74話 剣闘試合2
「お、おい…あれ…」「間違いねぇ…王の力そのものだ…」「しかも何だよ、悪魔になったばかりじゃないのか!あのレベルまで魔力が扱えるなんて…」「確かに王とは天と地だが…それにしてもだろ」「王同様化け物ってことだろ…ふざけた話だ」「今のうちすり寄っとくか?」「話しかけられるならな…」
有象無象がアカメ対する評価を口々に言い合う中、アルマは何とも歯痒い思いで観戦していた。
(…今の動きはいいな、だがさっきのは無しだ。あそこは下がるんじゃなくて逆に詰めた方が有利だった。まだ判断力が鈍い…帰ったらキツく言っとかないとな…)
ほら今のとこも!…と本人よりも緊張して観戦しているのが今のアルマであった。
「アルマ、もっと肩の力抜きなよ」
「…はい、レイ様」
レイ様に窘められ、深呼吸をして少し冷静さを取り戻す。
だが、そう言うレイ様の落ち着いてはいない。購入した飲み物には先ほどから一切手はつけられておらず、真剣な眼でアカメを見つめている。
今となっては二人とも、自分の力が届かない範囲も少なくなってきた。
だからこそ、今まさに手の届かない範囲のことが起こっているため非常に落ち着かないのは仕方のないことであった。
(もしアカメに何かあるのなら俺が…いやいや、それはアカメに対しての侮辱だろうが)
ベル様やレイ様は地位や肩書などどうでもよいと思っているタイプだ。
そもそも、そんなもの意識しなくても勝手についてきたタイプだ。ベル様率いる集団として既に確立されているため、一々世間体等考える必要もない。
だから、ここで剣闘試合をぶち壊したとしても文句は言われないだろうが…それはアカメの覚悟に対しての侮辱だ。
あいつはこの短期間で目を見張るほど強くなった。
それは偏に己の願いを遂げるため、リアを救い出し、幸せになって欲しいという決意からくるものだ。
ここで手を出せば、水を差すような真似をしてしまえば、それはあまりに無粋だ。
これはベル様たちの名前を背負った戦いでもあるが、一番はあいつの戦いだ。
あいつが自分で何とかするべきものであり、師としては見守るしかない。
レイ様も同じようなことを考えていたのか、唇をキュっと結んで見守っている。
「レイ様、大丈夫です。アカメは勝ちますよ」
「…分かってるよ、アカメは強くなったもん」
少し肩の力を抜いて貰えたが、差し出がましい真似だったな。
俺の代わりにアカメを育ててくれたのはレイ様だ、そんなこと分かってるはずだ。
「お、おい。あそこにいるの緋の姫じゃないか、王のところの。ちょっと挨拶に…」
「馬鹿がやめとけ来賓席だろうが!それに横見ろ!」
「あ?…ッ!狼の仮面…やめとくか…」
命拾いしたな、愚かにも近寄ってきたら八つ裂きにするところだったぞ。
そもそもアカメにすり寄ることすら俺が許さん。有象無象風情が。
だからこういうところには今まで来なかったんだ。ベル様やレイ様が出張れば必ず蠅がたかってくる。
来賓の席にいるためそこらの奴らでは近づくこともできないが、同じ来賓席にいる奴らとの交流は避けようもない。
先程もレイ様はお忙しくされていたし、何故か俺にもお近づきにと声が掛かった。鬱陶しいったらありゃしない。
変ないざこざなど余所でやれ、ベル様やレイ様、俺達に関係あるか。
アルマは今なお戦い続ける弟子の方に視線を戻す。
…アカメ、勝てよ。
・・・
「ッ!」
飛翔するナイフによる遠隔攻撃、そしてタイミングを見計らって行われる地面を泥状にして足を取ってくる妨害に回避を強いられる。
また足を取られたので影から足場を形成し、無理やり手を使いながらバク転をして後方へ退避する。
その間にもナイフによる攻撃が浴びせられ、魔力を読んで八方からくる攻撃を影から創り出したナイフで弾く。
泥野郎とナイフ野郎、どちらか一方でも処理しようと動くが
「ふんッ!」
「ちっ!」
行く手を阻むように近接戦闘を仕掛けてくるロングソードを持った男がいるため迂闊には近づけない。
ではこの男から、とも思うが、それはそれで援護で攻撃やら妨害が飛んでくるので簡単にはいかない。
…厄介な。
先刻までとは打って変わり、急に統率の取れた固有能力を使う集団が現れ続けている。
本当に、一か月前の僕なら瞬殺されていたな…。
しかしどうする、このままじゃジリ貧だ。
魔力も先程からどんどん使わされている。
集中力にも限界があり、強さが上がって来たことも含めて攻撃を受ける事も段々増えてきた。
このまま出来るだけ温存しようと頑張っても返って消費量と疲労が蓄積するだけになるかもしれない。
…出し惜しみしてる場合じゃないな。
僕は攻撃を何とか躱しつつ、これまで倒した奴が持っていた武器を一本拾い上げる。
…このくらい大きければ十分か。
そのまま動き続け位置調整し、泥野郎が一直線に狙える位置まで来た。
ここだ!
