!と盛り上がる商店街の人達の気持ちも分かる。
「どんな人が聖女になるんだろうね!」
「前に決まった人ももう八十代だろ?大分頑張ったよなぁ」
葵くんと湊くんは聖女に思考のリソースが割かれているが、陽さんはどうやら違うらしい。
商店街の人達が試作だなんだって、出店で出そうとしている料理を作っては皆で食べ合っている。
それを見て涎を零しそうになっている。
「…ふふっ、陽さん行こっか?」
「っアカメが行きたいなら仕方ない!私チョコバナナ食べたい!」
チョコレートが食べたいだけでは?
「あ、いいなぁ僕も食べたい!」
「俺もぉ、焼きそばうまそうだなぁ」
「おぉ坊主共もこっちこい!手伝ってくれた礼だ!感想聞かせてくれ!」
ただ祭りが待ちきれなくて皆でワイワイやりたいだけなんじゃ…お酒持ってきてる人もいるし…。
そんな無粋なことは口にしない。だって僕も楽しみたいから。
たこ焼きあるかな?食べた…げふんげふん、味見したいなって。ね?




