80話 再会
「アカメ!どうかしたのか!」
後ろから聞き馴染みのある声が聞こえ振り返ると、アルマくんとレイ姉さんが僕を追って駆けつけてくれた。
「アルマくん!姉さん!」
「アカメぇ!凄かったよぉ!」
「ふ、服引っ張らないで!今はそれどころじゃ!」
「おいアヴァリス!アカメから離れろ!」
「お前らいつからそんなうるせぇ集団になったんだ…」
収拾がつかなくなりそうな現場を無理やり収拾させるために全ての会話をぶった切って説明する。
「リアがっ、リアが連れ去られた!力を貸して!」
僕の言葉を聞いて、二人はピタリと止まって真剣な表情をする。
「…どういうことだ。アヴァリス、説明しろ」
「うちのもんがふざけたことやらかしてな。あの餓鬼を連れてどっか行きやがった」
「てめぇよくまぁぬけぬけと!」
「アルマ、落ち着いて」
レイ姉さんがアルマくんを落ち着かせ、アヴァリスを見据える。
「それで、今探している最中なのね?」
「あぁ、そうだ」
「アカメは何故連れてきたの?それに大怪我だったはずなのに治っているのは?」
「魔石を食わせた」
その言葉に、今度はレイ姉さんが怒りを露わにする。
「まだ解明もよく進んでいない怪しいものを、アカメに食べさせたの⁉」
「ま、まって姉さん!僕が頼んだんだ!」
また収拾がつかなくなりそうなので割って入る。
「…アカメが?本当なの?」
「本当だよ。リアを助けに行きたくて、出来る事なら何でもしたかった」
その言葉に満足そうにアヴァリスは頷き、それでまたレイ姉さんが不機嫌になる。
「…でも、危ないものアカメに使ったのには変わらないし」
「いい加減こいつのこと理解してやれよ、ある種イカれてるぜ?例えあの満身創痍の状態だってこいつは進んで行くぞ」
「お前にうちのアカメの何が分かる!」
「姉さん落ち着いてよ⁉」
本当にこんなことしている場合ではないのだ。
今も何処かで泣いているかもしれない。
そう考えるだけで胸が張り裂けそうになる。
「お願い姉さん、反省なら後でいくらでもするから。力を貸して!」
姉さんは僕の顔を少しジッと見て、そしてため息をついた。
「…全くしょうがない弟ね。アルマ、お願い」
「承りました」
アルマくんは姉さんの言葉を受け、集中するように耳に手を当てる。
「何を…」
「黙ってろ」
アヴァリスが僕の口を塞ぐ。
そのまま一分ほどであろうか、黙っていたアルマくんが突然顔を上げる。
「こっちだ!ついてこい!」
そのまま飛び去るアルマくんに姉さんとアヴァリスが続く。
展開が早く、僕の理解が少し遅れてやってくる。
「今ので分かったの⁉」
「まあな。いつか、俺の固有能力が知れるぐらいまで強くなるといいな」
アヴァリスの背中の上で驚愕する僕に、アルマくんは得意気な笑みを返してくる。
そして、そのままアヴァリスを睨みつける。
「そしてアヴァリス!早くアカメを返せ!」
「やなこった」
「あぁ⁉」
「喧嘩しないで!意味わかんないよ!」
何だこいつら本当に⁉
喧嘩しつつもリアがいるであろう場所へ最短距離で移動し続ける。
やがてそれは見えた。
「ッ!本当に居た!」
「おぉ本当だなぁ!じゃあ行くぞ!」
「へっ?」
アヴァリスは建物の上からさらに飛び上がり、僕の胸倉を掴んでそのまま槍のように投げようとする。
「ちょ、ちょちょちょっと待って⁉」
「行ってこい英雄!助けるんだろ‼」
僕の制止は聞き入れられず、うち放たれた僕は誰よりも早く飛来する。
限界まで眼を強化して見ると、リアが今にも痛めつけられそうな状態となっているではないか。
無意識の内に拳に魔力が集まる。
ふざけるなよ、これ以上リアに悲しい思いなどさせてなるものか。
僕はそのまま勢いを殺さず、寧ろそれを活かすようにして飛んでいき、ボルドーの横っ面を思いっきりぶん殴った。
「あぁぁぁぁあッ!」
「ッガハァッ!」
加減を知らない一撃のため拳の骨は叩き折れ、そのまま突っ込んだせいでようやく治りかけていた身体にまた傷を負ってしまったが後悔はない。
よろよろと立ち上がり、地面に倒れるボルドーを見下げて怒りのまま言葉をぶつける。
「うちの妹に何してくれてんだぁッ‼」
後になって思えばシスコン大爆発のようなセリフである。
だが怒りは紛れもなく本物だ、このクソ野郎が、何度リアを傷つければ気が済むんだ。
「お兄ちゃん!」
「ッリア!」
後ろからもう一度聞きたいと焦がれていた声が聞こえ、泣きそうになりながら振り向くと、リアが痛みに耐えながらよろよろと立ち上がって歩こうとしている。
すぐさま歩み寄って膝をつき、リアを抱きとめる。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!…」
堪えていた涙が限界に達したのか、僕の胸の中で泣きじゃくる。
どれほど辛かっただろう、どれほど苦しかったのだろう。
たった一人で、よく頑張ったよ。
「ごめんねリア、遅くなって…。お兄ちゃんが弱いばっかりに…」
「そんなことないッ!」
弾かれたように顔を上げ、全力で首を横に振って否定される。
「弱くなんてない!私があの時お兄ちゃんを傷つけた、から…ごめんなさい…ごめんなさい!」
僕に謝りながらまた泣き始めるリアを見て、考えを改めた。
そっか…リアにも思うところがあったのか。
また一人で自己完結させてしまうところだった。話さないと分からないことなんて沢山あるのに。
なら、多分、お互いが望む再会はもっと別にあるはずだ。
「リア、お互い謝る前にまず言うことがあります」
「…なに?」
鼻をすすりながらリアは僕の話を聞こうと上を向く。
その眼に溜まった涙を指で拭いながら、優しく笑いかける。
「帰って来てくれて、ありがとう」
その言葉にリアは眼を丸くし、今度は自分でちゃんと立って涙を拭いて僕を見る。
そして、花が咲くような笑みを浮かべた。
「迎えに来てくれて、ありがとう!」
やっぱり、こういう時にお互いが思っていることはありがとうだよね。
僕にも分かるようになってきたよ、陽さん。




