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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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76話 最後の審判

 次…次…いつ終わるんだ…?


 もう体力だってカツカツだ。ここまでかなりの連戦を強いられてきた。


 平静を装うのもそろそろ限界だ。息も肩でし始めてる。


 魔力も節約するために、動きに支障のない範囲で修復することを止めている。


 だが、かなり長いこと戦ったはずだ。半分以上は過ぎているはずだ…多分。


 馬鹿が弱気になるな柊アカメ…気合を入れろ。


「次、まだか!」


 心を入れ直し周囲を見渡すも、先程までのように敵が出てくる気配はない。


 なんだ、どうしたんだ?


「安心しろよ、もう有象無象など出てこねぇよ」


 予想していなかった方向から声が降ってきた。


 驚いて振り向くと、アヴァリスが不気味な笑みを湛えてこちらを見ている。


「…終わり、ということか?」


「いやぁ小僧、中々やるじゃねぇか。一か月前とは比にならねぇほど強くなったな」


 こちらの質問には応じず、あくまで自分の話したいことを話すアヴァリス。


「…それはどうも」


「まさかあんな雑魚がよぉ。俺にとっちゃあ今でも雑魚だが、この俺の予想をはるかに超える成長を見せたことは素直に褒めてやんよ」


 何だ?何が目的だ?


 まるで要領を掴めないアヴァリスの発言に訝し気な眼を返す。


 そして、アヴァリスは今まで見た中で一番の豪胆な笑みを浮かべてこちらを見据えた。


「だからよぉ…試したくなっちまったんだ」


 何を…そう思ったのも束の間、マイクを放り捨てたアヴァリスが闘技場目掛けて飛び降りてきた。


 巨体が自由落下で飛来し、着地と同時に砂埃が舞い上がる。


 視界が開けた後に見上げると、初めて会った時のような威圧感を漲らせたアヴァリスが僕を見下ろしていた。


「最後の相手は…俺だ」


 予想だにしない展開に会場は悲鳴と歓声が混ざったような熱狂に包まれる。


 反対に、僕は足元から頭のてっぺんまで無意識に震えるような感覚に襲われる。


 意識せずとも思い返されるのは、一か月前の強烈な一瞬。


 全力だったのにも関わらず、容易く、為す術なく、一撃で鎮められたあの攻撃。


 身体が震える、言うことを聞かない。


 だが、僕の心に宿る覚悟がそのままでいることを許さなかった。


「ッ…」


 思いっきり舌を噛んで気付をし、痛みを頼りにアヴァリスを睨みつけ血を吐き出す。


 僕のその様子を、とても面白そうに笑みを浮かべて見続けていた。


 ムカつくことこの上ないが、これからはもう怯むことはない。


 僕の出来る最大限で悠然と振る舞い、アヴァリスを見上げる。


「お前が最後の相手だと?主催者が出張ってくるとは、余程お眼鏡に叶ったらしいな?」


「おうおう言うじゃねぇか。まぁ実際そうだ、俺が出ることが一番盛り上がるって判断したからお前程度に出てきてやったんだ」


 どうやら本当にアヴァリスが相手するらしい。正直冗談であって欲しかったが、ここまで大々的に出てきて冗談であるはずもないか。


 僕は「そうか…」とだけ返し、一度深呼吸をして今一度アヴァリスを見る。


「…で、どう戦うんだ?」


 一々口には出さないが、勝負になんてなるわけないだろう?ということを言外に含める。


 何を言っているんだ、と言わんばかりにアヴァリスが鼻で笑う。


「戦う?馬鹿言うな、相手って言ってんだろうが。俺は言わば審判者だ、お前がこの剣闘試合を乗り越え、願いを叶えるに足る存在であるかを証明する、な」


 向こうにも相手にならないと思われているのは何か腹立つが仕方がない。


 審判者か…それならば理解できるが、何をする気だ?


「なるほど。して、その審判者は一体どうやって審判をするというのだ?」


 その言葉を待っていたと言わんばかりにアヴァリスが口角を吊り上げる。


「なぁに簡単だ。あの時と同じ、お前は全力で準備しろ。その上で俺が殴り飛ばす。耐えられたらお前の勝ち、膝を突いたらお前の負けだ」


 なるほど…随分と粋なことをするじゃないか、と精一杯強がった思考をしつつも足が竦みそうになる。


 あれを…もう一度受けろと。


 あの出来事は今でも夢として見ることがある。


 自由の利かないひしゃげた身体、空中に振り撒かれる自分の血、己の積み上げたもの全てを否定された圧倒的絶望。


 その記憶だけで逃げ出してしまいたくなる。


 だが、それを夢として見る時、同時にまた思い出すこともある。


「…いいだろう、醜態を晒させてやる」


 より一層強くアヴァリスを睨みつけ、準備に入る。


 闘技場を囲む松明を闇影の理で全て消し、闇となる部分を広げ出力を上げる。


 ゆっくりと、力強く、今日一番の強度で魔力を身体に循環させ、受け止めるのに必要な配分で身体に魔力収束を張り巡らせる。


 足を踏ん張れる体勢にし、腕を前で交差させ、闇影の理によって後ろから補強するように闇を展開する。


「…よさそうだな」


「あぁ、こい」


 それだけ言葉を交わし、アヴァリスは拳に魔力を収束させ始める。


 今見ても凄まじい、どれだけ先の境地にいるのか見当もつかない。


 魔力はみるみる高まり、あの時の同じ、いやそれ以上の魔力が込められる。


「死ぬなよ、アカメぇ」


「こちらの心配とは、随分と余裕だな」


「つくづく、ムカつくところはベルそっくりだな」


 アヴァリスが拳を後ろに引く。


 来るッ!!

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