「な⁉お前ッ!」
僕はこれまで使っていなかった魔力収束を使い、ロングソードを持った男のすぐ横を高速で通り抜ける。
「馬鹿め!突っ込んでこられたところで無駄だ!」
泥野郎がまた僕の足場を崩そうとする、これに手間取るとすぐ後ろから剣を振るわれ、ナイフの雨が降ってくることになる。
だが僕だって馬鹿じゃない。
先程拾い上げた剣を落とし、その剣によって影となった部分を操作し足場を形成する。
それを思いっきり踏み込み、前方に跳び込んだ。
足場は壊れたが加速は十分、足場をいくら取られても跳んでいれば関係ない。
「なぁッ⁉」
「馬鹿はお前だ」
驚愕する泥野郎などお構いなしに心臓を突き刺し、物言わぬ屍をまた一つ作る。
「うおぉぉぉ!」
一歩遅れてロングソードが僕に振り下ろされ、それをナイフが追従してくる。
いい気になるなよ。足場を取られていたから多少勝負になっていただけで、お前の剣術など取るに足らんぞ。
僕はその豪剣を受け流し、飛んでくるナイフを弾きながらロングソードの男の利き手の腱を断ち切る。
これで終わりだ、あっけないものだな。
僕は放心するロングソードの男の心臓にナイフを突き立てた。
…さて、最後の一人か。
後方から飛来するナイフを弾き、最後の一人を見据える。
「ひぃっ!」
「先ほどから思っていたが、お前は魔力隠蔽が不得手だろう。攻撃が読みやすくて困る」
僕がこいつを最後に残したのは一番やり易かったから。
連携が取れるとは言ったものの、こいつの技術が凄いわけではなく、魔力を読みやすいから結果的に味方もこいつの攻撃を読みやすくなっていた。
言わばその程度で成り立っていた間抜けな連携だ。
今までは手数で攻め潰せばどうにかなっていたのかもしれないが、当てが外れたな。
こいつの弾きやすい攻撃を置いておけばあのロングソードの男の行動もある程度限定されるし、ホント助かったよ。
僕はそのまま悠然と近づき、あっけなく心臓を切り裂いて終わった。
しかしマズいな…結構余裕がない。
だが、待ってくれるほど生易しい場ではない。
気合を入れろ…リアはもうすぐそこだぞ…。
「…はあ、はあ…さて、つぎッ⁉」
次なる相手に意識を向けようとした時、突然魔力を帯びた衝撃波のようなものが飛来しギリギリのところで躱す。
驚いて飛んできた方向を見やると、口に当たりそうな部分を開いた状態の異形の四足の化け物がいた。
「…これ、邪霊も出てくるの?」
戦闘シーンが苦しい……めっちゃ頭使う……
拙さや短さが気になった方はどうかご容赦を、精進致します!!




