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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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82話 取り戻した日常

 ボルドーの件が解決してからはトントン拍子で進行した。


 ボルドーを後から駆け付けたファングに任せ、僕たちは急いで闘技場に戻った。


 改めて会場の人達に勝利を祝われたが、それよりもリアとベルがこの現場を見てくれていることの方が嬉しかった。


 アルマくんと姉さんの来賓席には行けないけれど、人目のつかない闘技場のちょっと屋根っぽい部分のところから見てくれていた。


 ベルが胡坐をかき、その真ん中にリアが座ってこちらに手を振っている。


 ここまで闇の中でも眼が利く能力をありがたいと思ったこともない。


 あの二人が話しているところは見たことないけれど、あんなに仲良かったんだ。


 剣闘試合が閉会すると、僕たちとしては特に居続ける理由もないのでさっさとスローンに帰ることになった。


 帰り際、最後にアヴァリスと対峙する。


「あばよ、アカメ」


「じゃあね、アヴァリス」


 特にお互い思い入れもないので、一言ずつ返すが…なんか味気ない。


 僕は何の気なしに手を差し出す。


「何だ?これ?」


「握手だよ、握手」


 どういうつもりだてめぇ?と本気で分からない顔をされる。


 いや、僕だって分かんないよ。


「何だかんだ僕の我儘に付き合って貰ったし?お前らのせいでもあるけど、そこは感謝してる」


「いや元々はお前が奴隷を勝手に…あぁ、もういいか」


 一々反論するのも面倒になったのか、アヴァリスは頭を掻きむしりながら反対の手で僕の手をガシッと握る。


「強くなれよ、俺を失望させるな」


「言われなくても」


 もう二度と奪われてなるものか。


 いつか、お前ぐらい強い…いやそれ以上の脅威が迫っても守れるように、お前をボコボコに出来るぐらいにまで成長してやるよ。


 満足して貰えたのか、鼻を鳴らして手を離す。


「もういいだろ、さっさと帰れ」


「うん、そうさせッ⁉」


 急に身体の力が抜け、急速に意識が遠くなる。


 え、あ…魔石の副作よ……


「お兄ちゃん⁉」


「アカメ⁉返事して⁉」


 リアと姉さんが心配して駆け寄ってくれるが、返事する力も残ってない。


 ごめん…後は…お願い…





 食器のカチャカチャなる音で意識が浮上する。


 ゆっくりと眼を開けると、見知った天井が広がっている。


 …また、これか。本当に迷惑かけるな。


 気づいたら屋敷の中だった(三回目)が終わり、音がする方を振り向くと横のミニテーブルにクッキーを置いたリアが椅子に座ろうとよじ登っていた。


 香ばしい香りが漂っているため多分焼き立てだろう。シアさんに焼いて貰ったのかな?


 お腹の辺りに少し重みを感じたので覗いてみると、ルビーが気持ちよさそうに眠っていた。


 そんな光景に何だか安心して、ゆっくりと息を吐いてからリアに声をかけた。


「リア、クッキー好き?」


「うんだいす…き…お兄ちゃん‼」


 僕が起きたことに気が付いたリアは急いでベッドによじ登って抱き着いてくる。


 ルビーがびっくりして起きてしまったが、何事もないと悟ると僕の枕の横に座り直してまた眠ってしまった。


「お兄ちゃんぎゅー!」


「クッキーはいいの?」


「いいの!」


「一緒に食べる?」


「食べる!」


 食べるんだ、可愛い妹め。


 実のところ、身体がエネルギーを求めているのか強烈にお腹が空いているのだ。


 リアと一緒に美味しく食べていると、部屋の扉が開けられる。


「アカメさん!起きたんですか!」


「あ、フレイ。おはよう」


 余程心配をかけたのか、若干涙目で僕とリアを抱きしめるように包む。


「よかった…よかったぁ…!」


「…大げさだよ、もう」


 僕もそうは言うけれど…こうして心配してくれるのも悪くないね。


 フレイは顔を上げ、目元の濡れた包帯で見えない顔を向ける。


「信じて、いました…きっとリアと帰って来てくれるって」


「応えられてよかったよ……まぁぶっ倒れて帰って来たけど…」


 何故こうも僕は恰好が着かなんだかねぇ…。


 久しぶりに少し三人で談笑した後、部屋を出て皆に会いに行った。


 実に一週間もぶっ通しで寝ていたらしく、身体が強張って動かしにくいのも納得だった。


 姉さんは…まぁ置いておいて、皆がよくやったというように褒めてくれたのは本当に嬉しかった。


 アルマくんやリヒトさんは久しぶりに実力を確かめてやると言わんばかりに張り切っていたので明日から怖いけど…。


「じゃ、支度していこっか」


「え?どこに?」


 頬をくっつけて抱きしめたまま動かない姉さんが何の気なしにそんなことを言う。


 今日はゆっくりさせてほしいのだが…。


「どこって、アカメんちだよ」


「…あ!」


 マズい忘れていた…そうじゃんどうすんの…。


 絶対心配している…下手したら捜索願出されてたり…。


 僕の大焦りとは裏腹に姉さんは何故か落ち着いている。


「早く支度してきてね。あと、スマホの連絡の履歴見とくと話合わせやすいから」


「……へ?」





「いやぁ、うちのアカメがお世話になりました!」


「いえいえぇ、アカメくんは本当によく働いてくれましてねぇ!」


 おばさんと姉さんの奇妙なやり取りを奇妙な気持ちで見る羽目になる。


 まさか…こことここが関わることになるとはね…。


 スマホの連絡履歴を見てみたら、何故か僕は住み込みのボランティア活動をしていることになった。


 陽さんに話を合わせて貰ったことで信用を得られたらしい。


 知らない僕がおばさんに「心配しないで!ちょっと頑張ってくる!」と送っているのは非常に奇妙であった。


 そもそも何故僕のスマホのロックが開けられていたのか…やめよう頭が痛くなる。


 下を見ると、姉さんと手を繋いだリアがおばさんにしがみついたユウと睨み合っている。


「お兄ちゃん!」


「アカメにぃ!」


「はいなんでしょうか⁉」


 弟と妹の迫力に思わず敬語になってしまう。


 そのまま二人は僕の手を片方ずつ引き、互いに譲らない。


「私のお兄ちゃん!」


「僕のアカメにぃ!」


 何だ、これ?


 嬉しいと困惑の二つの感情が入り乱れ、困った結果近くにいた護兄さんに助けを求める視線を送る。


 兄さんはため息をつき、僕に助けの手を差し伸べてくれる。


「はいはい、アカメは俺と話があるからなぁ」


「「ダメッ!」」


 流石の剣幕に兄さんは若干手を引っ込めたが、すぐに気を持ち直して僕を連れ出してくれた。


「ありがとう兄さん…」


「いいってことよ。それより…その、レイさんって彼氏とか…いたりするか?」


 …………。


 ため息をつきたいのは僕だったよ兄さん…。


 想像もしていなかったまさかの交流に、目覚めて早々疲労が蓄積していく。


 もうほとんど梅雨が明け、これから本格的に夏が始まろうとしているこの時期。


 今日も空は晴れていた。


これにて三巻(想定)終了でございます!!

いやぁここまで読んで貰えるとは、貴方も好きですねぇ……

10月に関しましては、後日キャラ紹介とちょっとしたssなんかを投稿して締めたいと思います。

四巻は切りよく11月からスタートいたしましょう!もう書き上がっているのでご心配なく!

それでは……またお会いしましょう

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