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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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79話 連れて行け

 時は少し戻って、闘技場でリアが連れ去られたという報告を聞いた時。


 受け入れがたい事実を前に思考が回らず固まる僕を置いて話は進む。


「どういうことだ。ファングに任せていたはずだ」


「まさかここまでやらかすとは想定しておらず…許してしまう結果となってしまいました」


「ファングには後で灸をすえてやんねぇとな。それよりもボルドーは今どこにいる?」


「それが…何故か魔力を追えず虱潰しに探すしか手段がなく…」


 それを聞いたアヴァリスは舌打ちをし、僕の手を離して苛立たし気に歩みを進める。


「会場は閉会まで上手く繋いでおけ。約束だからな、俺が直々にボルドーを叩きのめしに動いてやる」


「おい、待て」


 アヴァリスがすぐに出ようとする背中を、僕は呼び止めた。


「なんだ?約束とちげぇって話なら申し訳ねぇが、すぐに俺が取り戻しに」


「違う、僕も連れて行け」


 その提案が思いもよらなかったのか、アヴァリスは面を食らったように一瞬固まる。


 まぁ、言いたいことは分かる。この状態で何が出来ると?って話だし。


 それでも…。


「…連れてくったって、お前それじゃ」


「大丈夫だ」


 僕は折れた足の骨だけを集中して治し、立てるということをアピールするために堂々と立つ。


 それでもまだまだ満身創痍であることには変わらない。


 両方の腕はまだひしゃげており、足も骨は治っているけれど周辺の肉はまだまだズタズタであるため血が流れ続けている。


 魔力も底をつきそうで、いつ魔力枯渇の症状で意識を失ってもおかしくない状態であった。


 それでも、相も変わらず眼だけは一丁前に覚悟を宿しているため、アヴァリスはどうしたものかとため息をつく。


「……はぁ。まぁこっちが先に約束を反故にしてるからな、そっちも我儘も聞いてやらぁ」


「なら早く行くぞ、ぐずぐずするな」


 ありがとうは言わない。お前らのせいでリアが危険な目に遭っているから。


 だがそんなことよりも今はリアを一刻も早く助け出す方が先だ。


 血を滴らせながら闘技場を後にしようと先に歩き始めた僕だったが、あまりに遅いため途中でアヴァリスに追いつかれ首根っこを掴まれる。


「おう、ぐずぐずすんな。早く行くぞ」


「…頼む」


 そのまま借りてきた猫のような大人しい状態で闘技場の外に運ばれた後、アヴァリスの背中に乗せられ向かった先は一か月前に訪れたアヴァリスの豪邸であった。


 背負われたまま中を突き進み、前に来た来客用の部屋に着くそこのソファに座らされる。


「何やってるんだ、早く向かわないと」


「わぁってるよちょっと待て」


 面倒そうにアヴァリスは奥の部屋に引っ込んでしまう。


 何を悠長に…と苛立たし気にしていると数分後にアヴァリスが戻ってくる。


「遅い!何を…それは何?」


 アヴァリスの手には鉱石のようにも見える小さい黒い何かが握られていた。


「こいつはなぁ、禁足領域『ラグナ』の奥でほんの少ししか取れねぇ貴重なもんでよぉ。悪魔の身体を活性化できる」


「活性化?」


「簡単に言えば、あらゆる基礎的な能力が向上する。魔力自体の回復や身体の修復、魔力の循環強度や速度諸々だ。今のお前がこいつを摂取すれば、一時的にだが元のように動けるだろうな」


「本当⁉なら早く」


 覚束ない足で受け取ろうとするも、取れない位置まで腕を上げられてしまう。


「…何?意地の悪い」


「話は最後まで聞け、一時的にって言っただろう。これは命の前借りに等しいんだ。正常な状態から使うのならまだしも、今のお前が使えば確実にしっぺ返しがくるぞ。向こう一瞬間は寝たきりかもな」


「そうなのか、早く寄越せ」


「おい、聞いてたか…」


 ため息をつくアヴァリスに、そのままそっくりため息で返してやる。


「そっちこそ…今更そんなものに怖気づくとでも思っていたのか?」


「…それもそうだな」


 面白いものを見る目に変わったアヴァリスは腕を降ろし、僕にその鉱物?薬?的なものを渡す。


 正直勇気はかなりいるけれど、これもリアに会いに行くためっ!


 嚙み砕いて飲み切れ、とのことだったので言われた通りに摂取すると、身体からみるみる内に魔力が湧いてくる。


 さっきまで激痛を発していた身体中の傷も治り始めている。


「…凄い」


「じゃあ行くぞ、背中乗れ」


「え…自分で動けそうだけど」


「例えお前が万全だったとしても遅すぎる。早く助けたいんだろ」


 そう言われては異議などあるはずもない。


 すぐさまアヴァリスの背中に飛び乗り、移動を開始する。


「まずはファングのところに向かう。状況が知りたい」


「分かった」


 アヴァリスが魔力を探り、ファングと呼ばれる男の元へ超高速で移動する。


 いやでも…マジか速いな…。


 この巨躯も相まってそういう動物に乗っているような気分になる。


 普通の人が馬に乗る感覚に近かったりするのだろうか。


 あっという間に移動が完了し、あっという間にファングの元に辿り着いた。


 まさかアヴァリスが直々に出てくるとは思っていなかったのか、少々驚いている。


「ファング、状況は」


「アヴァリス様…申し訳ございません」


「謝罪はいい、後で灸をすえてやる。状況を聞いているんだ」


 謝罪を突っぱねてアヴァリスはファングに再度問う。


「はっ…情けない限りですが状況はあまり好転しておらず…範囲を広げて捜索しているのですが…」


「見つかってないんだな」


 僕が声を発したことでファングは初めてアヴァリスの後ろにいる僕を認識し、片方しか開いていない目を丸くする。


「これは…どういう状況で?」


「こいつは剣闘試合を乗り越えた。待ってりゃいいのに自分も行くって聞かねぇから連れてきたんだよ」


 面倒そうに、しかし何処か愉快そうにそう言うアヴァリスを見てさらに目を丸くする。


「そう…でしたか…。…やったんだな」


「リアを引き渡す準備をしておけって、言ったはずだけどね」


 ファングはそう僕に言われて黙るしかないが、そんなこと一々気にかけてられない。


 しかし……そうか、見つからないのか……。


 こうしている間にもリアを助け出すのはどんどん苦しくなっていく。


 何か…何か手はないか…。


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